映画『裸足の季節』トルコを舞台に、5人姉妹の甘美でほろ苦い反逆のドラマ - 監督・デニズにインタビュー

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映画『裸足の季節』がシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて公開。

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本作は第68回カンヌ国際映画祭 ヨーロッパ・シネマ・レーベル賞を獲得し、第73回ゴールデングローブ賞において、外国語映画賞にノミネート。カンヌ国際映画祭監督週間で上映されるやいなや、卓越した構成力と5人の少女達の瑞々しさに溢れたストーリー、そして美しい映像が話題を呼んだ。初監督作ながらアカデミー賞フランス代表にも選ばれ、同外国語映画賞にノミネートされるという快挙を成し遂げた、デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督の長編映画だ。

登場するのは北トルコに住む、5人姉妹。両親を10年前に事故で亡くし、いまは祖母の家で叔父たちと共に暮らしている。だが、ある日姉妹は「傷物だと結婚できない」と、家の中に閉じ込められてしまう。携帯電話や化粧品などが次々と没収され、窓の外には柵がつけられる…。姉たちはひとりひとり、見知らぬ男のもとへと嫁がされてゆく中で、末っ子のラーレは自由を求めて行動を起す―。

トルコの保守的な田舎の村を舞台に、自由な生き方を求める5人姉妹の姿を追う本作。思春期の少女たち特有の輝きと切なさ、そして内に秘めたようなマグマのようなエネルギーが、光あふれる映像によって丁寧に、そして繊細に映し出される。自由を奪われながらも、再びそれを手に入れようと奮闘する姉妹たちの姿に、誰もがエールを送らずにはいられないだろう。眩しく、切ない“ガールズムービー”に注目したい。

監督のデニズ・ガムゼ・エルギュヴェンはトルコ・アンカラに生まれ、その後フランスやアメリカをまたぎ映画を学び、都会的に育った人物だ。本人も出演する、大学時代の卒業制作作品『Bir Damla Su』はカンヌ映画祭のオフィシャル・セレクションで上映され、ロカルノ映画祭のレオパーズ・オブ・トゥモロー賞を受賞した経験もある。彼女に『裸足の季節』に対する想い、キャストについて、そして次回作への意気込みを聞いた。

映画『裸足の季節』を作ろうと思ったきっかけを教えてください。

6年前ほどから、女性について色々と考え出したのです。特にトルコにおいて、女性というのはどうなのかを考え、語りたいと思いました。自分がトルコを離れ、フランスに滞在していることで持った視点が重要な役割を担っていると思います。トルコを訪れる度に、驚くほどの閉鎖感を感じます。女性であることすべてが、絶えず性的なものと結びつけられるのです。トルコは1930年代という早い時代に女性に参政権を与えた国の1つだったのに、哀しいことですよね。

劇中の少女たち同様、監督もトルコ出身ですよね。自身の経験は映画に投影されていますか?

冒頭で、少女たちが少年の肩に乗ったことで暴力的なまでに叱責されるシーンがありますが、ティーンだった頃の私に実際に起きたことです。でも、私の場合は恥ずかしくて顔を伏せ、全く反抗しませんでした。抗議できるようになるまで、何年もかかったのです。

だからこそ、私は登場人物をヒーローにしたかった。彼女たちの勇気が報われるストーリーにしたかったのです。私は5人の少女を、5つの頭を持った怪物だと捉えていました。物語から1人ずつ脱落していくたびに、頭をなくしていくのですが、最後に残ったものだけが成功するというイメージを持っていました。姉たちが罠にかかってしまったからこそ、一番年下のラーレは彼女たちの運命を拒絶します。ラーレは私が夢見たすべてを凝縮したような存在なのです。

キャストは演技未経験の方や新人ですよね。5人をどこで見つけてきたのですか。

キャスティングに関しては、9ヶ月に渡りフランスとトルコでオーディションをし、何百人もの少女たちに集まってもらいました。どの役の子も一目で恋に落ちたようなものです。

ただし例外があり、次女セルマ役のトゥーバは、イスタンブールからパリへ向かう飛行機の中で見つけました。彼女の「“ムスタング”=野生の馬(原題)」的な雰囲気に大きな魅力を感じたのです。彼女に声をかけ家族とも話し、出演が決まりました。

物語の後半に流れるポエティックなクラシック音楽が印象的でした。

ウォーレン・エリスが音楽を手がけました。彼の音楽にはそれ自体に物語の力があるのです。彼がバイオリンを弾くと、なにか話しを語る声を聴いているような気分になりますし、彼のアレンジには恍惚となります。自然に調和していて、大きな木の家と黒海の風景という映画のロケーションとも完璧に一致していると思います。

本作はフランス代表として本年度のアカデミー賞外国語賞にノミネート、さらに40近くの賞を受賞するという快挙を成し遂げましたね。世界から大変注目を浴びていると思いますが、今後のビジョンがあればぜひ聞かせてください。

実は今作の前に製作を考えていた、1992年の「ロサンゼルス暴動事件」を次の題材にしようと考えていたりします。5日間続いた無法・無秩序状態の事件。その犠牲となった、”ピュアで身近な人々”に焦点を当てるという、今作と同じようなアプローチをしたいですね。ただし悲劇のような表現はせず、半コメディのような形に脚色しようと考えています。当時はスケールが大きく実現できなかったのですが、ついに形にできるのではないかと思っているのです。

【作品詳細】
『裸足の季節』
公開:2016年6月11日(土)シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー
監督:デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
音楽:ウォーレン・エリス
出演:ギュネシ・シェンソイ、ドア・ドゥウシル、トゥーバ・スングルオウル、エリット・イシジャン、イライダ・アクドアン、ニハル・コルダシュ、アイベルク・ペキジャン
2015年/フランス=トルコ=ドイツ/94分
配給:ビターズ・エンド
©2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY