ベッキーと「ゲスの極み乙女。」のボーカル・川谷絵音の不倫疑惑が大騒動になった。2人は離婚届を「卒論」と呼び、ベッキーがLINEで「卒論提出できたら、けんちゃんにいっぱいワガママ聞いてもらおうっとー!笑」と離婚を促す生々しい会話も露呈した。

離婚を「卒論」と呼ぶカップルもいれば、「誕生日プレゼント」と称するカップルもいる。

窪塚洋介とダンサーのPINKYである。窪塚は、元妻“のんちゃん”と2003年に入籍し一児をもうけたが、12年6月に“円満離婚”。「悲しい」というファンに対して、「愛のカタチが変わったんだよ、そのうちわかるさ。愛は愛。なくならない」と返答していた。

■窪塚の愛のカタチに謝罪はない

その1ヶ月後にPINKYとの交際が発覚。窪塚が離婚届を提出した日はPINKYの誕生日であり、PINKYはTwitterで「何よりのBirthdayプレゼント…ダーリン」「プレゼントいっぱいもらったけど…何よりもこの世の中で彼にしかできない唯一の私への贈り物が一番に嬉しい…」などと離婚を喜ぶツイートを連発していたことがわかり、不倫関係にあったのではないかとウワサされた。

不倫の真偽はさだかではないが、よしんば不倫だったとしても「軽率な行為を深く反省し、これからは一日、一日を大切にしていきたいと思っております」などと窪塚が謝罪するとは思えない。04年に自宅マンション9階から飛び降りたときこそ「お騒がせし申し訳なく思っている」とフツーのコメントをしていたが、2015年夏には、「時代は、PINKY and NON フォーメーション」というツイートとともに、元妻と息子、PINKYらとの宮古島に旅行した記念写真をアップ(15年7月28日)。「息子がかわいそう」という根拠のない感情的な意見が多く見られたが、当然ながら窪塚の愛のカタチに謝罪はない。

その後、PINKYと同棲を続け、2015年12月17日、窪塚のデビュー20周年イベントで「見た目より本当に古風で、気立てはいいし、俺にやさしいし、たまに年に1回か2回くらい、俺が酔いすぎちゃって、畳の上にしょんべんするときもあります。それを『あ、よく出たね』って言ってくれる。やさしいです。なので一生の伴侶と決めました」と公開プロポーズした。

■言うだけのことは確かにやってきた

窪塚は、フツーの道徳や倫理観にのっとって生きていない。ではどういう思考回路なのか。2015年12月に上梓した『放流』(サンクチュアリ出版)を見てみよう。南米の旅を追った紀行フォトエッセイなのだが(当然PINKYも同伴)、地平線や山などスケールのデカいものを見るとデカいことを語りたくなってしまう性分らしく、言うことがいちいちデカい。

・「何もなくても、何もしなくても、自分がこの世界に在ることが、“元々幸せ”であることを思い出すこと」
・「インナーレヴォリューション。インナーエヴォリューション。革命真っ最中。世界を変える」「希望のない世界なら、自分が希望そのものになればいいじゃないか」
・「この宇宙や世界の真理を追究する男でいたい」

デカいことを語りたがる人はすぐに「世界」とか「宇宙」とか、本当にデカい比喩を使ってしまう。その典型のような文章だ。こういうデカいことを言う人に対して、バビロン(=窪塚語で「社会」の意味)では苦笑するというお約束がある。ぶっちゃけこの『放流』は苦笑が9.5割。しかし、残り0.5割に、彼の本当のデカさが見えた。

・「オレにとって、テレビ業界の山からの下山はラクだった。落っこちちゃったからね。(笑)」
・「役者の仕事をしていると、『ドラマの仕事を断るなんてもったいない。』とか『大河の主役断った役者はいない。』とか言われるんだけど、みんなが一番いいじゃんと言ってくるものが自分にとっては一番いらないものだっただけのこと。そういうことってあるじゃん?」
・「マンションから落っこちた後、『今ならこんなんでもやるだろ?』と言わんばかりに、ふざけた役とかいっぱいフられて、歯食いしばりながら断ってきた。稲穂は実るほど頭を垂れる。さて、そろそろ収穫すんべ」
・「役者の方は今はテレビドラマをやってた頃よりはずっとゆっくり歩けているし、スリリングで刺激的な天職を続けられている。まじでやりたい映画と舞台だけ。シンプル。まさかのCMはいうなれば高額収入のアルバイトの季節ですか」

そう、窪塚は一時はテレビ界で「イケメン俳優」として人気者だった。しかし、その座から転げ落ちた。そして、今は宇宙や世界の真理を追究し、世界を変えようとしている。まあ、それはいいとして、自分のルールで生きるために大きな代償を払ったことは確かだ。他人はそれを「迷走している」もしくは「終わった」と言う。

・「希望のない世界なら、自分が希望そのものになればいいじゃないか」

失敗して「終わった」と言われた人の言葉だと考えると、あながちぶっ飛んだことを言っているわけではないように見える。「関係者の皆さまに深くお詫び申し上げます」とビジネスマナー通りに謝るのもまあ簡単なことではないけれど、窪塚のような一般社会から見ればおかしな生き方が魅力に変わるのは芸能界ならでは。PINKYとのツーショットは胸焼けするようなくどさがあるが、それも含めてオモシロイ。ふたりで思い切り宇宙に飛び出してほしい。

(亀井百合子)