恐怖映画で血が凍る!?(shutterstock.com)

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 身の毛もよだつ程の恐ろしい映画を観ると、実際に血液が凝固するという事実が判明した。これはオランダのライデン大学でBanne Nemeth氏らが健康な若年成人24人を対象に行なった実験の成果で、研究論文がイギリス医師会雑誌「British Medical Journal」誌12月16日号に掲載されて話題を呼んでいる。

 古くは中世から、人間は極度の恐怖を感じるとBloodcurdling(血も凍るような)、つまり「血液が凝固する可能性がある」と信じられてきた。今回のNemeth氏らの研究は、この古来の言い伝えや従来の学説を科学的に実施検証し、裏付ける結果を得たかたちとなる。

血液凝固因子ごとの微差を御存じ?

 実験の手順はこうだ――。24人の鑑賞者たちを、\茲縫曠蕁識撚茲魎僂討修琉貊鬼峺紊剖軌蕷撚茲魎僂襦↓∪茲剖軌蕷撚茲魎僂動貊鬼峺紊縫曠蕁識撚茲魎僂襦△箸い順番を逆に組んだ2班に分けた(残念ながら映画の具体的な作品名は記述されていない)。実験上映に際しては、全員に対して上映前と上映後の各15分以内に血液検体を採取する方法がとられ、その凝固活性を分析した。

 その結果、教育映画の鑑賞後よりもホラー映画体験後のほうが、顕著な血中反応がいずれのグループでも認められた。具体的には、後者の恐怖体験後は「血液凝固第三子」と呼ばれる凝固タンパク質の数値、その上昇幅がはるかに高い事実が明らかとなった。

 血の固まる仕組みには11種類の血液凝固因子(=タンパク質)が関わっている。その一部が欠乏、ないしは上手く働かないために"止血異常"をきたす代表的病気が、80年代以降わが国でも耳にする機会の増えた「血友病(Haemophilia)」である。なかでも8番目の「血液凝固第式子」の欠乏や機能低下が認められる病気を「血友病A」、一方9番目の「血液凝固第衆子」の欠乏や機能低下の病気を「血友病B」と分けている。

 では、今回の論文に登場する7番目の因子とは? 日本国内で先天性第三子欠乏症の推定患者は約70人いるとされている(血液凝固異常症全国調査事業平成24年度報告より)。また、この欠乏症が頭蓋内出血や胸腔内出血など「致死的出血」を来す症例もあるにはあるが、一般的には血友病のような"ひどい出血傾向"を来す症例は多くない。

時には「精神の血抜き」でリフレッシュ!

 「いってみれば、ホラー映画は精神の血抜きをする床屋のようなものだ」と書いたのは、あの『シャイニング』などで知られるホラー小説の巨匠スティーヴン・キング氏だ。彼の稀なノンフィクション本『死の舞踏』(安野玲・訳)にはこんな言葉もある。「ホラー映画は奇形を讃えているわけではない。奇形についてくり返し語ることによって健康と生命力(エネルギー)を讃美する」、けだし名言。今回の実験結果も健常人の証しだろう。

 また、究極のサバイバル映画『127時間』(2010年作品)の試写会で失神者が続出した際、現地の神経科部長がこんな談話を残している。

 「映画を観て失神する人は、献血の際などにも失神経験のある人も多いんだ。似たような反応は自然災害など極度のストレス下でも起こり得るし、重要な臓器にアドレナリンのような化学物質が放出される。しかも短期的かつ大量に放出されると心拍のリズムがおかしくなり、死に至る場合もあり得るよ」

 今回のオランダでの実験では、双方の鑑賞例でも「その他の血餅をつくるタンパク質(=トロンビン-アンチトロンビン複合体、Dダイマーなど)に対する影響は見られなかった」と報告されている。つまり"恐怖"は血液凝固のきっかけにはなるものの、血栓などを形成する原因にはならない事が示唆されたというわけだ。

 Nemeth氏らはこう結論づけている。「われわれが突然の恐怖に直面した時の血液凝固反応は、危険な状況下で失血した場合に備えて、身体を準備させるものなんです。そういうかたちで進化上、重要なベネフィットがあったと考えられます」

 しかし、血友病患者の止血方法は未だに開発途上である......。
(文=編集部)