スタメンを6人入れ替える采配を見せた手倉森監督。競争を煽り、チーム内に好循環を生み出した。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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 初戦の北朝鮮戦を勝利で飾り、続くタイ戦を前に手倉森監督はこんなことを語っていた。
 
「(タイ戦では)アタッカー陣の奮起を促す意味でも、(北朝鮮戦で出番のなかった選手に)チャンスを与えたい。選手にはもともとグループリーグでは体力(の消耗)を分散していくぞという話はしていた。誰が出てもやれるという面を示しめせば、決勝トーナメントで戦う相手は戸惑ってくれるはず」
 
 本来結果が出ているチームをいじるなというのはサッカーに限らず、スポーツ界の定石と言える。しかし手倉森監督はタイ戦で、自身の言葉通り初戦から6人の選手を入れ替えた。新たに先発に名を連ねたのは、奈良、亀川、原川、豊川、矢島、浅野。そして、後半にはオナイウ、久保、南野を起用した。
 
 そのなかで“アタッカー陣の奮起”を促した指揮官の期待に見事に応えたのが、ゴールという結果を残した矢島と久保、そして好パフォーマンスを見せたオナイウだ。
 
 指揮官は「チームの勢い、バリエーションが増え、フレッシュな人間で回していけている。これで3戦目、準々決勝を見据えながら戦える。そのなかでしっかりと勝点を拾っていけば、チームとして自信がつくと思う」と語る。
 
 海外組の久保、南野、これまで主軸を担ってきた中島、大島でさえレギュラーに固定せずに、コンディションを考慮した選手起用をする。今のU-23代表には「誰が出ても責任感を持ってプレーする」(遠藤)という理想的な好循環が生まれている。
 
 そして日本がタイを破って決勝トーナメント進出を決めた後に行なわれた北朝鮮対サウジアラビアの試合は、撃ち合いの末に3-3の引き分けに終わり、最終戦を待たずして日本のグループ首位突破が決定。次戦のサウジアラビア戦で、日本はさらに選手の入れ替えをして臨む可能性が高い。果たして今度は、どの選手が活躍を見せるのか、期待は膨らむばかりだ。
 
 ただ一方で、選手が数人入れ替わるなか、安定した試合運びができているかと問われれば、大きな疑問符が付く。「他の相手だったらやられている部分はあった」とは北朝鮮戦後の植田の言葉だが、タイ戦ではやや不運な判定もPKを献上するなど、決してピンチがなかったわけではなく、主導権を奪われそうになった時間帯もあった。
 
 北朝鮮戦の反省から「この前は少し下がり過ぎてチャンスを作られたので、今日は良いラインコントロールができた」(岩波)と、全体が下がりすぎることはなかったが、タイの高い個人技をベースにした素早い攻撃に手を焼いたのは事実だ。
 
 正直、植田が言うとおり、対戦相手が北朝鮮やタイでなければ、この2戦で失点を喫していた可能性は大いにあっただろう。決勝トーナメントで対戦する相手はこの2か国より優れたフィニッシュ力を有しているのは間違いないと見ていい。
 
 チームとして良い流れはできている。しかし、現状をよりシビアに考え、守備の意識をさらに高めなければ、リオ五輪出場権の獲得は覚束ない。
 
 決勝トーナメント1回戦(準々決勝)で当たる相手は、おそらくイランとなる可能性が高い。屈強なフィジカルを持つ、日本にとっては厄介極まりない相手だ。次戦のサウジアラビア戦はこの準々決勝を見据えつつも、まずは3試合連続無失点というたしかな結果を得て、自信を深めてほしい。
 
取材・文:本田健介(サッカーダイジェスト編集部)