NHK「クロ現」の顔だったが…

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NHKの報道番組「クローズアップ現代」の国谷裕子(くにやひろこ)キャスター(58)が3月いっぱいで降板する方向で調整が進んでいると新聞各紙が報じた。ネット上では、過去の週刊誌報道などを元に、様々な憶測が流れている。

クローズアップ現代は、1993年から始まり、月〜木曜日の19時半から30分ほどの放送で、内外のニュースを様々な角度から切り込んできた。

国谷さんの質問で、官邸と確執が生まれた?

番組当初からキャスターは国谷さんが務め、フリーランスで1年ごとに契約を更新してきた。国谷さんは、米ブラウン大学を出ており、英語でインタビューもできる国際派だ。クロ現を担当してからは、菊池寛賞、日本記者クラブ賞などを受賞している。

ところが、朝日新聞が1月8日に報じたところでは、NHKの上層部は「内容を一新する」として、15年末に国谷さんの契約を更新しないと決め、本人にも伝えた。現場からは続投が求められたが、方針は変わらなかったという。4月からは、放送時間を22時に変更し、番組名も「クローズアップ現代+(プラス)」にするそうだ。国谷さんの後任としては、NHKの局アナを検討している。

国谷さん自身は、番組降板について、プロデューサーが続投を求めたことを聞いて、「続けてきて良かった」と周囲に漏らしているという。

番組の看板だった国谷さんが突然降板する方向になったことについて、その理由はあまり報じられていない。とはいえ、これまで番組の現場では、様々な確執があったことが、週刊誌に取り上げられてきた。

写真誌「フライデー」の14年7月25日号では、国谷さんが番組に出演した菅義偉官房長官に「憲法の解釈を簡単に変えていいのか」と突っ込み、官邸からクレームがついたと報じた。菅氏らは報道を否定したというが、ネット上などでは、これで官邸に近いとされるNHKの籾井勝人会長から目を付けられたのではないかと指摘されている。

降板を冷静に受け止める向きも

15年4月には、写真誌「FLASH」が薬物問題を取り上げたクロ現の放送で「やらせ」があったと報じたことについて、NHKの調査委員会が一部に誤りがあったと認める報告をしたことを受けて、キャスターの国谷裕子さんが声を詰まらせて謝罪する事態になった。

その後、週刊現代が11月14日号で、クロ現が16年3月いっぱいで打ち切られる方針が決まったと報じた。官邸の意向を受けた籾井勝人会長サイドが、政治を扱う報道番組を縮小しようとしているとも指摘していた。

今回、クロ現の打ち切りはなかったものの、放送時間が深夜にずらされ、国谷さんが降板する方向だと報じられた。このことについて、識者からは、様々な見方が出ている。

NHKアナウンサーの堀潤さんは、ツイッターで「菅官房長官出演以降、現場の元同僚や後輩たちからは『政治ネタを扱いにくくなった』と聞いていた」と打ち明けた。そして、クロ現について、「ついに骨抜きに」とも漏らしていた。

国谷さん「降板」と同じ時期に、テレ朝系「報道ステーション」の古舘伊知郎キャスターも自ら降板するほか、TBS系「NEWS23」の岸井成格キャスターも降板する方向だと報じられている。こうしたことから、落合洋司弁護士は、「次々と抹殺されていく感じ」とツイッターで懸念を示していた。

ネット上でも、「ウワサされた通りの展開」「気骨の人から順に消されていく」「また報道統制か・・・」と憶測が飛び交うようになっている。

ただ、国谷さんについて、質問が偏っていたり弊害も出てきたりしているとの指摘もあり、「降板」について冷静に受け止める向きもあった。