「SFや科学は明るい未来のために使わなければいけない」神山監督x塚本教授x井上室長が語る攻殻ブレスト

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SF作品で見てきた未来の技術がリアルになりつつある現代。2029年が設定の都市とされている攻殻機動隊の世界に今どれだけ近づいているのか。義体《ロボット》、電脳《人工知能》、都市をテーマに「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT presents 公開ブレスト」が行われました。

今回は都市のお話です。

第一回:「攻殻機動隊 S.A.C.から15年。世界はどう変わったか?」神山監督x塚本教授x井上室長が公開ブレスト

第二回:「人工知能は人間よりも経験値を上げていく速度が速い」神山監督x塚本教授x井上室長が語る攻殻ブレスト登壇者は『攻殻機動隊S.A.C(STAND ALONE COMPLEX)』シリーズ監督・脚本を担当した映画監督の神山健治氏、神戸大学大学院工学研究科教授の塚本昌彦先生、国立研究開発法人情報通信研究機構の井上大介室長の3名。

――最後のテーマは都市《スマートシティ》です。作品のなかではあまりリアルには描かれてはいなかった都市インフラや交通。神山監督にお聞きしたいのですが、義体《ロボット》、電脳《人工知能》に比べて、我々が生活してる都市とそんなに違和感なく見えます。このあたりについてお話を伺えますか。

神山:当時描いてたときは、視覚情報として入ってくる、建物だったり自動車だったりをあまりハイテクにしすぎてしまうと、物語にリアリティを感じられなくなってしまうのであえて近いものにしていました。たとえば車なんか、僕は自動車の運転が好きだしガソリン車が好きなのですが、リアルに考えれば、自動運転とかある程度支援型のAIによって運転が自動的になるのは当然あるだろうと想像していました。ただ、肌感覚として車が自動で運転されてるとなったときに、「それははたしてマイカーに乗るというのか?」という感覚があったので、あえてそのへんは進化させずに描いてた部分ではありますよね。

あと、建物とかも士郎先生が描いた原作にはおそらく太陽光エネルギーがメインになっているだろうということで、すべての建物に太陽光パネルがあるんです。僕はまだおそらくエネルギー問題とか起きているだろうということで、あえて太陽電池とかは入れなかったんです。そのへんは完全に追い越されてしまってますね。今年のモーターショーに僕呼んでいただいて、オートパイロット機能とかを見せていただいたんですけども、想像してたよりもはるかにそのへんは進化していて。大渋滞とかはもしかしたらなくなっていくのかなとかっていう部分は感じましたね。

――塚本先生。神山監督は、リアリティさを出すためにあえてっていう部分もお話しいただいたんですが。塚本先生は映像を見てどう感じられましたか?

塚本:最近講演で、「ICTは3年5年でガラッと様子は変わるが、街のインフラは10年20年でもそう変わらない」と言っています。この会場を見渡しても、一部プロジェクターなどは変わっている部分はありますが、おそらく30年前とそんなに変わらない。これ、わたしが考えだしたように言っているんですが、作品の影響をうけていたことが映像を見てわかりました笑

――井上室長。先ほど伺った中に自動運転という言葉が出てきましたが、そこでもセキュリティ問題はでてきますでしょうか?

井上:毎年開催されている「DEFCON」という、アメリカで一番有名なハッカーカンファレンスで、今年は車のソフトをハックしていました。動画もアップされていますが、ステアリングからブレーキからアクセルを外からフルコントロールできるというを示しているのがあって。それはもうすでに脆弱性というか、セキュリティの穴は塞がれたあとなんですけども、その穴があったためにそこから入って、車のコントロールを完全にのっとれるというのを示すカンファレンスがあったんです。

そういう意味ではもう、カーオートメーションの世界というのはどんどん広がっていて実現化も早いと思うんです。攻殻機動隊ARISEのなかで描かれていた、都市交通を麻痺させる表現がありました。あれは交通インフラだったんですけど、重要インフラといわれているような世の中の仕組みに対してのサイバー攻撃はもうすでにはじまっています。それに対して研究者は総動員でとりかからないといけない状況にはなってます。ただし、セキュリティエンジニアや研究者の人数が足りないといわれています。そういった意味でも、攻殻CTFのようなプロットを通じて、新しい人材がどんどんこの世界に入ってきて、都市も含めてインフラを守るというのは非常に重要になってくるかなと思います。

塚本:建物とかビルとかをハックして外部からコントロールするというシーンがけっこうたくさん出てきてるような気がするんですが。それはもうリアルに?

