いよいよ第2クールに突入した30年ぶりのTVシリーズ『ルパン三世』。TVスペシャル『ルパン三世 イタリアン・ゲーム』をきっかけに新シリーズを見始めた人もいると思うが、ルパンのジャケットの色がなぜ青いのか知りたい方はこちらの記事をご覧あれ。

「今夜金曜ロードSHOW『ルパン三世 イタリアン・ゲーム』なぜジャケットが青いのか」

さて、先週放送された第14話「モナリザを動かすな」は、『ルパン三世』らしい“盗み”メインのお話。


カラッケツで食うにも困っているらしいルパン。そういえば先週までは逮捕されて牢獄に入れられていたのだった。泥棒は何かを盗むのが仕事。そこでルパンが目をつけたのが、レオナルド・ダ・ヴィンチの名画モナリザである。

モナリザが所蔵されているフランスの美術館(明らかにルーヴル美術館がモデル)で警備を務めるのは、ご存知、銭形警部。

銭形警部といえば「待てー、ルパン!」が決め台詞だが、「待てー!」と言うのは後手に回っているから。今シリーズの銭形警部は有能さが強調されており、ルパンの手口をしっかり読んでいるため、あまり「待てー!」と言ったりしない。今回もルパンと熾烈な手の読み合いを行っている。

銭形警部に追われたルパンは逃亡するが、展示されていたモナリザには指一本触れていなかった。それもそのはず、ルパンは人知れず隠されていた本物のモナリザを盗み出していたのだ。

モナリザの国外への貸出は行われていない(過去に2回行われているが、3回目はないと言われている。これは本当の話)。しかし、フランス文化庁の役人フィリップは、私欲のため、莫大な金額で極秘にモナリザを他国に貸出していた。貸し出している間は、当然偽物が公開されていることになる。ルパンはフィリップの悪行を知り、公開されているモナリザが偽物だと見抜いた上で、隠されていた本物を頂戴したというわけだ。

意気揚々とイタリアの金持ちにモナリザを売りつけようとするルパン。ところが、ダ・ヴィンチの研究家は、ルーヴルには今なお本物が展示されていると証言する。ルパンが本物だと思って盗み出したのは、不二子の裏切りでルパンの狙いを知らされたフィリップが入れ替えた偽物だったのだ。

ルパンは、もう一度モナリザにアタック。フィリップがドバイの富豪に貸し出そうとするところを横取りするが、「刑事の勘」で張り込んでいた銭形警部の邪魔を受けて撤退。悪事が露見したフィリップは逮捕されるが、ルパンは再びモナリザを手に入れそこねた……?

いや、ルパンは本物のモナリザを手に入れていた。不二子は自ら偽物のモナリザを手に入れて、フィリップにすり替えるよう渡していた。ルパンが最初に盗んだのは、この偽モナリザである。

ところがダ・ヴィンチの研究家は、これもダ・ヴィンチが描いた本物だと鑑定したのだ。「アイルワースのモナリザの例もあるだろ」と説明するルパン。アイルワースのモナリザとは、ダ・ヴィンチが描いたとされる、もう一枚のモナリザのこと。つまり、ルパンの審美眼はたしかだった。盗んだモナリザも高く売れて鼻高々である。

ところで、不二子が手に入れたモナリザは、街角で謎の男が描いていたものだった。謎の男とは、前回のラストでイタリアに駐在するイギリス情報部MI:6の元から逃げ出した人物と同一。描いた絵が本物と認定されるということは……謎の男の正体はダ・ヴィンチ?

モナリザを取り戻すことはイタリア人の夢


『イタリアン・ゲーム』についての記事でも書いたとおり、今シリーズの『ルパン三世』は日本のほか、イタリアのマーケットも意識して製作されている。そのために “現地化”が試みられており、第2話のサッカーや第10話のワインなど、イタリア人の好みがストーリーに反映されている。

今回のテーマはズバリ「モナリザとイタリア人」だ。モナリザを描いたのはイタリアが生んだ大芸術家ダ・ヴィンチだが、モナリザを所有しているのは一貫してフランスである。フランスの役人であるフィリップはモナリザのことを「わが国の資産」と呼ぶが、『ルパン三世』が放送されているイタリアの人たちはフィリップの発言にイーッとなったはずだ。

銭形警部はモナリザを警備する際、かつてモナリザが盗み出されたエピソードを披露する。愛国心に溢れたイタリア人が美術館の職員に変装して忍び込み、翌日の休館日にやすやすとモナリザを運び出してしまったというものだ(だからルパンはすでにこの中に忍び込んでいるはず、という話)。

このエピソードは実話である。1911年、イタリア出身の泥棒ビンセンツォ・ペルージャは、銭形警部が語った手口そのままにモナリザを盗み出してみせた。ペルージャはイタリアにモナリザを持ち帰ったが、「わが国の象徴」が手元にあることに耐えられなくなり、美術商に売却を持ちかけたことをきっかけに逮捕されている。

ペルージャが盗んだモナリザはイタリア中で披露され、イタリアの新聞にはモナリザの帰還を喜ぶ声が並んだという。ペルージャがやったことはれっきとした泥棒行為だが、イタリアでは愛国的な行動だと賞賛された。ペルージャ自身も愛国心が動機だったと説明している。犯行から100年後の2011年には、ペルージャをモナリザ奪還の英雄とする劇がイタリアで上演された。

今回のエピソードの中で、イタリアの金持ちが「モナリザを取り戻すことは我々イタリア人の夢だった」と語っているが、これは多くのイタリア人が心に抱いている気持ちである。ある人がモナリザ盗難事件についてイタリア人の友人に語ったところ、その友人に「盗む(rubare)」を「運ぶ(portare)」と訂正されたというエピソードは象徴的だ。

モナリザを盗み出し、イタリアに持ち帰ってきたルパンは、やっぱりイタリア人にとって英雄に見えるのだろう。そのあたりまで計算された上で、今回の脚本は書かれているのである。

さて、今夜放送の第15話はダイヤ「クレオパトラの心」の行方を求めて、なぜかルパンが高校の先生になってしまうという「ハイスクール潜入大作戦!」。チャンネルは決まったぜ。
(大山くまお)