青い塊がじわじわと動いていく。青色ジャージの東海大モールが紫紺ジャージの明大を押し壊し、インゴールになだれ込んだ。後半28分、トンガからの留学生、テビタ・タタフの同点トライ......。

 東海大モールの強みは? と問えば、東海大のフランカー藤田貴大(たかひろ)主将は即答した。

「塊ですかね。あのトライをとったところも、メイジさんからプレッシャーを受けていたんですけど、最終的にはしっかり塊が前に動いて、タテに切り返して、ゴールラインを割ることができました」

 新春2日の秩父宮ラグビー場。東海大が28−19で明大に逆転勝ちし、6年ぶりの決勝進出を決めた。力と力の真っ向勝負。勝敗を分けたのは、モール練習にかけた質量の差、これで勝負するという意思統一の差だった。

 前半は明大のフォワード(FW)、バックス(BK)一体となって前に出る勢いに押されて、3トライを許した。12点のビハインド。「正直、僕はとても焦っていました」と漏らす藤田主将はハーフタイム、チームメイトに声をかけた。

「つらくなったら、スタンドをしっかり見よう」と。スタンドには声を枯らして応援する控え部員が陣取っていた。

 この日は明大の巧みなモールつぶしにあって、それほど前進することはできなかった。でも、激しいブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)での攻防ではボディーブローのパンチのごとく、明大の体力を奪っていった。決め事は「5歩」である。

 アタックの時、ボールを持つ選手がタックルを受ける。そのボールキャリアは踏ん張る。2人目が相手をつかみ、5歩、つまり3mほど前に出る。残されたタックラーは回って戻らなければいけない。これは疲れる。

 さらに自信のラインアウトモール。まずは立つ意識。倒れてもすぐに起き上がる。一体となって前に出る意識。木村季由(ひでゆき)監督が会見後、こっそり教えてくれた。

「いつもやっているのは、全員で共通理解をすることです。その上で、FW8人であれば、16本の足がしっかり前を向いて前進していくのです」

 その状況を作るため、低くなって隣とのバインドを締めたり、からだを動かしてボディーポジションを変えたりするのである。相手の弱い箇所に力を結集する。「塊」の真髄を木村監督が説明する。

「どんな状況になっても、うちは固まっているのです。揺さぶられても固まれますし、固まり直すこともできすます。やることのイメージは共有できています。頭の使い方も」

 こちらの顔を見て、ちょっと笑った。

「頭って脳ミソじゃないですよ。頭の位置のことです。脳ミソの使い方はあまり共通していないですから」

 冒頭の後半28分の同点トライの後、難しい位置からのゴールも決まって逆転。さらに4分後、モールを組み直して押し込み、またもタタフが右サイドを抜け出して、ダメ押しのトライを奪った。

 タタフは東京・目黒学院高卒の1年生。183cm、110kg。強靭な足腰、しなやかなランで高校日本代表、ジュニア・ジャパン(20歳以下日本代表)としても活躍した。夏、靭帯をケガして、ようやく復帰した。

 公式戦デビューは、「20分間限定」の交代出場だった。その間に2トライ。仲間思いのシャイな20歳が日本語で喜びを表現する。

「試合に出たら、痛くてもやる。(2トライは)満足している。目黒学院の先輩も応援にきていてうれしかった」

 確かにチームの軸はトンガやニュージーランドからの留学生だが、決勝進出はチーム全員のがんばりがあったからこそである。そうは目立たないが、後半ノートライに抑えた個々のタックルと組織立ったディフェンスにも成長の跡が見てとれる。

 チームの成長は「質も量も、ここ10年では1番」と木村監督が言う練習ゆえである。同監督が好む言葉が柔道の創始者、嘉納治五郎の教えのひとつ『力必達(つとむれば、必ず達する)』。努力すれば必ず、優勝することができるという信念だろう。

 武器のモールの練習は、春シーズンが毎日、秋からは週に2、3日、朝6時過ぎから始めた。8時まで続く。さらに東芝、ヤマハ発動機、サントリーへの"出げいこ"。

 特に強力モールで鳴る東芝。12月に行った時は、東海大の先輩となるリーチ マイケル日本代表主将にハッパをかけられた。

「ケンカするつもりでファイトしてこい」

 その練習の激しさは、FWの耳を見ればわかる。ブレイクダウン、タックルで敵味方と擦れるからだろう、藤田主将の両耳は膨れ上がる「ギョウザ耳」となっている。主将がぼそっと漏らす。「今、左耳が沸いています」

 そういえば、リーチにはこうも言われたそうだ。「日本選手権で戦おう。お互い、がんばろう」と。今季の日本選手権はトップリーグ王者と大学日本一が対戦する。つまり、優勝しろ、ということである。

「(東芝との)モール練習で自信がつきました。僕らが、ばらけていては押せない。固まって前に前にゆっくりじわじわ力を集めて、(相手の)真ん中を切っていくんです。尊敬する先輩たちと(日本選手権で)戦いたい」

 実は藤田主将には消せない記憶もある。昨年の大学選手権準決勝、ラスト5分で筑波大に逆転負けした。「そこで時間が止まっていた」と主将は言った。

「ようやく、ここが始まりかな、と思います。決勝で勝たなければ、1年間、やってきたことの意味がないというわけじゃないけれど......。ひとつにまとまって相手(帝京大)を倒します」

 その王者・帝京大は7連覇に向けて盤石の強さを発揮している。特に大一番の帝京大はとてつもなく強い。ただ勝負に絶対はない。勝利の条件は、スクラム、ブレイクダウンで圧倒すること、留学生が暴れまわること、能力の高いバックスリー(両ウイングとフルバック)がボールを持つこと、つまりは持てる力を発揮することである。狙い目は?と聞かれ、木村監督はこう言った。

「まだまだ帝京さんの方が力は上です。奇策が通じる相手ではない。この1年、鍛えたところをしっかり出したい。まずはディフェンスで相手のリズムを崩していくしかないのかなと思います」

『力必達』。鍛えたところ、それはディフェンスとブレイクダウン、モールとスクラムである。プラス、頂点への渇望、いわば「塊」となる全部員の勝利への執着である。

松瀬学●文 text by Matsuse Manabu