15年4月、男は一つの決断を下した。U-23日本代表DF松原健(新潟)は右外側半月板の手術を行う。全治5か月と発表され、昨季のリーグ戦での出場はなくシーズン終了を迎えた。そして、11月下旬に行われたU-22代表合宿に招集された際には、手倉森誠監督から「まだ、ゲームをできる状態ではない」と言われたようにコンディションは上向きではなかった。しかし、リオ五輪アジア最終予選(AFC U-23選手権)に臨むチームに、松原は帰ってきた。

 間に合って良かったと思う――。現在の心境をそう明かす。「手術をする前に5か月と言われていました。ただ、この大会に合わせて手術をしたつもりだったので」。最終予選から逆算して手術を決断し、リオ五輪出場権を賭けた戦いに間に合わせた。

 コンディションは「9割近くまで戻ってきていますし、僕自身はいい感じにきていると思っています」と語ると、「ピッチ上でのプレーにはそんなに影響はないと思いますが、あとは『気持ち』で何とかしたい。まずは気持ちの面で絶対に負けず、絶対に勝つんだという強い気持ちで臨めればと思っています」と全身全霊を賭けて予選に臨もうとしている。

 右SBの位置に入る松原は「まずは守備からしっかり入っていく」と本職の役割をこなすことが大事だとしつつも、タイミングの良いオーバーラップから鋭い軌道を描くアーリークロスを送って得点機を演出したいと考えている。失点を防ぐだけでは“勝ち点3”は得られず、“勝ち点3”を得るにはゴールを奪う必要があるからだ。「何事も初戦が一番大事と昔から言われている」と語る初戦の北朝鮮戦に勝利するためにも、攻守でのフル稼働を誓う。

「まずはチーム一丸となって戦っていくことが大事だと思う。そして、その先に必ずリオへの切符を取れると、取れるチームだと信じているので、精いっぱい頑張りたい」。約9か月前に手術を決断し、舞い戻った男はチームの勝利のためだけにピッチ上を駆け回る。

(取材・文 折戸岳彦)


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