人に甘えるだけとは違う、ポジティブな「依存」とは?

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「依存」も、ポジティブな文脈ではほとんど使われることがない単語です。しかし本来、人に頼む、人を頼りにするという行為は大切なことです。依存しっぱなし、というのは問題ですし、逆にまったく人に頼むところがない、というのも難があるかもしれません。今回は、その間のちょうどいいところを確認してみます。

依存と自立の間とは


「依存」の反対の意味の言葉を探すと「自立」という単語が見つかります。依存と自立は、単純に裏表ということではないかもしれません。ここでは、依存と自立の関係について、2つの典型的なタイプから考えてみましょう。

例えば、うつ病を発症したCさんという人がいます。Cさんは、仕事を頑張りすぎ、何ごとも人に助けを求めずに、自分でなんとか処理しようというタイプでした。その姿勢は、「自立している」と見ることもできますが、「人に助けを求められない」という性格が裏目に出たとも言えます。「自分だけでは背負いきれないものを人にお願いする」ということは、私たちにとって大切な課題と言えるでしょう。

一方、タイプの違うDさんは、自分が担当する仕事をきちんとこなせておらず、人の手を借りて何とか形を整えているという状況です。Dさんは周囲の人から、「人に依存して、自分でやるべきこともできていない」と見られているようです。Dさんは個人的な悩みを抱えており、そのことが仕事の出来にも影響しているのですが、そんな内面的な苦しみは職場の人には想像しようもありません。Dさんにとって(=私たちにとって)大切なのは、未解決になっている過去や、内面の情緒的な問題に取り組み、「自立を手に入れる」ことかもしれません。

自分でできること・できないこと


CさんやDさんのような例は、実際の心理相談の場面でもよく見かけるものです。時には、両方が混じったかのような人もいます。依存と自立の間を現実的に扱うためのひとつの切り口として、「自分でできること」と「自分ではできないこと」の区分があります。もちろん、その区分は固定的なものではなく、人や状況によって多少の揺らぎのあるものです。

Cさんに対して、やみくもに「頑張れ」と言うと、無茶をしたり、自分はまだ頑張りが足りないんだと落ち込んだりするかもしれません。また、Dさんに対して「自分のペースでいいよ」と言うと、頑張らないことで自分でも達成感が感じられないような虚しさを助長してしまう可能性があります。

まずは、「何ができそう?」「何が難しい?」「何ができたほうがいいと思う?」──など問うことで、現実的にできること・できないことを確認してみましょう。そのうえで、例えば「お願いする練習をしよう」「これだけは自分で取り組んでみよう」などと具体的な取り組み方を考えることで、これまでとは違う一歩を踏み出せるかもしれません。

ポジティブな依存のためには自立が必要


依存は、「自分には無理」という諦めの気持ちや、虚しさを招いてしまいがちです。そうではなく、「人にお願いできて助かった」、あるいは「これってお互い様だよな」と思えるような良い依存の関係を作りたいものです。

それには、自分でやり遂げる達成感や、自分でできるという自信につながる自立が伴っていることが大切です。その点で、互いの足を引っ張り合い、最終的に双方にとって悪い結果しか導かない「共依存」の関係とは異なります。

皆さんも、「依存」と「自立」の間、「自分でできること」と「自分ではできないこと」の間を、一度確認してみてはいかがでしょうか。

<執筆>
●玉井 仁(たまい・ひとし)
東京メンタルヘルス・カウンセリングセンター カウンセリング部長。臨床心理士、精神保健福祉士、上級プロフェッショナル心理カウンセラー。著書に『著書:わかりやすい認知療法』(翻訳)など