自由民主党HPより

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 2016年7月の参議院選挙に向け、自民党安倍政権にとっては、理想的な政治献金スキームが完成したといえるかもしれない。

「毎日新聞」オンライン版12月28日付によると、「三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)と三井住友FG、みずほFGの3メガバンクが28日までに政治献金を行った。3行の政治献金は18年ぶりで、いずれも自民党に約2000万円を献金した」「3メガバンクは1998年の金融危機時に公的資金の投入を受けて以来、政治献金を自粛してきたが、公的資金を完済し、業績改善も進んだことから『社会貢献の一環』として献金を再開することにした」という。

 メガバンクの18年ぶりの政治献金再開だが、そもそもメガバンクは自民党の最大の資金源だった。メガバンクは選挙のたびに自民党に選挙資金の融資を行い、選挙後、自民党はその借金の返済として銀行業界からの政治献金をあててきた。つまり、メガバンクの政治献金は事実上、自民党への借金を棒引きするものとして使われてきたのだ。現在の自民党のメガバンクへの借金は約70億円。

「毎日新聞」の記事でも「14年の自民党の政治資金収支報告書によると、同党は三菱UFJから31億6250万円、三井住友とみずほからそれぞれ20億7500万円を借り入れている。いずれも無担保無利子の融資とみられ、自民党は献金を融資の返済に回すこともできる」と指摘している。

 今回のメインバンクの政治献金再開を働きかけたのは、財界、日本経済団体連合会(経団連)だ。経団連は2014年9月、5年ぶりに会員企業への政治献金の呼び掛けを復活させており、榊原定征会長は2015年10月13日の会見でも、『経団連は昨年9月、社会貢献の一環として、会員企業の判断で政治寄付を検討してもらいたいと呼びかけており、今年も同じ方針で臨むことにした。寄付先は各企業の判断であり、その判断材料として各政党の政策評価を提供する』として、働きかけを認めている(「サンデー毎日」2015年11月29日号「メガバンク献金再開で気になる"隣の芝生"」)。

 経団連が会員企業への政治献金の働きかけを行うのは、「法人税減税」(法人実効税率は現在32.11%)に向けてのものだ。これまでも経団連は、国際競争力などを理由に、「法人税減税」を強く要望している。

 たとえば、2015年1月1日に提言した経団連ビジョン「『豊かで活力ある日本』の再生」では、「(政府が)2020年を見据え、直ちに取り組むべき課題」として「収益性のある企業に実質的な税負担が軽減される形で、2015年度から法人実効税率の引下げを開始し、2017年度には20%台に引下げ」「2017年度以降も、OECD諸国や競合するアジア近隣諸国並みの25%への早期引下げに向けて、法人税改革を推進」することを明記している。

 経団連ビジョンや会員企業の政治献金再開の動きを受けて、安倍政権は日本経済活性化につながるとして、経団連ビジョンをそのまま与党の2016年度税制改正大綱に反映させた。法人実効税率は現在の32.11%から17年度に29.97%、18年度に29.74%まで下がることになった。

 これを受けて、経団連の榊原定征会長は「国内の事業環境が海外と同等になる大きな一歩を踏み出した」と歓迎。法人税減税で浮いた資金を元手に、国内での設備投資や賃上げを加盟企業に呼びかけるという。

 ただし、この法人税減税が日本経済活性化(賃上げ、設備投資)に結びつくとは考えにくい。

 元大蔵官僚で経済学者の野口悠紀雄は、「DIAMOND on line」の連載「新しい経済秩序を求めて」で「法人税を減税しても企業は内部留保を増やすだけ」だと指摘している。野口によると、「法人税を減税すれば、企業の税引き後利益が増える。だから、配当が増えるか、利益剰余金が増えるかだ。他の条件が変わらなければ、利益剰余金が増えるだろう。しかし経済的な条件が変わらない限り、それは、金融資産への投資や金融機関からの借入返済を加速するだけ」だという。

 実際、これまでも、安倍政権下で行われた法人税減税(復興特別法人税の前倒し廃止)は企業の内部留保(金融資産投資)を増やすだけにとどまっている。

 なんと、財務省が12月1日発表した7〜9月期の法人企業統計によると、資本金10億円以上の大企業がため込んだ内部留保は301.6兆円。大企業の内部留保が初めて300兆円を突破したのだ。これは、安倍政権が発足する直前、2012年7〜9月期の263.2兆円から38.4兆円も急増していることが明らかになったのだ(「しんぶん赤旗」2015年12月3日付「内部留保300兆円突破 財務省統計 安倍政権で38兆円増」)

 ようするに経団連に加盟する大企業にとって、法人税減税分というのは内部にためこむか、株式市場に投資する軍資金でしかないのだ。

 経団連はさらに内部留保を増やそうと「2017年度以降も、OECD諸国や競合するアジア近隣諸国並みの25%への早期引下げに向けて、法人税改革を推進」するために、政治献金を増やす。

 その一方で、経団連は法人税減税の穴埋めも経団連ビジョン「『豊かで活力ある日本』の再生」で提言している。それが、消費増税だ。「(政府は財政健全化へのより強いコミットメントを示すとともに)さらに、中長期的に持続可能な財政構造を確立するためには、消費税率を欧州諸国の水準にならい、2030年までに10%台後半に引上げる必要がある」とするのだ。

 なお、経団連は2012年5月に「成長戦略の実行と財政再建の断行を求める 〜現下の危機からの脱却を目指して〜」という提言を出しているが、そのなかで試算する改革推進ケースでは、「法人実効税率を、2016〜2025年度にかけて毎年1%ずつ引下げ、最終的には25%にする」と同時に「消費税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%へ引き上げ、その後、2017〜2025年度の間、税率を毎年1%ずつ引き上げ、最終的に19%とする」と提言しているのだ。

 経団連は政治献金を増やす。安倍政権はその見返りに大企業の法人税を減税して、そのぶんを消費税につけまわす。そして、企業は賃金上昇ではなく内部留保を増やし、安倍政権にさらに献金する。大企業と政治家だけが肥え太り、庶民はどんどん貧乏になっていくのだ。

 この、地獄のようなスパイラルを終わらせるためには、安倍"経団連"政権を一刻も早く倒すしかない。
(小石川シンイチ)