経済に潜む闇を白日の下にさらけ出し、独特な視点で切り込む刺激的な金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」。今週はアフリカ南部の国・ジンバブエが中国の人民元を「通貨」に採用するという、びっくりぽんなニュースを解説!

独裁者の滅茶苦茶な通貨政策の末路

 アフリカ南部にあるジンバブエが人民元を「通貨」にすると報道されていますが、いったいどういうことなのでしょう?よく考えるととても奥が深い問題なので解説します。

 ジンバブエでは2008年頃に天文学的なインフレに見舞われました。原因は独裁者・ムガベ大統領(91歳!)が白人が保有する農場や工場をタダ同然で取り上げたことにありました。農業技術等を持っていた白人たちはジンバブエを去り、経済活動は完全にマヒしてしまいました。

 さらにムガベ大統領は、軍人や公務員への給与支払いや対外債務の返済など必要が生じると、中央銀行に通貨「ジンバブエ・ドル」をいくらでも印刷させて支払いに充てていました。

「普通の国の中央銀行」が通貨を印刷するときは必ず市中から(普通は銀行のことです)国債など資産を買い入れるので、それだけではインフレになりません。しかし、ムガベ大統領は何の価値の裏付けもとらないまま通貨を大量印刷したので天文学的なインフレを招いてしまったのです。

 そのため周辺国はおろかジンバブエ国民さえもジンバブエ・ドルを信用せず、国内では米ドルや南アフリカ・ランドが流通するようになっていました。そしてついに2015年6月にジンバブエ政府はジンバブエ・ドルの廃止を正式に決定するに至ったのです。

1ドル=3.5京ジンバブエドル!

 その際、ジンバブエ政府は国内に残るジンバブエ・ドルを、なんと3.5京:1で米ドルに交換してしまいました。つまり1米ドル=35000000000000000ジンバブエ・ドルです。

 それまでジンバブエ国内で「流通」していたドルは、ジンバブエ国民が律儀に3.5京ジンバブエ・ドルを銀行や両替商に持ち込んで1米ドルに交換していたのかというと、もちろんそんなことはありません。ジンバブエの近隣国で手に入れた米ドルをポケットにでも入れて持ち込んでいたのでしょう。

 つまり、ジンバブエ国内で流通している米ドルはジンバブエ・ドルから正式に交換されたものではなく「ジンバブエ国内の資産(あるいは財)と交換されることなく取得された米ドル」ということになります。 簡単に言えば「拾ってきた米ドル」と同じです。

 これからジンバブエでは米ドルや南アフリカ・ランドと並んで人民元が「流通」することになりますが、人民元は米ドルや南アフリカ・ランドと違って近隣諸国からポケットに入れて持ち込めるほどアフリカでは流通していません。 いわば「拾って来ることができない通貨」です。

拾ってきた米ドルと拾ってこれない人民元

 中国人民銀行は、貿易黒字や海外からの直接投資などで中国に流入した外貨(主に米ドル)を一元的に買い入れ、それを準備資産として人民元を発行しています。つまり人民元はジンバブエ・ドルのように「いくらでも印刷した紙切れ」ではなく、一応は「価値の裏付け」のある通貨となります。

 その「価値の裏付け」のある人民元を、どのようにジンバブエ国内で流通させる(持ち込む)のか?

 答えは「あげる(贈与する)」と「貸す」と「何か価値のあるもの(たとえば資源鉱山の利権)と交換する」の三択しかありません。それぞれを組み合わせているような気もしますが、大半が「資源鉱山の利権と交換」であると考えます。

 ジンバブエでは国内の政治・経済が長く混乱していたため、どれほど価値のある資源があるのかわかりませんが、世界有数のダイヤモンド産出国であるボツワナの隣国なので有望な資源はありそうです。

 しかし人民元が米ドルや南アフリカ・ランドを押しのけて流通通貨の大半を占めるようになったら、それは中国がジンバブエを経済のみならず国全体を「乗っ取ってしまう」ことにもなります。

 独裁者のムガベ大統領もあと何年も生きるとも思えないため、チベットやウイグルなど武力だけで征服した支配地ではなく、アフリカに中国の「人民元で征服した」新しい支配地が生まれることになります。