衆議院議員 安倍晋三 公式サイトより

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 安保法制の成立にいたるまで安倍政権の面々から飛び出した暴言・失言・珍言の数々を振り返る、この企画。前編につづいて後編をお届けしよう。

 日本中を驚かせたあの発言、思わず唖然とさせられたあの発言も、ついに登場。今年2015年の日本の危機的状況を表す迷発言を、ぜひ脳裏に焼き付けてほしい。


★ 5位
武藤貴也・自民党衆院議員(当時)
「彼ら彼女らの主張は「だって戦争に行きたくないじゃん」という自分中心、極端な利己的考えに基づく」
(7月30日、Twitterで)

 ノーマークだった安倍チルドレンがぶっ放したこのツイートは、瞬く間に問題化。それもそうだろう。なにせこれ、「戦争に行くことこそ国民の義務」「お国のために命もかけられないのか」と主張しているようなものなのだから。このツイートで武藤議員は、〈利己的個人主義がここまで蔓延したのは戦後教育のせいだろうと思うが、非常に残念だ〉と、安倍首相の「日教組!」の罵声が脳内にこだまするような意見も一緒に述べていたが、たしかに戦後教育は問題があったのだろう。だって、憲法で戦力の不保持が明記されていると知らないらしい人間が議員をやっているなんて、何の冗談かって話である。

「戦前か!」というツッコミもむなしくなる破壊力の武藤発言だが、しかしこれこそがまさしく安倍エッセンスを濃色させた、安倍政権の本音だ。彼は以前から〈戦争したくないなら国会周辺ではなく領海侵犯を繰り返す中国大使館前やミサイル実験を繰り返す北朝鮮朝鮮総連前で反戦の訴えをすべきだ〉と脅威を煽った挙げ句に話をすり替えるなど、安倍首相がほんとうは言いたくても言えない主張ばかりを開陳。雑誌のインタビューでは〈日本は自力で国を守れるように自主核武装を急ぐべきなのです〉とさえ言い切っている。

 だが、愕然とさせられるのは発言だけではない。この大きく問題になった「利己的」発言を自民党は不問に付し、結果的に武藤議員が自民党を追われたのは、発言後に「週刊文春」(文藝春秋)がスッパ抜いた「新規公開株を国会議員枠で買える」などと持ちかけていたという金銭トラブルが理由だからだ。ふつうなら、こんな戦前回帰の危険な発言が飛び出せば、マスコミも食いついて猛バッシングを繰り広げただろうが、もうこの国ではそんな光景さえ見られない。安倍首相や武藤議員が目指す戦前体制は、もうすでにつくられはじめているのである。


★ 4位
礒崎陽輔・内閣総理大臣補佐官(当時) 
「法的安定性は関係ない」
(7月26日、大分市での国政報告会で)

 武藤議員の発言も相当に物騒だが、それを上回るインパクトだったのが、この「法的安定性は関係ない」発言だ。この言葉が飛び出した講演会では「我が国を守るために必要なことを憲法がダメだということはあり得ない」とも言い切っていたのだから、開いた口が塞がらない。なにせ礒崎氏は安倍首相の右腕と呼ばれていた人物。そんな重要ポストの人間が平然と公の場で法治国家を否定するとは......。

 だが、やはりこれも安倍首相の本音なのだろう。現に、安保法制推進論者の意見は「必要だからやらなければならない」という理屈に貫かれていた。安倍首相は一応、集団的自衛権行使を容認しても法的安定性は保たれると強弁してきたが、本音の部分では、法的安定性より必要性が優先されると思っている。だからこそ、側近中の側近だった礒崎氏の口からこんな言葉が出てしまったのだろう。

 しかも礒崎氏は"大人げない"という点でも安倍首相と共通する。たとえば、礒崎氏は6月にツイッターで安保法制について、〈「うちにはまだ延焼していないので、後ろから応援します。」と言って消火活動に加わらないで、我が家を本当に守れるのかという課題なのです〉と、安倍首相と同じく火事にたとえるという無茶苦茶な話を展開。しかし、そのアホ理論を10代の女性があっさり論破してしまった。そのとき礒崎氏は〈中身の理由を言わないで結論だけ「バカ」というのは「××」ですよ〉〈あなたこそ、一から勉強し直してください〉などとムキになって反論。ネット上では「大人げない」「情けなすぎる」と総ツッコミを受けたのだ。キレるとすぐにヤジを飛ばしてしまう親方様にそっくりである。

 この側近にして、あの首相、とも言えなくないが、それにしたって議員のレベル、低すぎやしないだろうか......(嘆息)。


★ 3位
中谷元・防衛相 
「現在の憲法をいかにこの(安保)法案に適応させていけばいいのかという議論を踏まえて閣議決定を行った」
(6月5日、衆院特別委員会で)

 前述の「法的安定性は関係ない」もたまげたが、もっと度肝を抜かれたのは、この言葉。中谷防衛相が何を言っているかというと、憲法を踏まえて法律があるのではなく、法律が先にあって憲法は帳尻合わせすればいい、と語っているのだ。

