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●なぜオムニチャネルに取り組んだのか
セブン&アイ・ホールディングスが、11月からオムニチャネルを具現化した「omni7」を本格スタートさせた。オムニチャネルはリアルとネットの融合と表現される取り組みだ。セブン-イレブン、イトーヨーカ堂、そごう・西武など、傘下企業計8社の商品が統合ショッピングサイトの「omni7」で購入でき、自宅への直接配送ほか、セブン-イレブン、イトーヨーカドーなど対応店舗でも受け取りが行える。セブン-イレブンでは返品も受けつけ、利便性を高めたのが特徴だ。セブン&アイ・ホールディングス取締役執行役員最高情報責任者(CIO)の鈴木康弘氏に、「omni7」開始までのいきさつからポイントまでを聞いた。

――「omni7」開始の背景について教えてください。

もともと、ネットとリアルの融合をしようとは考えてはいました。セブン-イレブンをより近くて便利な存在にしていくことがベースにあり、そうしたなかでネットの文化がだんだんと身近になってきたことが背景にあります。

特に2008年にスマートフォンが登場したのが大きかったですね。いつでも、どこでも、ネットにアクセス可能になり、買い物のあり方も変化しました。だから、我々もグループ全体でお客様に近づいていこうと考えたわけです。

"オムニチャネル"という言葉自体は、2011年に米国から出てきたものですが、これはいい言葉だなと、当時から思っていました。そして、弊社グループでもできないかと考え、やろうと決まりました。

――それはいつのことですか。

日付までよく憶えています(笑)。2013年8月30日でした。「セブン&アイ・ホールディングス戦略会議」という全事業会社のトップが集い、グループの方向性をディスカッションする会議で決まりました。

――当初は何をやろうと考えていたのですか。

どうせやるなら、ネットとリアルを単に融合させるだけではなく、セブン-イレブンの店舗を活用しながら、「いつでも、どこでも、誰でも、商品が買える」をキーワードにしようと考えました。

その後、全米小売業協会主催のオムニチャネル関連のイベントがあると聞いて、当初は私ひとりで参加する予定だったのですが、急遽、事業会社の社長約50名と一緒にそこへ出かけることになりました。百貨店のメイシーズをはじめ各所を視察し、講演なども聴いて全10日間の日程だったのですが、各事業会社の社長たちが同じものを見て、聞いていると自然に意識が合ってくるんですよ。

すると、だんだんと我々セブン&アイHLDGSが新しいオムニチャネルをつくれるのではないか、という意識に変わっていきました。米国でオムニチャネルに取り組んでいる企業はどこも単一業態でしたし、我々は世界でも類を見ない様々な業態をもったグループであり、お客様との接点では、セブン-イレブンがある。この2つを生かしていこうという共通認識が生まれました。

思い返しても、あのツアーがなければオムニチャネルはできなかったと思います。みんなが集まると、いまでもその話になります。

●先を見据えたカスタマーエクスペリエンス
――サービス開始までに、どのようなことに取り組んだのでしょうか。

最初はカスタマーエクスペリエンスのデザインから始めました。そして、システム開発や、業務の準備、物流の再構築などに着手しました。

カスタマーエクスペリエンスは、「omni7」を通じてのユーザー体験を考えていくことです。例えば、テレビ番組で紹介された商品を見て、販売サイトの「omni7」で確認をしてから店舗に来店するのではないか、はたまた、店舗にいったときにスマホを取り出してショールーミングするのではないか、高齢化社会も進んでいますし、全国のセブン-イレブンの接客端末を通じて、御用聞きすることも価値としてあるのではないか、などを考えていきました。そうしたことを130パターンほど出していきました。そして、何が必要かを考えていくわけです。

そこをきっちりとしてから、要件定義をつくり、システム開発に入りました。開発を進めるにしても大変で、複数社が絡むことになります。マルチカンパニー、マルチベンダーのプロジェクトです。

たとえば、セブンカフェは12社が関わることで生まれた商品ですが、セブン-イレブンが開発した"チームMD"という手法、このチーム単位でひとつのものを作り上げるという仕組みを応用して、NRI、NEC、NTTデータ、オラクルなどが関わる"チームIT"を組織しました。我々がプロジェクトリーダーの役割を果たし、各社の得意分野を生かしながら、共同でオムニチャネルに取り組んでほしいとお願いしたわけです。

普段、各社さんは競合関係にあるのですが、わずかな期間でよくやっていただいたと思っています。2015年10月に販売サイトの「omni7」のプレオープンを宣言しましたが、今年の7月段階ではまだ少し不安はありました。システムはできていたんですが、うまくつながらないという状況です。残りの3カ月は痺れましたね。最後にリリースになったときは拍手が起きて、疲れきったメンバーたちがいたという感じです。そのときにチームITが本物のチームになった瞬間でした。二次開発においては、結束力が高い段階から始められる、それはとてもいいことですよね。

●「omni7」で重視すること
――「omni7」によって、グループ会社の共通システムをつくり、IDの統一も行ったと聞きます。

IDは完全に統一しました。たとえば、nanacoを使った購買情報は、リアルとネットの両方で共有可能な仕組みとなっています。

しかし、「omni7」はまだスタートを切ったばかりで、一次開発を終えた段階に過ぎません。来年に向けて、すでに二次開発に入っていますし、まだまだやりきれていないことがたくさんあるんですよ。

――ネットとリアルで集めたPOSデータを活用すれば、これまでにない商品開発、顧客へのリーチ、売り方が可能になりそうです。

そうですね。その可能性はあります。去年はこういうブラウスを購入されたので、今年は○○はいかがですか、といったような提案ができるかもしれない。

しかし、我々が「omni7」で重視しているのは商品なんです。お客様は商品を買いに来ているので、商品がいいものであることが一番大事です。

世の中、ビックデータがトレンドワードになっていて、顧客情報をうまく使えば、ニーズのある新しいものが生まれるかのうように言われていますが、我々はそこを狙ってはいません。「セブンカフェ」「セブンプレミアム 金のハンバーグ」などがヒットしましたが、そうしたニーズはデータからではなく、人間が考えていかないと生まれなかったと思っています。過去のビッグデータをひっくり返しても、所詮は過去のニーズなんですよ。

もちろん、新商品を出したあとで、ターゲットにうまくマッチしたかどうかの検証材料としてはデータを使いますが、次に何をやるのかは人間がベースだと考えています。ここが我々にとって根幹になる部分です。

――「omni7」が対Amazonという視点で語られることがあります。

そこは比較しても仕方がないですよ。Amazonに学ぶことはありますが、我々にとっては、ネットで売れなくても、リアルで売れればいいんです。お店で売れなければ、ネットで売れればいいんです。大事なのは商品であって、例えば、セブンプレミアムは年間1兆円の売上を持つ商品力を持っているわけです。ネットの活用をプロモーションとしてしか見ない風潮がありますが、我々は商品力をもって売るんです。最終的には商品がお客さんに受け入れてもらえれば、それでいいんです。

(大澤昌弘)