硬貨1枚でファッションを楽しむ「ワンコイン古着」の世界

写真拡大

彼の存在を最初に知ったときは、変な古本のコレクターとしてだった。中嶋大介と名乗るその人物のコレクションは、特殊古書店を営んでいるぼくの目から見ても、かなりおかしなものが多い。本人曰く、収集の基準は「おもしろ図版が載ってるか否か、ユーモラスか否か」だそうだ。その成果は『アホアホ本エクスポ』として書籍にもまとめられている。


毎年1000冊ペースで本を買っていた彼が、ここにきてパタリと本を買わなくなった。かわりに何を買っているかというと、服だ。恋でもしたのだろうか? 本の虫だった者が、恋をして外見に気をつかうようになり、お洒落に目覚める。カビ臭いマニア生活からの脱却。そしてリア充へ。

そういうストーリーを勝手に思い描いてみたが、どうも事実はちょっと違うようだ。

中嶋大介氏がこのほど上梓した『ワンコイン古着』は、ワンコイン、すなわち500円以下で人気ブランドの服を楽しんでしまおうという古着のガイドブックだ。なんでも、彼は古着の魅力に目覚めて以来、年間1000着もの服を買っているという。相変わらず過剰な人である。とても親近感を覚える。

しかし、超無名メーカーの量産品ならともかく、ブランド物の服がワンコインで買えるものだろうか。本書の帯には、エルメス、ルイ・ヴィトン、ラルフローレン、バーバリー、アルマーニなどなど、誰もが知ってる人気ブランドの名前があがっているが、これらを本当にすべてワンコインで手に入れたというのか。

本当なのだ。その詳しい方法をここに書いてしまうわけにはいかないが、まあ簡単に言うと古着屋を回るのである。古着を買うんだから当たり前の話だ。でもでもでも、ぼくだってけっこう古着は好きで、町で古着屋を見かければつ立ち寄ったりするけど、バーバリーのコートが500円で売られているのなんて見たことないよ!

その理由はただひとつ。踏んでる場数が違うのだ。なんたって年間1000着だからね。1軒の店でドカンと1000着買うわけではない。それだけたくさんの古着屋に足を運んでいるというわけだ。そうすれば掘り出し物を発見する確率はドンと上がる。

これは、古本を探すのと同じ論理だと言える。古着ハンターにおける古着屋やリサイクルショップは、古本ハンターにとっての古本屋やブックオフと同じなのだ。月に1、2回しか古本屋に行かないようでは珍しい本を探し当てることなどできないが、ぼくは毎日1、2軒、多いときには1日に8軒も9軒もブックオフをまわる。日本中の古本屋にも行く。そうすることで、普通の人が見つけられないような本と出会うことができている。

中嶋氏も、古本マニア時代に同じテクニックを身につけていた。だから、趣味が古着に変わっても、いいものを見つけ出す目はすでに養なわれていたのだ。

同じことをしろと言われても、ほとんどの読者は「無理だ!」と言うだろう。けれど、そこまで極端に走らなくても、古着の楽しみ方はいろいろある。その手助けになるようなことが、この本にはたくさん書いてある。

あと、実際のところは知らないけれど、著者が古本から古着に転向した理由のひとつが「恋」だったらいいなあ、とやっぱり思う。
(とみさわ昭仁)