社内恋愛の正しい収束のさせ方とは?
【石原壮一郎の名言に訊け】〜瀬戸内寂聴の巻

Q:自分も軽率だったとは思います。後輩のちょっとカッコイイ系の男の子に、何度かデートに誘われて、熱心に口説かれて、ついフラフラとそういうことになりました。それはいいんです。私も子どもじゃないので。ただ、ヤった途端に態度がいきなり冷たくなったり、私と同時に社内の若い子にも声をかけていたのがあとからわかったりしたのが、ムカついてなりません。社内的な立場は私のほうが上です。どうにか仕返ししてやりたいと思うのは、間違っているでしょうか。(東京都・32歳・流通)

A:そうですか、それは災難でしたね。あっ、ちょうど今、この相談にピッタリの方が、喫茶「いしはら」にいらっしゃいました。若いころは恋多き女として数々の浮名を流し、今は商店街でアクセサリーのお店をやっているハルミさんです。町内の女子たちの憧れの的で、いつも相談の列が途切れません。ハルミさん、どうお慰めすればいいものでしょうか。

 どうして慰めなきゃいけないの。いいじゃない、年下の若い子を味見できたんだから。長い付き合いにならなかったのは、あなたとの縁がその程度だったってことで、相手がヤリチンかどうかはまた別の話よ。ヤリチンだって、長い付き合いをするときはするからね。

 無理やりじゃなくて、合意の上でしたわけでしょ。会社の立場を利用しての「仕返し」なんて、みっともないことを言うのはやめてちょうだい。色恋沙汰は色恋沙汰、仕事は仕事。そこをごっちゃにするような人は、恋愛する資格も仕事する資格もないわよ。女が本気で仕事をしていくつもりなら、もちろん男もだけど、そこは意地でも切り離さなきゃ。

 つまりあなたは、プライドが傷ついているのよね。それはお気の毒だとは思うわ。だからといって、被害者ヅラするのは図々しいわよ。瀬戸内寂聴さんのこの言葉を噛みしめなさい。

「どんなに好きでも最後は別れるんです。どちらかが先に死にます。人に逢うということは必ず別れるということです。別れるために逢うんです。だから逢った人が大切なのです」

 ちょっと短い縁だったかもしれないけど、それでいいじゃない。デートしてるときは、それなりに楽しかったんでしょ。もしかしたらあなたは、その男のことがけっこう本気で好きになってて、未練があるのかもしれない。それならそれで、自分の気持ちや「失恋した」っていう事実としっかり向き合って、感謝のひとつもするのが女の意地よ。

 瀬戸内さんは、こんなことも言ってるわ。「人生とは、出会いと縁と別れです。出会ってから別れるまでの間に、嬉しいことや悲しいことがあって、それを無事に越えていくことが生きるということなんです」「恋を得たことのない人は不幸である。それにもまして、恋を失ったことのない人はもっと不幸である」。どっちも、今のあなたに必要そうな言葉ね。

 相手を恨むことで、せっかくの楽しかった出来事を「忘れたいイヤな思い出」にしちゃったら、もったいないじゃない。いろいろ目をつぶりながら、がんばって「いい思い出」にしてしまえばいいのよ。色恋沙汰を糧にしながら、お仕事もがんばってね。

【今回の大人メソッド】
◆どんな理由であれ「仕事で仕返し」は厳に慎みたい

 プライベートと仕事を混同してはいけないというのは、誰でもわかっているはず。しかし、たまたま持っている小さな権力を使った仕返しは、もっともらしい言い訳を伴いながら、あちこちで行なわれています。仕事をする上で「大人としてやってはいけないこと」はいくつかありますが、これもそのひとつ。仕返しするなら、仕事以外でやりましょう。

【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。

いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『日本人の人生相談』(ワニブックス)