ヘヴィメタル界の重鎮「モーターヘッド」のフロントマン、レミー・キルミスターが昨年末(2015年)亡くなった。享年70歳。死因は癌だった。


メタルのみならず、パンク・ハードコア界隈などからもリスペクトされるレミーゆえ、この突然の訃報には多くの人間が衝撃を受けた。私は12月29日の朝にツイッターで知り、その日はまったく仕事が手につかなかった。「核戦争が起こっても、レミーとゴキブリは生き残る」と言われた男が死んだのである。やはり信じられない……。

「セックス・ドラッグ・ロックンロール」以外の何ものでもない


レミーは、「セックス・ドラッグ・ロックンロール」を地でいく男だった。あれだけ無茶をして70歳まで生きたというのは、考えようによっては「長生き」とさえ言えるかもしれない。

そんなレミーの生き様を振り返るには、2010年に今はなきシアターN渋谷にて公開されたドキュメンタリー映画『極悪レミー』(『Lemmy 49%motherf★★ker. 51%son of a bitch.』と原題も最高)が最適だ。レミー本人へのインタビューはもちろん、彼を尊敬するミュージシャンや関係者の証言、ライブ映像などをたっぷり詰め込んだ充実の作品である。

とかく面白いエピソード&トンデモ発言には事欠かない。ちょっとだけ紹介すると……(以下、大意です)

・ジミ・ヘンドリックスのローディー兼ドラッグの調達係をしていた(レミー曰く「LSDを10錠持っていくと3錠くれるんだ」。ジミヘン気前いい)

・同じくミュージシャンである息子(その母親とレミーは結婚していない)とスワッピングをしたことがある(レミー曰く「親父と息子の両方とヤリたがる女はけっこう多いんだ」。……ホントかよ?)

・(息子に向けて)「ヘロインはやめろ。コカインもだ。やるならスピード(覚せい剤)にしとけ」

・「バンドメンバーが違うドラッグをやっていると不仲になる」(レミーは、モーターヘッド結成前に在籍していたバンド「ホークウィンド」をクビになるが、原因はレミーのドラッグによる逮捕や遅刻にあった。他のメンバーが大麻等のナチュラル系ドラッグを愛好する中、レミーだけが覚せい剤をやっていたため、生活時間がてんで合わなかったようだ)

ナチュラル・ボーン・ロックスター


ロック・ドキュメンタリーというものは、多かれ少なかれ、肥大したイメージをまとうロックスターの素の姿ーーすなわち人間くさい面をカメラに収めることに意義を見出す。そして、そこにギャップがあればあるほど、面白くなる。

例えば、世界的成功を納めたメタルバンド「メタリカ」の、難航する新作レコーディングとメンバー間の軋轢を記録した『メタリカ 真実の瞬間』。フロントマンのジェイムズ・ヘットフィールドが娘のバレエ教室に付き添う姿や、自慢の車で疾走するシーンで「これは反抗心の表れ。ポーズと言われりゃそうだけど」と、ロックスターを「演じている」部分があることを告白するかのような発言が印象的だった。

あるいは、セックス・ピストルズの元ネタとなったことでも有名なパンクバンド「ニューヨーク・ドールズ」の元ベーシスト、アーサー・"キラー”・ケインの現在の姿と再結成に至る道のりを記録した『ニューヨーク・ドール』。ケバケバしいメイクと派手な衣装で強烈なインパクトを与えたあのドールズのメンバーが、敬虔なモルモン教徒になって図書館勤めをしているというギャップは、ドキュメンタリー的に美味しすぎる。

こうした作品がロックドキュメンタリーの王道だとすると、『極悪レミー』
は少々趣を異にする。本作の特異性は、ロックスター・レミーと素のレミーの間にギャップがないことにある。

紹介されるエピソードは、確かにものすごく破天荒なものばかりだ。しかし、それらの、いわばひじょうにロック的な伝説の数々は、どこまでもナチュラルにレミーという男に収斂していく。

レミーは、ロックスターというイメージを、自然に、気負いなく着こなす。まるで長年着込んで肌の一部となった革ジャンのように、履き込んで足に完全にフィットするようになったブーツのように。日常とロックンロールライフという非日常がイコールで結ばれた稀有な存在ーーそれがレミーなのである。

と、こんな原稿を書いていたら、タイミングよく『極悪レミー』が渋谷HUMAXシネマ(東京)、シネ・リーブル梅田(大阪)にて1週間限定で上映されるというニュースが入ってきた。

渋谷HUMAXシネマ 2016年1月16日(土)〜22日(金)
シネ・リーブル梅田 2016年1月23日(土)〜29日(金)
※いずれもレイトショー

オフィシャルサイトはこちら

できれば、レミーの愛したジャックコーク(ジャックダニエルのコーラ割り)でもあおりながら見たいものである。
この期間限定で構わないので、ドリンクコーナーで販売していただけないだろうか。
映画館の皆さま、どうかご検討を!