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一般家庭のホームセキュリティから法人向けのビル警備、現金輸送など、幅広いセキュリティ業務を行い、レスリング選手のCMでお馴染みのALSOK。同社は、現場の警備隊員に"タフネス"な携帯端末を2機種導入している。開発技術部 開発第一課課長の地頭 正樹氏に、導入した経緯と導入後の現状について話をうかがった。

○2つの"タフネス"を活用するALSOK

ALSOKが導入した端末はパナソニック製「TOUGHPAD」と京セラ製「TORQUE G01」という、いずれもタフネス系の端末だ。携帯キャリアはKDDIで、広域ネットワークサービス「KDDI Wide Area Virtual Switch」や、外出先から閉域網で直接イントラネットへアクセスできる「CPA(Closed Packet Access)」、モバイルデバイス管理「KDDI Smart Mobile Safety Manager」を採用している。

スマートフォン導入までALSOKは、フィーチャーフォンの「E05SH」を利用していた。この端末自身は、警察や消防などでも使われていたタフネスケータイだが、2009年4月より提供されていた端末ということもあり、次期モバイル端末を選定する必要があった。

同社の「警備」という業務上、24時間365日稼働するため、「電池切れや充電中といった電力で業務が停止するのは困る」と地頭氏。そのため、大容量バッテリーを搭載して連続使用時間が長いものが求められた。

雨や台風の中でも業務は遂行しなければならないため、防水・防低温・耐衝撃といった高耐久性能も求められる上、これらの要件以外にも「通常は防刃手袋をしているため、その状態でも活用できるもの」が必要という、ある種の「全部入り」を必要としていた。

しかし問題はこれだけではない。「業務中に普通のスマートフォンを使っていると遊んでいるように見えたり、盗撮をしているように思われがちだった」(地頭氏)という独特の事情もあり、「見た目はいかにも『業務用』という」意外な条件も付け加えられていた。

こうした条件から携帯キャリア3社の提案を検討。モバイル端末と通信サービスの2点に加え、顧客の情報を取り扱うことになるため、情報セキュリティの部分も重要視し、閉域網やMDMといったサービスを提供できること選定・採用にいたったようだ。また、タフネススマホを検討当時に提供できるキャリアが1つだけだったのも理由に挙げていた。

○スマートフォンならではの使い方で業務効率化

TOUGHPADとTORQUEは、業務によって使い分けがされており、TOUGHPADは機械警備隊員、TORQUEは機械メンテナンスなどを行う技術員が利用している。機械警備隊員の業務は、警備会社が建物に設置しているセンサーが侵入や火災等を感知しアラームを出した際に、警備隊員として駆けつけるというもの。

センサーが異常を感知するとALSOKのガードセンターに警報が届くのだが、そこから自動的に一番近隣にいる隊員に情報が通知される際に使われるのがTOUGHPADというわけだ。隊員の現在地はTOUGHPADのGPS機能で常にセンターに把握されており、早期に警備隊員が派遣できるようになっている。

TOUGHPAD側には、センターから自動通知のメッセージが表示され、駆けつける先の情報が表示される。隊員は自分が行ける状態ならそこから現場に向かい、スマートフォンで「現着」のボタンを押して作業を開始する。警報から現着までは警備業法で25分以内と定められており、こうした仕組みはすべて自動化されているそうだ。

もともとは指令に音声無線を使っていたが、フィーチャーフォン時代にBREWアプリを導入、スマートフォンでも指令通知アプリを独自開発して利用している。ただ、フィーチャーフォン時代のアプリでは、すべて文字ベースの警備先の住所や、警報の時間、警報の種類といった情報のみだった。

しかし、今回のスマートフォン化にともないシステムも改修。画像の送受信が可能になったほか、現場に設置されている警備機器の取扱説明書を閲覧するといった機能も搭載した。

機械警備の場合には、顧客自身が取り付けた警報装置もあるし、ATMはメーカーによって操作が異なるなどの対応が難しい場合も多いが、現在はスマートフォンから社内掲示板にアクセスし、機械の説明書をセキュアブラウザ経由で閲覧することができるため、「作業の効率化が図れた」と地頭氏は胸を張る。

