「てんや」生ビール(中)と天ぷら4品で580円とかもう飲みたい「酒場人」で今年もいい酒

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♪1月は正月で酒が飲めるぞ〜。酒が飲める、飲めるぞ、酒が飲めるぞ〜。
というわけで、年末年始といえば、酒を飲む機会が多いシーズンだ。
忘年会に新年会、鍋物やおせちをつつきながら家で一杯やるのもいいし、ふらっと飲みに出歩かけてもいい。
酒好きの身としては、どこでどうやって酒を飲むか、算段するだけですでに楽しい。案外、酒の楽しみの何割かをこの算段が占めているんじゃないかと思ったりする。


そこで読んでおきたいのが、12月に刊行された『酒場人』(オークラ出版)だ。「vol.1」とあるので、立派な新創刊の雑誌である。

キャッチフレーズは「酒場と人の幸せな関係。」。『酒場人』の誌面を飾るのは、いわゆるグルメライターや飲食店の専門家などではなく、本当に酒と酒場が好きな作家や、漫画家、ミュージシャン、ライターたちが中心だ。

紹介されているのも、素晴らしく美味しい銘酒や、絶品のつまみが出てくるお店というよりは、そのへんにある酒場とそこで飲める普通のお酒がほとんど。
そういう意味では、巷によくあるグルメ雑誌とはちょっと印象が違う。グルメ雑誌で紹介されてる店って、名店かもしれないけどちょっと敷居が高かったりするよね。予約大変だし。

酒好きとして知られる漫画家の吉田戦車がインタビューで“良い飲み屋”としておすすめするのは「ぎょうざの満洲」。なんと、チェーン店だ。でも、わかる! ぎょうざの満洲大好き! 3割うまい! 近所にないけど!
「ひとりでふらっと行っても落ち着ける」「そこで餃子とキムチとビールとかさ」なんて、もう想像するだけで最高。家族と一緒に行けるというのもポイントだ。

ライターの安田理央がおすすめしているのは、「てんや」の生ビールセット。生ビール(中)と天ぷら四品で580円なんだそうだ。もう行きたくなっている。なお、安田によると、ひとり酒に向いているのは「回転寿司」なんだそうだ。

『東京都北区赤羽』シリーズで知られる漫画家の清野とおるも、最近行くのはほぼチェーン店なのだという。理由は「もう人と話すのが嫌」で、「店員さんとも必要最低限しか話したくない」。「メニューが手元で入力出来るタッチ式だったら、なお最高ですね」とも語っているが、清野の『ゴハンスキー』の読者なら、「ああ、『立ち飲み日高』(日高屋が展開している立ち飲み店)のことか」とわかる。

さらに「立ち食いそばで楽しむ一杯」という連載もあるし、「銭湯発酒場行き」という湯上りに近くの適当な店に入って飲むという連載もある。

そうそう、酒を飲みにいきたいときって、前もって予約したりスケジュールを調整したりするより、突然ふらっと行きたくなるんだよね。だから、こういう気軽な感じは大変うれしい。

酒場は酔えればなんでもいい!


エリア特集で案内されるのは、横浜の「野毛」。恵比寿や中目黒ではなく、いきなり横浜のディープ酒場街を紹介しているところに、この雑誌の心意気が現れている。「大船」のページで紹介されている「観音食堂」は泉昌之『食の軍師』でも紹介されている店だ。

ページをめくっていると、あることに気づく。ちょっと語弊があるかもしれないが、「美味しそう!」「食べたい!」と感じることがあまりないということだ。

店の紹介記事にせよ、料理の写真は必ずしも大きくはない。そのかわり、店の人や、そこで楽しそうに飲んでいる客たちの顔が写っている。どれも「美味しそう!」じゃなくて「楽しそう!」という気分になる。やっぱりこの雑誌は「酒場」と「人」についての雑誌なんだということがよくわかる。

酒の肴をわざわざ捕まえにいったり(ザザムシを捕まえて食べている)、せんべろ古本トリオ(安田理央、とみさわ昭仁、柳下毅一郎)は古本を買いあさりながら、ひたすら安い店で飲んでいる。

どの記事を読んでもとても楽しそうだ。楽しさを伝えようとするあまり、字がやたら多くなっているのはご愛嬌である。

酒飲みの神様・漫画家のラズウェル細木は、ズバリ「酒場は酔えればなんでもいい!」と言い切っている。神様がそう言っているから、そうなのだ。

あとはいかに酒場と酒を楽しむか、それはわれわれ一人ひとりにかかっている。単に店選びだけではなく、誰と、どこで、どのように酒を飲んで楽しむのか。酒飲みの算段には大変役に立つのが『酒場人』という雑誌なのである。

さあ、正月はどこへ飲みに行こうかな? うん、チェーン店も悪くなさそうだ。
(大山くまお)