なかなかエンジンのかからない新年。「働く意欲が湧いてくる映画&ドラマ」をピックアップします。

■ネットがあれば、その場で観られる作品のみ

今年は米動画配信サービス大手のNetflix(ネットフリックス)の日本上陸が話題になりましたが、インターネット環境さえあれば、パソコンやスマートフォン(スマホ)でいつでもどこでも映画やドラマが見放題という新しい鑑賞の形が浸透してきました。寒さに震えながらレンタル店に行くのがおっくうという人にも便利な、年末年始にこそありがたいネット配信。ということで、DVDレンタルはもちろん、現在、各動画サービスで配信中の作品を中心にご紹介します。未登録の人も大丈夫。ほとんどのサービスで、最初の2週間〜1ヵ月は無料視聴が可能です。

■ファッションに恋をした写真家

1本目は、観るたび「仕事に邁進しよう!」と決意を新たにさせてくれるドキュメンタリー映画『ビル・カニンガム&ニューヨーク』です。80歳を過ぎてなお、ニューヨーク・タイムズ紙にコラムやファッション写真を寄稿する写真家ビル・カニンガムに密着し、そのストイックな仕事ぶりや、謎に包まれた私生活をカメラに収めています。自転車で毎日NYの街を走りまわり、気になるオシャレさんを見かけると、たとえ誰かと話している最中でも走っていってシャッターを切るビル。ヴォーグ誌の名物編集長アナ・ウィンターに「私たちは彼のために着てるの」と言わしめ、パリコレは顔パスというファッション業界では伝説的な人物でありながら、ビル自身の格好はというと、機能性を重視して、いつも清掃作業員が着るブルーの上っ張り姿。そんな彼のもとにはパーティやイベントの招待状が続々と届きます。連日連夜、撮影のために数件のイベントを自転車ではしごするのですが、ビルは出席者の名前を一切気にしません。撮るかどうかは「ファッション次第」。セレブの写真だって容赦なくボツです。彼が求めるのは、リアルなファッションの動向を記録することのみ。「取材で来ているから」とパーティの豪華な料理には一切手をつけず、食事というとチープな店で簡単なサンドイッチをコーヒーで流し込むだけ。けれど、ファッションに恋した彼には、そんな生き方がハッピーなのです。

ビルのブレない姿勢とプロ意識に刺激をもらえるだけでなく、ブルーの上っ張り姿の彼と一緒に、NYのストリートを駆け抜けている気分にもなるステキな作品です。(Netflix、Amazonプライム・ビデオで配信中)

■ピーターラビットの作者の半生とは?

自分の興味を貫いて名を成した人物の映画という意味では、『ミス・ポター』もお薦め。世界的に有名な児童書「ピーターラビット」シリーズの作者ビアトリクス・ポターの半生を描きます。子どもの頃から絵を描くことと動物と自然を愛した彼女。「良家に嫁ぐ」ことを常識とする英国ヴィクトリア時代の上流階級の家庭に生まれましたが、30代半ばになっても嫁に行く気配は全くなし。自分が描いたウサギ「ピーター」を主人公にした児童書の出版を目指して、ひたすら物語を書き続けています。やがて、出版に尽力してくれた編集者と恋に落ちますが、「身分違い」だと両親は大反対。ひっそりと婚約する2人ですが、その矢先に思いもよらない出来事が……。

おそらく、ビアトリクスという女性は、時代背景を現在に置き換えても、かなり浮き世離れした「不思議ちゃん」だと思われます。だって、アラフォーになっても友達は絵に描いたウサギだと本気で思っていますから。しかし、たとえ変わり者だと言われても、「好き」を貫き通す生き方に共感する女性は多いのではないでしょうか。(Huluで配信中)

■ビンラディンの潜伏場所を特定した米CIAの女性

次に紹介する『ゼロ・ダーク・サーティ』は、正直、観た後で働く意欲が湧くかどうかは自信がありません。だけど、ある意味究極のお仕事映画だと言えます。

2011年5月、国際テロ組織アルカイダのトップ、ウサーマ・ビンラディンが米軍に殺害されたというニュースが世界を駆けめぐりました。この映画の主人公は、その殺害計画における重要人物。緻密な分析でビンラディンを追い詰め、潜伏場所を特定した米CIA(中央情報局)の若き女性分析官です。男社会のCIAで、男性上司らから“girl”と呼ばれて軽んじられながらも、狂気にも似た執念で標的を追い込むマヤから目が離せなくなります。

米軍による捕虜への拷問シーンは真実ではないと米上院議員が異議を唱えたり、マヤのモデルについてさまざまな憶測が飛び交うなど、物議も醸した作品でもありますが、真相は2061年の機密公開まで謎のままです。

今なお続くイスラム世界の混乱や、テロの脅威は、私たち日本人にも他人事ではありません。お正月休みで弛緩した頭をシャキッとさせるためにもお薦めです。

ハードな作品ですが、監督を務めたのは、『ハート・ロッカー』で女性で初めて米アカデミー賞監督賞を受賞したキャスリン・ビグロー。男性監督以上に骨太な映画を撮ります。本作の全米公開は2012年12月。ビンラディン殺害からわずか1年半でこの映画を世に送り出した気概は凄いです。(Netflix、U-NEXT、dTV、Amazonプライム・ビデオで配信中)

次回は、同じCIAでもマヤとは全く異なるタイプのヒロインが活躍するドラマから紹介します。

>>>後編に続く

(新田理恵)