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Googleが米国で提供しているMVNOサービス「Project Fi」で、タブレット向けのデータ専用SIMの提供を開始した。データ専用SIMは予想外の登場だったが、それ以上にサプライズだったのはNexusデバイスだけではなく、iPad(Air 2、mini 4)もサポートすることだ。ちょうど購入したばかりのiPad mini 4のLTE機能を使っていなかったので、早速データ専用SIMを申し込んでみた。

最初にGoogle Fiについておさらいしておくと、一般公開はされているものの、まだ招待制で参加者を制限したサービスにとどまっている。サービス自体は安定しているので、開発のためではなく、革新的なサービスを試みるために小規模な提供にとどめているという印象だ。

たとえば、通信キャリアの自動切り替え。セルラーネットワークは米3位のT-Mobile USAと第4位のSprintのサービスを利用しており、ユーザーがどちらか一方を選択するのではなく、両方を利用できる。Fi端末が安定して通信できるネットワークに自動的に接続し、さらにもしLTEよりも速い公衆無線LANを利用できるならWi-Fiを選択するから、広い範囲で安定して高速なデータ通信を利用できる。手頃な料金も魅力の1つだ。音声通話とテキストが使い放題の基本サービスが20ドル、そしてデータは1GBあたり10ドルで、1GB単位で購入するが、未使用分は返金される。たとえば、毎月2GBで契約し、1.2GBしか使わなかったとしたら、800MB分(8ドル)が翌月の請求から差し引かれる。

通信サービスも携帯の利用体験の要素である。ところが、キャリアによってつながる場所とつながらない場所があったり、色んなサービス料金が積み上がって毎月の請求額が高額になるなど、通信キャリアに対するユーザーの不満は募るばかりだ。そこで、より良いモバイル体験を実現するためにGoogleが行動を起こしたのがProject Fiである。実際、満足度は非常に高い。私が米国で携帯電話を持ち始めて約20年、米国の4大キャリアを始め、たくさんのサービスを利用してきたが、Project Fiがこれまでで最も満足できるサービスと断言できる。

その姿勢はデータ専用SIMでも変わらない。データ専用SIMで特筆すべき点は、Project Fi契約者なら誰でも無料で、最大9枚までデータ専用SIMを申し込めるということだ。SIMごとの追加料金は発生しない。

セルラー機能を使えると、モバイルデバイスの可能性がグッと広がるが、回線をどうするかが悩みどころになる。たとえば、筆者の場合、先月にiPad mini 4を購入し、Wi-Fi+LTEモデルを選んだものの、通信費を増やすのに躊躇してWi-Fiのまま使い続けている。モバイルWi-Fiルーターを使えば、Wi-Fi対応機器を持ち歩けるようになるが、やはりWi-Fiの通信範囲に縛られる。Project Fiならそんな悩みから開放される。自分のアカウントでアクティベートしたSIMを差し込むだけで、1つのアカウントでスマートフォン1台と、最大9台のデータ専用SIMを差したデバイスを利用できる。台数が増えれば、データ消費量は増えるかもしれないが、月々の基本料金はスマートフォン1台と変わらない。

Project Fiについて調べたことがある人なら「使えるデバイスが少ないじゃないか」と思うかもしれない。たしかに、現時点でProject Fiの対応デバイスはスマートフォンが3機種、タブレットが5機種であり、すべてを持っていたとしても8枚で足りる。

だが、Project Fiはゆる〜いサービスなのだ。機能は限定されるが、公式にはサポートされていない他のスマートフォンでもモデルによってはFi SIMを利用できる。データ専用SIMにしても、対応機種としてリストされているNexus 7、Nexus 9、iPad Air 2 (モデル : A1567)、iPad mini 4 (モデル : A1550)、Galaxy Tab S (モデル : SM-T807V)以外でも、T-Mobileのネットワークに対応する機種なら、たとえばiPhone 6シリーズ/6sシリーズなどでも使用できる。また、公式にはテザリング機能が非サポートになっているのに、筆者が試したデバイスでは利用できた。

Project Fiを使い続けて半年、なんでこんなにゆる〜いサービスなのか疑問だった。キャリアの自動切り替えで最高のモバイル体験を実現するのがProject Fiのはずだ。それを強くアピールするならがちがちに囲い込んで、Nexus端末以外では利用できないようにしてしまうべきである。それが中途半端に使えてしまう。そんなことではProject Fiの魅力が伝わらない……と思っていた。が、ゆる〜いところにGoogleのもう1つの狙いが隠れているとしたら納得できる。

すでにSIM内蔵のスマートウオッチが出てきているし、インターネットに直接接続するデバイスが増えてこそウエアラブルやIoTの可能性が開ける。でも、1回線ごとに費用が増えていく今日のキャリアサービスのままでは、そんな未来はいつまで経ってもやってこない。Project Fiは1人のユーザーが複数のネットデバイスを使いこなす未来を見据えたサービスである……と考えたら、より多くのデバイスで利用できることに価値がある。

スマートフォン用SIM1枚(1アカウント)に対して、データ専用SIM最大9枚は、今日の1人のユーザーには多すぎる。でも、数年後には9枚でも足りないぐらいの変化が起きても不思議ではない。2016年は、その起点の年になってほしいものである。

(Yoichi Yamashita)