U−23日本代表が見せた“二つの顔”…指揮官が求め続けた柔軟性を武器に決勝Tへ

写真拡大

 グループステージで2連勝を飾って決勝トーナメント進出を決め、メンバーを入れ替えて第3戦を戦うことが定石なのは間違いない。チームスポーツにおいては「勝っているチームは動かすな」という格言もある。

「たくさんの選手にチャンスを与えたいと思っている」

 だからタイ戦の前日、手倉森誠監督が選手の大幅な入れ替えを示唆した時、タイを惑わす情報戦の可能性もあった。

 ところが、タイ戦では宣言どおりにメンバーを入れ替えてきた。それも6人も。

 立ち上がりは少しミスが続いたが、それをしのぐと、ゲームの流れはすぐに日本に傾いていく。主導権を手繰り寄せたのは、先発に抜てきされた選手たちだった。中盤ではボランチに入った原川力(川崎フロンターレ)が素早く寄せてボールを刈り取り、リズミカルにパスを散らしながら縦パスを混ぜて攻撃を加速させる。右サイドハーフの矢島慎也(ファジアーノ岡山)は、タイの4−1−4−1システムの隙間に巧みに顔を出し、素早くターンしたかと思えば前線に飛び出し、ゴール前に決定的なパスも送り込む。それに呼応するようにトップに入った浅野拓磨(サンフレッチェ広島)もスピードで相手DFを振り切ったり、中盤に降りてきてポイントを作ったりしていた。

 狙いの一つは、タイの中盤に生まれるスペースだった。

「アンカーの両脇が空くことはスカウティングで分かっていたので、FWの選手がうまく入って来てくれて、中盤としてはすごく助かった。そこでワンクッション入るので。それで僕たちが一つ前のポジションに上がることができた。チームとして何をすべきか共有できていたし、みんなが連動したサッカーができたと思います」

 そう明かしたのは原川だ。ただし、前半の試合展開に不安がなかったわけではない。序盤に訪れた“超”が付くほどの決定機を逃し続けていたからだ。

 6分、矢島のボレーがGKに防がれ、8分には浅野のシュートが左ポストを叩き、続く9分には豊川雄太(岡山)のヘッドがバーに弾かれてしまう。こうした時は得てして、あっさりと失点してしまうもの。だが、そんな空気を打破したのは、攻撃陣で唯一2試合連続スタメン起用されたストライカーだった。

 27分、「縦は常に狙っていた」という遠藤航(浦和レッズ)のワンタッチパスに、「航くんとアイコンタクトが取れたし、自分も『裏!』って叫んだ。イメージどおり」という鈴木武蔵(アルビレックス新潟)が頭でボールを突いて抜け出し、ボールの落ち際を右足で叩く。背番号9の豪快な一発で、日本が先制に成功した。

 さらに後半、オナイウ阿道(ジェフユナイテッド千葉)、久保裕也(ヤングボーイズ/スイス)、南野拓実(ザルツブルク/オーストリア)と攻撃のカードが次々と送り込まれると、まずはオナイウの突破から49分に矢島が珍しい頭でのゴール。75分には岩波拓也(ヴィッセル神戸)のパスから久保が抜け出し、「ゴロで抜きたかったんですけど、浮いちゃって」というミスキックながら、GKを弾いてゴールイン。さらに84分にはオナイウのワンタッチパスから抜け出した久保が倒されてPKを得ると、これを久保自らが決めて、大量4ゴールで完勝した。

 久保、南野の投入に際し、中島翔哉(FC東京)にするか、大島僚太(川崎)にするかを迷ったという指揮官は、「3ボランチにすることも考えたが、それを諦め、まず裕也を出して、拓実は(試合当日が)誕生日だったから……ってわけじゃないけど(笑)、彼らはこのグループでの活動が少ないから、短い時間でも使って決勝トーナメントに生かせる何かをつかんでほしいという狙いでした」と先を見据えた起用だったことを明かした。その久保が2ゴールという結果を残してグループステージ2連勝を飾り、どこよりも早く決勝トーナメント進出を決めた。