「これ、はやってるらしいから、体験取材してみて」と、編集長から手渡された資料には「イケメソ宅泣便(たっきゅうびん)」の文字が。ん?イケメソ?イケメンの間違いじゃ……いったいこれって、なに?

「イケメソとは、イケメンでメソメソ涙もろい男子のことです」

説明してくれたのは、このサービスを立ち上げた“涙活プロデューサー”の寺井広樹さん。寺井さんは3年前から、ストレス解消のために意識的に涙を流す活動=涙活を始めた人。その活動のなかで、寺井さんは気が付いたんだとか。

「涙活の場では、泣く男性ってモテるんです。ただし、イケメンに限る、なんですが(苦笑)。さらに女性には、そんなイケメンさんに、涙を拭ってほしい、というニーズがあることもわかってきたんです」

そこで、昨年9月からスタートしたのがこのサービス「イケメソ宅泣便」。「オラオラ系」「弟系」「癒し系」など、さまざまなタイプ別イケメソ男子がオフィスに来てくれて、涙活を一緒にしてくれるというわけ。

記者は公式サイトからイケメソ男子をセレクト。選んだのは、人気ナンバーワンの呼び声も高い「スイート系イケメソ男子」。この甘〜いルックスで、ドロドロにたまったストレスを一気にデトックスじゃ〜。

そして後日、編集部にやってきたのは新井一徳さん(30)。ニコリとほほ笑むその顔は、まさにスイーツ。今回は、私と同じように、心がストレスでパンパンの女性同僚記者も誘っての体験取材。サービス内容は、まずは全米感涙協会が認定する「感涙療法士」の資格も持つイケメソ男子による、涙の効果の説明。次に、感動系動画の鑑賞、さらに、泣ける絵本の朗読と続き、最後は参加者同士のコミュニケーションタイムという流れ。

「以前、10人以上の社員の方がいる、あるオフィスにうかがったときのことなんですが。男性上司が見せた涙に、女性スタッフの方たちが大盛り上がりで。「皆さん、仲がいいんですね」と声をかけたら、『仕事以外のおしゃべりは初めて』と言うんですよ。涙には、ストレス解消以外に、人と人の間にある壁を取り払う効果もあるんです」(新井さん)

さあ、編集部の応接室でもイケメソ男子がリードする涙活、スタート。まずは、ふだんは歯科医師で、感涙療法士でもある新井さんの解説から。

「涙を流すと、セロトニンという物質が脳内で増加、リラックスさせてくれるんです。1粒の涙で、約1週間はストレス解消効果が続くんです。だからウルッときたら、我慢しないでいいんですよ」

そして、感動系動画の鑑賞タイム。新井さんの解説が効いたのか、動画が再生されるなり、隣の同僚記者は、ウルッとどころか、鼻をズルズルッと。アトランダムに何種類もの動画が流れてくるんですが、私も何本目かの動物動画で、ついに目頭が熱くなってきました。

ここでふと、新井さんを見ると……その瞳には甘露のようなキレイな滴が!あんなにカッコいい男子の、感動の涙なんて目撃してしまったら、こみ上げてくるものを抑えることなんて、できません。

次は、畳みかけるように新井さんの、甘〜い声による、泣ける絵本の朗読。これまた、聞かせます、泣かせます。もう女性記者、2人そろって号泣です。

「泣いたからって、ゴシゴシ目をこすっちゃ、ダメですよ。せっかくのかわいらしい目が腫れて台無しですよ」

こう言いながら新井さんは、私の頬をつたう涙をハンカチで拭ってくれた。優しく、優しく、ポン、ポンと……。“壁ドン”ならぬ“頬ポン”です。優しい言葉に、感動の涙が止まらない私なのでした。