TOUGHPADにはWindows Embedded版もあるが、「既存の業務アプリが豊富にあって、最新のものが使える」という点でAndroid版を選択。地頭氏はAndroidを採用したことで、隊員が現場に向かう際にGoogleマップでルート案内ができるようになった点もメリットとして挙げる。都内における機動性を考慮したバイク運用で「携帯できるナビゲーション機能」として活用しているそうだ。

ほかにも、翻訳アプリを使うことで、ATMの使い方で迷っていた外国人に操作を案内するといったこともできるようになって「サービス度合いが向上した」そうだ。ほかにも気象情報を調べて「接近しつつある台風の状況を調べる」とスマートフォンならではの利用が進められている。

その一方で、重要な顧客データを扱う立場であるため、「セキュリティ」はもっとも重要視する条件の1つでもあった。ネットワークは閉域網を活用して外部からのアクセスを防止。重要データは端末へのダウンロードを許可せず、閲覧のみにして端末に保存しないようにした。インターネット接続先も制限しており、MDMによって安全性も確保した。特に、タフネススマートフォンと閉域網を1社で提供できるのがKDDIだけだったという点も、今回の採用の大きなポイントだったそうだ。

○導入をスムーズに進めた影の立役者「モバイル百人会」

もともとALSOKは、ロボット警備員をはじめとしてIT化を推進しているが、トップダウンによるIT化だけでなく、現場からの声を吸い上げて活用する仕組みも整えられており、今回の導入では「モバイル百人会」と呼ばれる社内での取り組みがあったという。

このモバイル百人会は、E05SH時代の2012年に発足しており、モバイル端末を使う現場の警備隊員を全国から集めて、「今までのフィーチャーフォンの問題は何か、将来、どういう端末を利用したいか、どんな機能があればいいか」という声を集めて、次期端末の選定に生かしたという。

こうした現場の声による改善は導入後も生まれており、例えば隊員が着用するベストの胸にスマートフォンを装着するが、カメラを外に向けて装着すると、レンズの位置に穴が空いて収められるように改良された。これも現場から出た運用ルールだという。

TOUGHPADとTORQUEの使い分けも実は現場の判断であり、機械警備隊員はTOUGHPADを、機械メンテナンスなどを行う技術員はTORQUEを自然と選んだそうで、現場の意見によって端末が選択された。TOUGHPADはバッテリー駆動時間も長く、E05SHが4.8時間程度だったところ、24時間は持続するため、バッテリー要件も満たしている(TORQUEも連続通話時間は24時間以上)。

また、業務上の理由で大きい端末を選んだため「重量が重くなった」という声もあるそうだが、一方で「フィーチャーフォンではボタンが小さくて手袋を外していたが、外さずに操作できるようになった」と概ね満足している隊員が多いようだ。

もちろん使い勝手だけでなく、これまで従量課金だった音声通話料が定額制になったことで、通話コストも大幅に削減。従来、細かく取扱いを規定して注意を払ってきた紙媒体の資料も不要になるなど、「コスト効果は抜群に出ている」と地頭氏は強調する。

○2020年に向けてIT化を進めるALSOK

今後、さまざまな大規模イベントが続くが、こうしたイベント時の雑踏警備でも、タフネススマホは重要なアイテムとなると考えている。これは、警備隊員へ素早く、正確な情報配信を行うことで、より品質の高いサービス提供へと繋がるからだ。

少子高齢化などから労働人口の減少が予想されているが、これは警備業務でも例外ではない。限られた人員で業務を遂行する上で、数をカバーする警備能力の底上げに、こうした端末とシステムを活用する必要が出てくる。また、そうした現場の課題解決に加えて「未来のガードマン像を描くことも大事」と地頭氏。実際に、タフスマホのカメラやバーコードリーダーの活用、携帯性に優れたウェアラブルデバイスとの組み合わせによるセンシングなど、具体的に将来像を描いて検討している段階に入っている。

こうした将来像とともに、重要視するのは「現場からの声を重視し、改善を進めていく」ということ。それも単に押し付けるのではなく、現場が「選んでくれないとダメ」とするALSOK。「コスト効率化」「品質向上」という両面から、現場とシステムの二者が"二人三脚"で、2020年へと歩みを進めていく。

(小山安博)