岩渕真奈が抱く“ポスト澤”への想い…レジェンドと交わした約束と未来への誓い

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 苦しくなった時に頼ってきた背中を、もう見ることはできない。誰にでも必ず訪れる現役との決別。澤穂希はなでしこジャパンの後輩たちに「なでしこが輝き続けるには結果が大事。結果がすべてだと思う」という熱いメッセージを託して、スパイクを脱いだ。

 だが、偉大なるレジェンドの引退を惜しんでばかりもいられない。2016年2月下旬からは、リオデジャネイロ・オリンピック出場を懸けたアジア最終予選が大阪で開催される。わずか2枚の切符を6カ国で争う厳しい戦いが待つ。

 澤はキャプテンとしてなでしこジャパンを世界一へ導き、得点王とMVPをダブル受賞した2011年の女子ワールドカップ・ドイツ大会後、こう感謝の思いを口にしていた。

「この大会では、宮間(あや/岡山湯郷Belle)や大野(忍/INAC神戸レオネッサ)、近賀(ゆかり/同)といった中堅選手たちが下の世代を引っ張り、私たちベテランを後押ししてくれた。サッカー以外のことでも、目を光らせてくれていたんです」

 翌2012年からは宮間がキャプテンを継承。ともに銀メダルを獲得したロンドン五輪と今夏の女子ワールドカップ・カナダ大会でなでしこジャパンをけん引してきた。宮間にキャプテンを託した後も、澤は盟友をサポートしてきた。ともに戦うことができなくなった今、宮間に対してこんな懸念を抱いている。

「責任感が強い子ですし、一人でいろんなものを背負わなければいいなと思う」

 ドイツ大会で宮間や大野、近賀らが果たしたような役割を受け継ぐ選手たちが出てきてほしい。言葉の間から伝わってくる澤の檄。中堅にあたる選手たちは、レジェンドの想いをどのようなに受け止めているのだろうか。

「澤さんとした約束守らなきゃ」

 岩渕真奈(バイエルン・ミュンヘン)が自身のブログ『Buchi’s Life』にこんな言葉を綴ったのは、年内のチームとしての活動を終えた後の12月23日だった。

 その後、帰国した岩渕は澤のラストマッチとなった27日の皇后杯決勝を等々力陸上競技場のスタンドで見届けた。彼女の心境には、今夏のワールドカップを契機にある変化が生じている。

 カナダで銀メダルを獲得して凱旋した七夕の夜。短冊に祈りを込めるように、岩渕はそれまでの自分と決別している。

「2大会連続のチーム最年少選手ということで、自分の周りの学年の子がいないのは本当に事実ですし、その中でワールドカップを2回、優勝と準優勝を経験させてもらったので、経験値だけを取ったら確実に周りの(同世代の)子よりは秀でているので。プレーでもそうですけど、プレー以外のところでもしっかりと引っ張っていける存在になりたい」

 18歳でドイツ大会に、22歳でカナダ大会に出場。その間にはロンドン五輪も経験した。ピッチの外ではチーム最年少として誰からも可愛がられ、ピッチに立てば先輩たちが背中を後押してくれた。

 1993年3月22日に生まれた岩渕は、2016年でようやく23歳になる。年齢的にはまだ若手の部類に入るかもしれないが、積み重ねてきた濃密な経験が自立を加速させたのだろう。凱旋した際には、こんな言葉も残している。

「最低限やらなきゃいけないことは、このなでしこブームを今がピークにしたくないと個人的には思っています。来年にはリオもあるし、その先もありますけど、やはり2020年には東京五輪という舞台がある。そこへ向けてと言ったら先のことすぎると思われるかもしれないけど、それでも先を見すえてしっかりとやっていきたい」

 155センチ、52キロの小さな体を必死に奮い立たせて、5年後の夢舞台を見つめる岩渕の姿を見つめながら、取材エリアに姿を現した澤はバトンを託す後輩の一人に指名している。