FC東京に在籍する“三世代の10番”。梶山と東が送ったアドバイスとは? 写真:(C)サッカーダイジェスト

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 FC東京には、過去2回の五輪本大会で日本代表の10番を背負った選手がいる。2008年の北京五輪では梶山陽平が、続く12年のロンドン五輪では東慶悟が“エースナンバー”のユニホームを身に纏って戦った。

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 そして、先ごろ開幕したリオ五輪の最終予選で日本代表の10番を背負うのも、同じFC東京の選手、そう、中島翔哉である。

 なによりサッカーを楽しむ。それがモットーの中島は、「勝ち負けに対するプレッシャーは感じないタイプ」だという。だから、10番へのプレッシャーもない。

「特別な番号と周りから言われるのは嬉しいですが、重圧はないです」

 ロンドン五輪の予選・本大会を戦っていた東も、そうしたプレッシャーは感じていなかった。本人は、当時をこう振り返る。

「(背番号について)あんまり考えていませんでしたね。考えなさ過ぎたかもしれません(笑)。10番の重さを分からず、ガムシャラにプレーしていました。今(10番を)付けてやれと言われたら、逆に意識し過ぎてしまいますかね。あの頃は本当に若かったなという感じがします」
 東が重圧を感じなかった背景には、“五輪チームへの期待値”もあった。

「五輪の本大会に限れば、(当時のチームは)あまり期待されていませんでした。負けて当たり前みたいな、そんな雰囲気がありました。だから、背番号10でもそこまでプレッシャーはありませんでした」

 「あまり期待されていない」──。もしかすると、それはリオ五輪の最終予選に臨むU-23代表を取り巻く状況に似ているかもしれない。なにしろ……。
 今予選はホーム&アウェー方式ではなく、セントラル方式で五輪の出場権を争うのだ(上位3か国に本大会の出場権が与えられる)。“一発勝負”の感が強く、「本当に勝ち抜けるのか。6大会連続の五輪出場は難しいのではないか」という不安の声が少なからずある。

 2014年の秋に当時のU-16、U-19、U-21代表が、それぞれアジアの年代別大会に挑むものの、揃って準々決勝で敗退した。15年アジアカップでの悲劇(準々決勝でUAEにPK負け)も含め、日本代表は“ベスト8の壁”に苦しんでいる。そうした負の連鎖が、不安を増幅する要因のひとつでもあるだろう。

 ただ、東はそういうシチュエーションが成長につながるという。

「ロンドン五輪は悪くない結果に終わったから、良かったと思います。僕自身も成長しているなと感じた。予選から1試合やるごとに手応えみたいなものを掴んでいましたからね。僕が言うのもなんですが、若い頃にああいう経験ができれば資産になります」

 中島も、国際舞台での経験は重要だと認識している。

「(リオ五輪は)大切な大会です。世界の舞台はやっぱり違いますので。本選に出場できたら、とことん楽しみたいと思います」

 中島にとって、大きな刺激になったのは2011年に出場したU-17ワールドカップだ。準々決勝でブラジルに2-3と敗れた試合は「今でも思い出す」という。だから、是が非でも、リオ五輪の出場権は獲得したいと願っている。

「これまで大きな大会がふたつ(14年1月のU-22アジア選手権、同9月のアジア競技大会)あって、いずれもベスト8。成長は足りないです。でも、その悔しさが五輪へのモチベーションにつながると思います。苦い経験を糧にしないと、負けた意味がなくなってしまうので、モチベーションは大事にしたいです」

 そんな中島に、北京五輪世代の梶山も次のようなエールを送る。
 
「オリンピックの本大会に出るために、予選から10番をつけて試合に出続けることは大変です。10番を背負うからには、最初から最後まで責任を持ってやらないといけない。(中島)翔哉はチームのなかで年下の部類に入るかもしれないけど、チームを引っ張っていけるだけの力はある」

 10番には相応の責任があるという梶山だが、北京五輪時代はどうチームを牽引したのか。

「今もそうですけど、僕は声をガンガン出すタイプではありません。プレーで戦うタイプなので、そういう感じで責任を持ちながらチームを引っ張っていました」

 どちらかと言うと、中島は梶山に似たタイプだ。実際、ピッチで騒ぐほうではないと自らコメントしている。

「ピッチでは滅多にしゃべらないです。基本的に自分からなにかを発するタイプではありません。言ったとしても、『ボールをちょうだい』という程度です(笑)。

 チームの中心軸という感覚はないです。僕はサッカーを楽しめればいい。やっぱり、ボールに触らないと面白くないから。楽しまないと意味がないです」

 中島の根底にあるのは、あくまで「楽しむ」というスタンスだ。昨年3月頃に話を訊いた時も、彼はこう答えていた。

「楽しくて始めたサッカーを、僕は最後まで楽しみたい。そうじゃないと、絶対に面白くないと思う。メッシだって楽しんでいるから、どんな試合にも出たいとアピールしているわけで。世界のトップに立つような選手はみんなサッカーを楽しんでいるはずです。正直、自分がつまらない試合で勝っても喜べない。楽しむためには、プレーの精度を高めてミスを減らさないといけません」

 梶山は、「(中島)翔哉も予選を戦っていくうちに、背番号の重みを感じるかもしれない」と言うが、当の本人はポーカーフェイスを崩さなかった。

「まあ、感じたら感じたで。それも含めて楽しめればいいかなと」

 どこかドンと構えている印象の中島に対して、梶山もこのテクニシャンの活躍に期待している。

「力を持っている選手です。練習でやっていても、動きは速いし、可能性を感じる」

 バイタルエリアでボールを持てば独自の空間を作り出し、なにかやってくれそうな雰囲気を醸し出す中島は、リオ五輪のアジア最終予選で間違いなくキーマンのひとりになる。

「身内の選手なので、(中島)翔哉がどんなプレーをするのか楽しみ」

 そう言う梶山や東と、奇しくもFC東京でつながる中島。過去2世代のメンバー10の期待を背負って、リオ五輪世代の10番はリオ五輪本大会に導く原動力になれるか。北朝鮮とのグループリーグ初戦でも左サイドでテクニックを見せつけたが、2戦目以降はゴールにも期待したい。

文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)