旅館業法の規制緩和はホテル業界にとっても死活問題になる

写真拡大

 昨年、ホテル業界でもクローズアップされた「民泊」。訪日外国人客の増加で、都市部や人気観光地を中心にホテルは稼働率や料金がアップ、ホテルの利用がしにくい状況が続いている。そんな市場に食い込もうとする民泊がじわりじわりと広がりをみせているのだ。   

 政府は規制緩和をして民泊を推進しようとしているが、果たして、民泊文化のない日本で十分な法整備やルールづくりができるのか。ホテル評論家の瀧澤信秋氏が解説する。

 * * *
 ホテルであろうが民泊であろうが、宿泊料を受領して継続的に宿泊させる営業をする場合は「旅館業法」の許可が必要だ。造作や設備ほか、様々な条件を満たさなければ許可はおりないが、一般のマンションや住宅を利用する民泊は条件を満たすことは困難。ゆえに、ほとんどの民泊は違法状態にあるといわれている。

 民泊問題がにわかに注目を浴びたのが2015年11月5日に京都の違法民泊が摘発された事件。山形と東京の業者が京都市内でマンションを借り上げ中国人旅行客へ宿泊施設として転貸、1億5000万円以上を荒稼ぎしていた。住民からは、知らない外国人が大挙として押し寄せ深夜まで騒いでいると苦情があったという。

 大阪府議会は全国に先がけて民泊条例を可決、12月7日には東京都大田区も条例を可決した。国家戦略特区で定められているのは利用が7日〜10日以上という条件。1日からせいぜい3日間の利用が多いといわれる中で、宿泊日数が7日以上という条件は民泊業者にとってハードルが高い。

 そのような中で厚生労働省と観光庁は具体的なルール作りに着手。12月14日には、民泊の仲介業と宿泊業双方の関係者からヒアリングを行った。ニーズのある民泊は認めるべきだという仲介業者と、問題は多いとする宿泊事業者の意見は真っ向から対立。双方の意見なども参考に旅館業法の規制緩和を検討する、としている。

 特に「シェアリングエコノミーサービス」といわれる仲介業者の課題は多い。規制緩和といわれる民泊条例では、利用期間など実情とは合わない条件が課せられており、それでも条例を遵守する適法業者と、脱法・モグリの違法業者が明確になると考えられている。

 違法業者が峻別されることは、仲介業者・情報提供業者にも相応の責任が課せられることになる。すなわち、「適切な情報提供」をする責任である。適法な民泊事業者であることを利用者に明示するとともに、サービス水準なども情報提供することが肝要だろう。いずれにせよ、何らかの損害が発生した一定の責任を担保する枠組み作りも必要だ。

 一方、民泊事業者の透明性も課題。ホテル予約の困難な都市部で需要が高いと思われる民泊は、必然的にマンションがその対象物件になるだろう。

 しかし、都心の高級分譲マンションなどでは、居住者ではない見知らぬ外国人が出入りすることを良しとしない住民は多い。民泊の横行はマンションの資産価値を下落させるという声もある。法律の専門家に依頼しマンション管理規約を厳格化、民泊を排除しようとする管理組合の動きも出ている。

 とはいえ民泊のニーズは高いのもまた事実。トラブルになりがちな個人営業も多い民泊ゆえに、以下のような厳格なルールづくりが必要だ。

【事業者認定】
・物件の不動産登記簿謄本、転貸を可とする不動産賃貸契約書き写しの提出
・管理規約や管理組合の承諾書の添付(マンション)
・各種法令、行政のガイドラインをクリアした宿泊約款の作成・提出
・認定マークの表示

【更新制の適用】
・宿泊者名簿の備え付け・保存がなされているか
・営業報告書の提出
・確定申告書控えの提出

【その他】
・保険会社による民泊事業者向け保険商品の提供(加入事業者はマークが使えるなど)

 認定マークや事業者マークなど、発達したソーシャルメディアがその広がりに寄与している民泊ならではの“利用者が目に見える安心感”が必要だ。

 一方、無届け営業には迅速な行政指導や各種法令の罰則を厳格適用するなど、合法業者と違法業者をはっきり区別し、違法業者が排除されるシステム作りが求められる。

 観光立国を謳う実情の一面ともいえる民泊問題。法令の整備、規制緩和の動きはあるが、住民の抵抗など実態は極めてシュールだ。日本人の慣習に合った民泊が根付くかが試されている。

 利用者はもちろんのこと、住民の生命、財産、生活一般の安全がないがしろにされる観光立国であってはならない。