■"3強"はどう戦うか(3)

 11月の全日本大学駅伝で勝利を飾った東洋大学。追いつかれても、ラストスパートで先着したり、ライバルと同タイムで中継する各選手たちの走りは、実業団駅伝のような激しいものだった。戦力で勝る青山学院大学に勝つにはこれしかない、というような走りを見せた。

 酒井俊幸監督はこう振り返る。

「大八木(弘明・駒澤大学監督)さんも『全日本は、5区でリセットされちゃう箱根と違って、実業団駅伝に近い感覚だ』と言っていましたが、本当に1秒の積み重ねが大事になる駅伝だと考えていました。攻めといってもただ単に前半から行くだけではなく、ある程度攻めていって、後半もペースアップする。そういうことを誰でもできるようにしたいなとずっと思っていたのが、ようやく形になってきました。

 走力も選手層も青学大の方が上だから、そのチームに勝ちたいと思ったら、自分たちがやりたい走りをしなければならない。練習でも、インターバルなどだけではなく、基本のジョグの姿勢を含めて、効率のいい美しいフォームを、より一層深く突き詰められた積み重ねの結果かなと思います」

 ただ、その全日本の結果により、箱根では青学大は「絶対に主導権は渡さない」という気持ちでくるだろうし、駒大も往路を重視してくるはずだ。特に青学大は神野大地が万全でないことで、他の選手たちの間で「自分たちでやらなければいけない」「神野に1番で渡さなければいけない」というムードが高まれば、より強敵になってくるに違いない。熾烈な戦いは避けられないと酒井監督は言う。

「箱根でも、全日本のようにミスを誘発させて、そこに勝機を見つけなければいけないと思う。選手たちもあの勝利が自信になったし、『負けたくない』という思いはすごくあるので。おそらく青学大は一色恭志と久保田和真を序盤にぶつけてくるだろうし、駒大も中谷圭佑と工藤有生を使ってくるだろうから、うちも服部兄弟を使わなくてはいけない。今回はうちも大八木さんも、対青学大を考えればあまり策略もなくシンプルに戦うしかないと思います」

 東洋大は1区を服部弾馬(3年)、2区は服部勇馬(4年)を起用。3区と4区には、出雲の4区と全日本の3区で区間賞を獲得している口町亮(3年)と、出雲、全日本とも主要区間である6区と4区を走り、それぞれ区間4位と5位になった櫻岡駿(3年)を並べてくるのが順当なところだろう。

「まずは2区がポイントになると思います。青学大はどう見ても一色だと思うから、そこで勇馬が相手を揺さぶって引き離すか、怖がってしまうくらいのペースで行って『学生長距離界のエースは俺なんだ』という意地を見せられるかですね」

 そして3区と4区で優位に立って走れば、5区の五郎谷俊(4年)につなぐことができる。五郎谷は前回、1時間22分かかっているが、練習などを見ると、今回は1時間20分程度と、青学大や駒大と差のないタイムで走れると予測している。

「往路がうまく流れれば、勝負は6区と7区になると思います。うちの6区には前回1時間0分01秒で走った高橋尚弥(4年)がいるけど、青学大には村井駿(4年)、7区には小椋裕介(4年)がいるので強力です。ただ、前回の区間成績は2位と1位ですごいが、大量リードをもらったときの区間順位というのはプラスアルファもある。7区には主力クラスの選手を持っていって詰めるか、1秒でも勝ちたいですね。そこで詰められなければ勝機はないと思います」

 距離的には未知数なところはあるが、全日本の7区で区間1位となった堀龍彦(2年)の7区起用も考えられる。また経験させるという意味でも堀の4区起用にめどが立てば、口町か櫻岡を7区で使えることになるという。

「青学大の場合は4本柱の他にも、2年生の田村和希と下田裕太、中村祐紀や、4年の渡辺利典がいて、強いと思いますね。ただどこの大学も箱根では、出雲と全日本に出ていない2名を使わなければいけない。その選手たちが復路でどれだけやるかが、3校の勝敗を分けるのではないかと思います。有力校はどこもプラスアルファの3枚くらいを持っている。うちにもそれはいるので、調子のいい選手を使うことになるでしょう」

 候補者には全日本の8区を走った上村和生(4年)や、出雲と全日本でそれぞれ区間3位と2位になっている野村峻哉(2年)がいるが、それ以外にも渡邊一磨(4年)や寺内将人(4年)、山本修二(1年)が調子を上げてきているという。

「青学大が勝つときは圧勝だと思うけど、うちや駒大が勝つなら接戦でしょう。大八木さんもそう簡単には勝たせたくないと思っているだろうから、前も後ろも気にしながらのレースになる。うちとしては最後の最後まで競り合うレースをしたいですね。今回は本命ではないのでむしろ楽しみ。全日本のように力を使い果たすくらいのレースをしたいですね」

 打倒・青学大は、東洋大や駒大に限らず、上位を狙うすべての大学の目標である。

折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi