年の初めに縁起物を愛でる。「根津美術館」で「松竹梅―新年を寿ぐ吉祥のデザイン―」

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「松竹梅」がお祝いのデザインとして使われるようになったのは、室町時代からとか。日本人の暮らしに根付いてきた「松竹梅」の美術を集めた展覧会で、新しい1年をスタートしよう。

2016年1月9日(土)から2月14日(日)まで、南青山の根津美術館では、コレクション展「松竹梅―新年を寿ぐ吉祥のデザイン」を開催。松・竹・梅を単独、または組み合わせてモチーフにしたデザインや絵画、工芸品など41件が登場する。

今回のコレクション展は、松竹梅のデザインを4つのコーナーに分けて展示。ひとつめは2016年の干支である『申』で、松竹梅と一緒に描かれた猿の絵などを紹介する。2つめは『めでる』をテーマに絵画を中心に並べ、3つめは『身に着ける』として、振袖や刀装具などを集めている。最後に『祝う』と題して、祝いの膳に使われる陶磁器をはじめ、香炉や水差し、茶釜などを展示する。

写真の「染付色絵松竹梅文皿」は、江戸時代に現在の佐賀県にあたる肥前の鍋島藩窯で作られたもの。今でも佐賀は、有田焼や伊万里焼などで日本屈指の焼き物の里として有名だけど、この皿も当時の鍋島の高いデザイン力と技術力が分かる名品となっている。

「3つの円に描かれた松竹梅に加えて、背景には細密な亀甲紋が描かれており、お祝いの席にふさわしい吉祥の文様を集めてめでたさを演出しています」と、広報担当者さん。
松竹梅の中でも特に「松」は、お正月の“門松”にも使われるように、めでたい植物の代表格として考えられてきたとか。例えば、昔から動植物を描いた「四季花鳥図」には、松の大木を描いたものも多い。写真の屏風は17世紀の桃山時代に描かれた「松鶴図屏風」で、こちらにはめでたい鳥の代表格である「鶴」も加わって、さらに祝意を高めている。

「絵画のコーナーでは、展示される11点のうち半数以上が16世紀頃の中国で生まれた作品です。寒い季節に耐える植物の姿を愛した中国の美術に影響を受けて、日本で松竹梅がめでたいものと考えるようになったそうです」(同)


また、装飾物を展示するコーナーでは、江戸時代に作られた縁起物の「紅地(べにじ)松竹梅鶴文振袖」も登場。裕福な豪商が着物を注文して作ることがポピュラーになったこの時代には、おめでたい図柄が人気だったそう。

絹地を小さくつまんで糸でくくって染める「鹿子(かのこ)絞り」の技法で作られた豪華な着物には、松竹梅と鶴の文様が描かれていて、お正月にぴったり。季節に合わせて、日常の中で縁起を担いでいたことが伝わってくる。

日本文化について学びたい女子は、期間中に行われるレクチャーをチェックして。例えば、22日(金)には『松竹梅』の、スライドレクチャーが地下講堂で開催される。当日先着130名の講座だけれど、予約不要だから気軽に参加して。

「1月30日(土)には、根津美術館・学芸部長の松原茂を講師に『松竹梅の美術」について解説する講演会も実施します。こちらは16日(土)までに往復はがきで申し込みが必要です。作品をより詳しく知ることができますよ」(同)

それぞれの作品に込められた「長寿」や「健康」への思いを感じ取って。

画像上:染付色絵松竹梅文皿 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵
画像中:松鶴図屏風 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵
画像下:紅地松竹梅鶴文振袖 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