ワールドカップの勢いは、まだ止まらない。高校、大学の決勝戦が終わり、いよいよ最高峰のトップリーグにおいても、年始から1〜8位順位決定トーナメント「LIXIL CUP 2016」が始まり、ベスト4が出揃った。

 1月9日(土)に1回戦が行なわれて、格上チームが順当に実力を発揮し、16日(土)の準決勝の組み合わせは下記の通りとなった。

 ヤマハ発動機(グループB1位)vs東芝(グループA2位)@花園ラグビー場
 パナソニック(グループA1位)vs神戸製鋼(グループB2位)@秩父宮ラグビー場

 まず、すっかり『日本ラグビー界の顔』になった日本代表の不動のフルバック(FB)五郎丸歩が在籍するヤマハ発動機ジュビロは、リーグ戦で神戸製鋼に敗戦したもののグループB首位で「LIXIL CUP 2016」に進出した。

 「昨年度の日本選手権の優勝が大きかった」と五郎丸が言うとおり、昨年度、初のタイトルを奪取したヤマハ発動機のチーム力は増し、自信がみなぎっている。就任5年目を迎える清宮克幸監督の手腕もあり、昨シーズンは惜しくも準優勝だったトップリーグにおいて、初優勝に向けて邁進(まいしん)し、当然ながらチームの目標はトップリーグと日本選手権の「2冠」を掲げている。

 優勝へのカギを清宮監督はこう語っていた。

「FWの勝敗でしょうね。スクラム、ラインアウト、モール、ディフェンスでどれだけヤマハ発動機のFWが力を発揮できるかどうか」

 1回戦では、NTTコミュニケーションズシャイニングアークスのディフェンスにやや苦しんだものの、終始、優勢だったスクラムで相手を圧倒し、26−7で勝利し、準決勝へ駒を進めた。

 しかし、16日に迎える準決勝の相手は、過去5年間優勝から遠ざかっており、タイトルに飢えている難敵・東芝ブレイブルーパスだ。唯一、トップリーグ開幕以来13シーズン連続トップ4に進出している東芝は、ヤマハ発動機同様に、FWには絶大なる自信を持っている。ワールドカップの日本代表主将だったフランカー(FL)リーチ マイケルを筆頭に、プロップ(PR)三上正貴、フッカー(HO)湯原祐希、ロック(LO)大野均と日本代表メンバーが4人おり、さらに帝京大出身のルーキーLO小瀧尚弘も新人らしからぬプレーを見せている。

 また東芝は今シーズン、南アフリカの年間最優秀コーチ賞を受賞したことのあるジェームス・ストーンハウスを招聘し、組織ディフェンスの整備に努めた。1回戦では、トヨタ自動車ヴェルブリッツとのフィジカルバトルを制し、スクラムでも優位に立って、29−17で勝利し準決勝進出を決めた。

 そのため、ヤマハ発動機としては、スクラムを中心としたFWで劣勢となると、試合展開としては苦しくなってしまう。FWで互角以上に戦い、FB五郎丸のPG、そしてときにはドロップゴール(DG)で得点を重ねて、クロスゲームに持っていき、チャンスとあらば日本代表の最強のラインブレイカー、センター(CTB)マレ・サウの突破力でトライを挙げて、白星を引き寄せたい。

 五郎丸が「ヤマハ発動機は先を見られるようなチームではない。昨シーズンはトップリーグを取れなかったので、目の前の試合を戦っていきたい」と意気込んでいたように、ヤマハ発動機としては東芝戦にすべてを懸けるはずだ。もちろん、東芝も全力で挑んでくる。いずれにせよ、テストマッチのような緊張感の中でのビッグマッチになればなるほど、FB五郎丸のキックが大きくものをいう試合となろう。

 清宮監督の采配や選手起用も勝敗に大きな影響を与えることは間違いない。「昨年度の雪辱を果たせるように一つずつ勝っていきたい」と指揮官が言うように、ヤマハ発動機は東芝を破って、昨シーズンに続いて決勝に進出することができるか。

 準決勝のもう1試合は、3連覇を狙うパナソニックワイルドナイツと、2003年度のトップリーグ開幕シーズン以来の優勝を狙う神戸製鋼コベルコスティーラーズが対戦する。

 パナソニックは、"名将"ロビー・ディーンズ監督が「選手たちは自分たちの役割とゲームプランを理解していました」と手放しで褒めたように、1回戦はキヤノンイーグルスに46−6で快勝した。特に組織ディフェンスと1対1のタックルは今シーズン最高の出来で、相手をノートライに抑えた。

 ウイング(WTB)山田章仁こそケガのために試合のメンバーから外れたが、ワールドカップに出場した日本代表のメンバーがHO堀江翔太キャプテンを筆頭に、PR稲垣啓太、NO8ホラニ龍コリニアシ、スクラムハーフ(SH)田中史朗と4人いて、さらに南アフリカ代表のCTBのJP・ピーターセンがおり、16チーム中、唯一の負けなし(7勝1分)できているチームを支えている。

 一方の神戸製鋼コベルコスティーラーズも今シーズンから新しく指揮官になった南アフリカ出身のアリスター・クッツェー ヘッドコーチ(HC)のもと、好調を維持している。

 HO木津武士がケガのため1回戦に出場できなかったが、PR山下裕史、LO伊藤鐘史、CTBクレイグ・ウィングは先発で勝利に貢献した。他にも、身長208cmの元南アフリカ代表のアンドリース・ベッカーは、本来はLOだがリーグ戦に続き、再びFLとして先発して存在感を見せており、特にゴール前のモールは相手にとって脅威となろう。

 またハーフ団が固定されていることもチーム好調の要因のひとつだ。ニュージーランド代表SHアンドリュー・エリスがパスとキックで試合を組み立て、ランもパスも得意なSO山中亮平も今シーズンは司令塔としてチームを引っ張っている。さらに、キャプテン経験もあるベテランWTB大橋由和が、直近の3試合で7トライと驚異の決定力を見せている。

 現役日本代表や元日本代表、さらに各国代表選手に加え、指揮官同士もニュージーランド、南アフリカでスーパーラグビーチームの指揮の経験があるなど、こちらの試合でも、テストマッチのような、まさしく「日本ラグビー最高峰」が見られることは必至だ。

 そして、両試合の勝者同士が今シーズンのトップリーグ優勝を懸けて、1月24日(土)の決勝を戦う。20日に最も寒さの厳しくなる大寒を迎えるが、まだまだ、見ている者を熱くするラグビーシーズンはこれからである。

斉藤健仁●文 text by Saito Kenji