井上:実際にはじまっています。この会場にもあると思うんですけども、天井についているウェブカメラとか、あとみなさんのご家庭にあるようなホームルーターとか、一般にコンピュータだと思われてないもの、いわゆるIoTと最近いわれているものが今ものすごくマルウェア、ウイルスに感染をしているんです。我々大規模なサイバー攻撃の観測網をつくって、日々観測してるんですけど、2〜3年前はほとんどがWindowsからの攻撃でした。7割8割以上がWindowsからの攻撃だったんですけど、今はIoT機器からの攻撃が多いときは8割を超える状態で、Windowsで攻撃という世界ではなくて、コンピュータだと誰も思っていないものがインターネット上で攻撃を繰り広げています。そのなかに、よく見てみるとかなり重要インフラのなかに入り込まれているようなパターンというのも見受けます。

――もっとお話聞きたいんですけど、時間がそろそろ最後になってまいりました。最後にお三方からおひと言ずつ、この攻殻機動隊の世界、どこまで実現できて、どんなふうな未来を期待されてるのか、そんなところをトークを終えてご感想含めていただければと思っております。神山監督からお願いできますか。

神山:今日お二方とあらためてお話をさせていただいて、物語よりも現実が進んでいる部分もけっこうあるんだなという気もするし、予見しようと思ってこの作品をつくったつもりは全然なかったんですけれども、意外に先取りしていた部分もあったなと思っていて。さっきちょっと言ったんですけども、やっぱりSFだったり科学というのは、結局は人間の幸せにつながっていくし、明るい未来を見せていくために本来は使われなければいけないものなんじゃないかなというふうに思っています。まさに攻殻の世界が実現していくなかで、犯罪だったりそういう暗い部分ではないところで技術が実現していくといいなというふうに思っていて。これからも僕も注意して、現実のなかでこれは攻殻だなという芽吹いてるテクノロジーなんかを作品を通じて伝えていくことができたらいいなというふうに思います。

――塚本先生、お願いします。

塚本:わたしは映像を見せてもらって、なんか知らないうちにかなり影響を受けているなということをあらためて感じたんです。わたし自身が思いついたつもりのものが、実は攻殻機動隊からとっていたということがけっこうありそうな気がします。それから、わたし自身、今後実現したいと思っているのは、先ほども申しましたように、何よりも電脳ですね。自分自身が1号になりたいというふうに思ってまして。非接触であればそれに越したことはないですけども、医療の技術とかをよく見ながら、脳に挑んでいきたいと感じております。

――井上室長お願いします。

井上:攻殻機動隊の世界のなかでセキュリティは非常に大きい部分を占めていて。たとえば、攻性防壁であったり身代わり防壁であったり、そういったアイデアって、原作は25年以上前に描かれて、ほとんどのアイデアというのが現実化してきています。とくに攻撃側は現実化しているんですよね。たとえば合体型のウイルスで、それが組織のなかで時限で発生してとか、そういうのはもうほんとにできています。では、防御側の技術はどうなっているのかというと、意外とまだそこに追いついてない部分もたくさんあります。そこは攻殻機動隊にインスパイアを受けて、攻殻機動隊のなかで出てくる防御技術をすべて実現するぐらいな形で研究開発を進めたいというふうに思っているところです。

第一回:「攻殻機動隊 S.A.C.から15年。世界はどう変わったか?」神山監督x塚本教授x井上室長が公開ブレスト

第二回:「人工知能は人間よりも経験値を上げていく速度が速い」神山監督x塚本教授x井上室長が語る攻殻ブレスト