 そもそも日本国憲法第98条には、法律は憲法に反してはならない、とある。だが、中谷防衛相は「憲法は骨抜きにしてしまえ」と言っている。つまり立憲主義を見事に大否定してみせたわけだ。しかも、ツイッターや講演会でうっかり言ってしまったのではない、国会の場で堂々と防衛大臣が述べたのだ。

 解釈改憲による安保法制は立憲主義の否定だ、と多くの人が警鐘を鳴らし、反対の根拠にしてきたが、この中谷発言はその問題認識の正しさを逆に証明したかたちとなった。それくらい法治国家としてあり得ない発言だが、恐ろしいのはこの答弁は野党から非難されたくらいで、たいして大きな問題になっていない、という事実だろう。

 そして、中谷防衛相はさらに"安保法制のありえなさ"を答弁で証明している。それが次の発言だ。


★ 2位
中谷元・防衛相 
「核兵器は核弾頭を持っており、分類は弾薬にあたる」
(8月5日、参院特別委員会で)

 驚きのあまり言葉を失うとはこのことだ。安保法制では自衛隊による「弾薬」の輸送が可能になるが、しかし一体、何が「弾薬」にあたるのか安倍政権はきっちり説明をしてこなかった。その点を野党からツッコまれ、中谷防衛相が詰め寄られた結果、ボロボロと出てきたのがこの発言。中谷防衛相いわく「手りゅう弾は弾薬」、そして「核兵器も分類は弾薬」だと言うのだ。

 いちいち語るまでもないが、手りゅう弾には殺傷能力がある。核兵器にいたっては安倍首相もイラク戦争の話のなかで「大量破壊兵器」と呼んでいた。いや、どこからどう見ても、手りゅう弾も核兵器も「武器」だろう。ちなみに安倍政権は国会答弁で、クラスター爆弾や劣化ウラン弾、ミサイルも「弾薬」認定し、自衛隊による提供・輸送が可能だと述べている。

 だいたい安倍首相は、何かあるとすぐに北朝鮮の弾頭ミサイルや中国の核兵器の話を持ち出して危機を煽るが、じゃああれを「ミサイルじゃなくて弾薬」「核兵器ではなくて弾薬」とでも言うのか。んなわけあるまい。

 憲法上ありえないだけではなく、中身自体も支離滅裂だった安保法制。第1位に輝く暴言は、このような安保法制の無茶ぶりが表れた、あの象徴的な言葉だ。


★ 1位
安倍晋三・総理大臣 
「(ホルムズ海峡での機雷掃海は)現実の問題として発生することを具体的に想定していない」
(9月14日、参院特別委員会で)

 ズコー、である。ご存じの通り、安倍首相は何度も何度もホルムズ海峡における機雷掃海を集団的自衛権行使による海外派兵の代表例にしてきた。にもかかわらず、参院特別委での法案採決を直前に控えた9月14日、突然、手のひらを返すように「ホルムズ海峡の機雷掃海は関係ない」と言い出したのだ。

 え? じゃあ集団的自衛権を行使しなきゃいけない理由って何なわけ?と問いつめたくなるが、じつは安倍首相、もうひとつウソをついていた。それはホルムズ海峡の機雷掃海と同じく繰り返し語っていた「邦人輸送中の米輸送艦の防護」、あの赤ちゃんを抱いたお母さんのイラストのアレである。

 安倍首相は昨年、集団的自衛権行使容認の閣議決定後の会見からずっと「日本人の命を守るため、自衛隊が米国の船を守る。それをできるようにする」と語ってきた。ところが中谷防衛相が「存立危機事態の認定に当たって日本人の乗船は不可欠ではない」と言ってしまったものだから、安倍首相にも追及の声が拡大。その結果、「日本人が乗っていない船も守る」と開き直ったのだ。

 ハナから存立危機事態は「一概に申し上げることはできない」で逃げっぱなしで、数少ない具体例だったホルムズ海峡の機雷掃海も関係ない、日本人の船を守るのが目的と言わんばかりだったのにそれもウソ。となれば、安保法制に立法事実などなくなってしまう。そんな重要な話を開き直ってしまうということは、安倍首相には「国民にていねいに説明する」気がなかっただけでなく、「ほんとうのことは言えない」と国民を欺いたのだ。


 ......こうして10〜1位まで振り返れば、おのずと安保法制がいかにデタラメなものか、おわかりいただけただろう。詭弁に次ぐ詭弁を弄し、暴言が噴出してもメディアを黙らせ、数の論理で可決へと押し切った。それが安保法制だったのだ。

 何度も繰り返すが、このような憲法や民主的手続きを一切無視して通された法律を受忍することはできない。どうかこの憲法と国民を愚弄した発言の数々を、来年の参院選まで忘れないでいただきたいと思う。来年こそ、こいつらをのさばらせてはいけない。
(編集部)