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警察庁の元担当者が語る「サマータイム法案の国民不在」

2005年04月25日14時05分 / 提供:PJ

pj
サマータイムとは毎年3月の最後の日曜から10月の最後の日曜まで間、時計の針を1時間進めることである。
超党派の国会議員による「サマータイム制度推進議員連盟」(会長・平沼赳夫前経済産業相、190人)は4月22日の総会で、サマータイム制度を導入する法案を了承したのをご存じだろうか。

 この法案は過去10年の間に95年、99年と2度も提出が見送られた法案であるが、その時に指摘されていた問題点はきちんと解決されたのだろうか。
また、実現されれば国民生活に広範囲で多大な影響が出ると思われるが、そうしたインパクトの割には余りにも議論が不足しているのではないだろうか。
釈然としない点が多い。

 実は、95年の議員立法提出の前に、当時の通産省主導で、政府からこの法案を提出しようという動きがあった。この動きは、関係省庁の抵抗に遭って頓挫(とんざ)したが、私は、その時に警察庁で実務を担当し、その後転身してマスコミや政界も体験した異色の人物(M氏)に接触、94〜95年当時と今とではこの法案をとりまく情勢がどう変わったか、見解を聞くことができた。

――まず、サマータイムそのものについてはどう思いますか。

M  そもそも、これは北海道くらいの高緯度の地域で採用されているもので、日本全国でやるのは無意味なんです。それでもやろうというのは、こういう話が大好きな経済産業省の役人とか、一部政治家とか財界人とかの手柄と利権欲しさのためでは?というのが私の基本認識です。

――現在のサマータイム法案提出の動きについてどう思いますか。

M  何だか亡霊に出会ったような気分です。役所に勤務していた1994年ごろに通産省から法案の協議が来て、その際、警察庁としても反対したのですが、そのとき、現場で直接折衝に当たったのが私でしたので。

――当時のサマータイム法案のいきさつはどのようなものだったのですか。

M  私の記憶では、94年当時に、通産省が政府提出で法案を成立させようと原案を作成し、関係する各省庁の意見を聴いたことがありました。
   しかし、警察庁だけでなく、他省庁も反対したものとみえて、この話は立ち消えになりました。

   内容的にどうも怪しいために、政府部内の賛同を得られないような法案を、関係する国会議員にお願いして、議員立法という形で提出していただくということはありがちなことなので、この場合も、その後95年に、話を政治レベルに上げてやることにしたのでしょう。

   通常、そうした法案は、特段の問題もなく成立するのですが、この話が通らなかったのは、当時、通産省が主張していたサマータイム実施の主目的が「消費の拡大」ということにあったので、実施に伴う悪影響を勘案すると、政治家たちには、余りメリットがなかったからだと推測されます。

――当時、警察庁では、サマータイムに反対ということになったということですが、なぜだったのでしょう。

M  実を申しますと、直接の原因は、警察庁交通局でのこの案件の担当者の私が、朝寝坊だったからです(笑)。これ以上、早く出勤するのは、かなわんと。
   あと、ご存じのように、霞ヶ関では、深夜まで残業をするわけで、何が「余暇の充実」だ、よた話もいい加減にしてくれ、という空気はありましたね。

   もちろん、公式的には、そんなことは言えませんので、実施に当たっての具体的な問題として、例えば、交通管制のシステムに重大な影響が出るというような主張をしました。身近なところで言えば、青信号や赤信号の長さというのは、どこでも24時間一定というわけではなく、場所により時間帯ごとに細かく設定してあるのです。
   サマータイムを実施すれば、単純に交通量がシフトするというわけでもないでしょうから、そういう設定を全部、一斉に見直さなければならなくなります。

   また、通産省は、交通事故が減少すると主張していましたが、統計学の手法を用いて試算してみると、逆に、交通事故は増加するという結果が出たのです。

――おや、今回の報告では交通事故は減少するとされていますが。逆の結論になっているのはなぜでしょうか。

M  当時、私が行った試算では、確かに、日の出・日の入時刻を変えることによって、交通事故死者は減少すると推定されるわけですが、当時の通産省の主張によれば、レジャーで外出する人が増えるというわけです。当然、それに伴(とも)って交通量も増加すると予想されますから、そういう仮定で試算すると、死者数の減少分のおよそ10倍の増加が生じてしまうという試算結果になったのです。

   私は精査していないのですが、経済産業省所管の社会経済生産性本部による今回の試算は、そちらの増加分を無視しているのではないでしょうかね?
   統計数字というのは、専門家の手にかかれば、いかようにも操作できますので。

――では現在も相当に問題のある法案とお考えなのですね。

M  そうですね。日々社会の現実に直面している、現場レベルのまともな役人なら国民への迷惑を考えると、こういう法案は、通って欲しくないでしょう。
   だからどうしてもサマータイムをやりたいとなれば、議員立法ということになるわけです。
   もちろん、めんどくさがり屋で朝寝坊な私も、一国民として、嫌なのですが(笑)。

――今までは、その議員立法でさえ、国会議員の多数の賛同が得られなかったわけですが、今回、とりまく情勢に何らかの変化が起きているとお考えでしょうか。

M  これは、憶測に過ぎないのですが、政治家の質が変わってきたように思います。
   政党交付金・衆院小選挙区制度の導入により、従来なら国会議員になれなかったような、元気だけはある、身も蓋(ふた)もなく言えば、「野心的で勤勉で無能」「とにかくがんばる人」というような人物が当選できるようになったのです。毎朝、駅頭で空疎な演説をしている人とか(笑)。

   そのため、確かに今までしがらみだらけだった政界に新風が入ってきているのですが、少ない体験から断言して恐縮ですけれど、そういう政治家たちは、早起きなど苦にならないし、自分が元気で精力に満ちあふれているので、感覚的に弱者の気持ちがわからないのです。
   しかも、現在の閉そくした社会の中で、とにかく、何かを、目に見える形で変えたがる傾向にあります。特に、「国際標準」とか「環境問題」というのは、無党派層に受けるので票になりますから。

    このサマータイム問題もその一環で、大げさに言えば、憲法問題や有事法制の整備、社会保障制度(医療・年金・保険)の改変、ペイオフの開始などに通底する、国権の強化、痛みを伴う改革、自己責任や市場原理の無原則な採用、弱者切り捨て、などという方向性の一断面と見ることができるのではないかと私は考えております。

――なるほど。ご協力ありがとうございました。

 インタビュー日時 :2005年4月23日(土)15:30〜18:00
 インタビュアー  :伊藤文彦(ライブドアPJ)
 インタビューの場所:M氏自宅
【了】

※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 伊藤文彦

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