岩波(4番)と植田(5番)のCBコンビは空中戦を制したが、セカンドボールを拾えずに苦戦。次のタイ戦では、ラインを上げてコンパクトな陣形を維持したい。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全3枚)

 予想していた北朝鮮のロングボールを植田と岩波のCBコンビがことごとく撥ね返す。リオ五輪最終予選の初戦、北朝鮮戦の勝利の要因には、このふたりの踏ん張りが挙げられるだろう。「やっていて楽しかった」と語る植田は制空権を握り、岩波も周囲に指示を送りながら身体を張ってシュートをブロックした。
 
 ただ、問題があったのはライン設定だ。せっかくロングボールを撥ね返してもなかなかセカンドボールを拾えず。これは中盤との連係不足の面もあるが、「僕らがズルズルラインを下げてしまったのも悪かった」と両CBは口を揃えて反省する。
 
 また前半は岩波の正確なフィードで久保、鈴木を走らせるシーンがあったが、ラインが下がってしまった中盤以降は「ロングボールを蹴って、単発な攻撃になってしまった」(手倉森監督)と、ビルドアップからの攻撃の質が著しく低下。ラインの高さ、中盤との距離感は次戦へ向けて、修正したい課題だ。
 
 一方、SBのふたりも勝利の大きな立役者となった。室屋は「とにかくボールを持ったら仕掛けて、自分のなかでリズムを掴もうと思っていた」と、積極的な上がりで右サイドを活性化。先制点につながるCKを奪った。
 
 左サイドの山中は室屋が果敢にオーバーラップを仕掛けたため、攻め上がりをやや自重していたように見えたが、先制点を「狙い通りのキック」(山中)でアシスト。
 
 加えてふたりは、守備の時間が長くなった後半には粘り強い対応で貢献した。ともにフィジカルに優れているとは言えないが、戦う姿勢を最後まで持ち続け、北朝鮮の攻撃陣に食らいついた。
 
 初戦の無失点勝利は、冷静なセービングが光ったGKの櫛引も含めて、守備陣の高いパフォーマンスがもたらしたと言える。
 
 中盤では攻撃と守備でパフォーマンスに大きな差が出た。まず守備ではインフルエンザで調整が遅れていた遠藤が、不安をかき消す働きを披露。「ボランチのところでかなり弾いてくれた」と指揮官も認める高い対応力で、大島とともに最終ラインをプロテクトした。大黒柱が復帰し、チームがより引き締まったのは大きな収穫だった。
 
 左右MFに入った中島、南野も序盤から周囲と連動してプレスをかけ、カウンターの起点になるなど、守備面は概ね合格点を与えて良いだろう。
 
 ただ、一方で攻撃面では多くの課題が残った。守備に意識が傾きすぎたせいか、攻めに転じた際の各選手の距離は離れ、上手くパスをつなげられなかった。指揮官も「緊張が見て取れた。パス交換する距離がユニットごとに遠かった。(大島)僚太も(遠藤)航も珍しく失うことがあったし、前線も自分で仕掛けて取られることが多かった」と認める。
 
 なかなかフィニッシュに絡めなかった中島も「もっとできたかなと思う。自分のなかの理想としては勝つだけがサッカーではないので、良いプレーをして勝たないとこれから先厳しくなる。次は少しでも良いサッカーを見せて勝ちたい」と悔しさを滲ませた。
 
 中島の言葉通り、次戦以降、崩しやボールの回しの質をより上げなければ、苦戦を強いられるだろう。
 
 その点で途中交代から技術の高さを見せた原川は、キーマンになり得る能力を示した。手倉森監督も「唯一ボールを持ってフェイントが入る。スタメンの選手たちは止めて出すところを決めていたが、相手を騙しながらパス&コントロールをしていた。そういう意味では名前は(原川)力だけど全然力んでいなかった」と冗談を交えながら評価した。
 
 2日後のタイ戦では、原川が先発起用されるかもしれない。
 
 2トップの久保、鈴木の連係は日に日に良くなっており、北朝鮮戦でもその兆候は見て取れた。片方が中盤に下がれば、もう一方が裏へ抜け出し、起点となる。最終ラインの岩波からフィードを何度も受けた序盤は前線で身体を張り、ともに基準点とした機能した。
 
 加えて中盤でボールを奪ってからの素早い形で5分には鈴木、45分には久保が強烈なシュートを放つなどフィニッシュへもつなげた。ただ、全体が後ろに下がる時間が長かったため、チームとして2トップを活かしきれたかと言われれば疑問符が付く。第1戦のみで判断するのは難しく、第2戦以降に真価が問われることになりそうだ。
 
 一方で、他国のスカウティングが詰めかけるなか、スーパーサブと目された浅野がピッチに立たなかった点は興味深い。手倉森監督は浅野を秘密兵器として温存したいとの考えがあり、第1戦でそのプレーを他国にチェックさせなかったことが、次戦以降へ大きな意味を持ってきそうだ。
 
 もしかしたら、第2戦は途中出場した浅野がヒーローになる、そんな筋書きも考えられる。
 
取材・文:本田健介(サッカーダイジェスト編集部)