"3強"はどう戦うか(2)

 3冠に王手をかけて臨んだ前々回は、5区にエースの設楽啓太を起用して勝負をかけてきた東洋大学に屈した。村山謙太、中村匠吾という大学界トップランナー2名を擁して優勝候補筆頭と目された前回は、青山学院大学の勢いに敗れた。

 そして今回。駒澤大学の大八木弘明監督は「青学大は強いですよね。神野、小椋、久保田、一色は強いし、その下の中間層もいっぱいいて層が厚い。悔しいけど、どこかで簡単に逃げさせたら、そのままパーッと独走になってしまう可能性もあります」と語る。

「東洋大の酒井監督も同じ考えだと思いますが、青学大に勝つとしたら、全日本で東洋大がやったように、少しでも先行、先行といって、焦りを誘わなければダメでしょうね。自分たちのレースをして100%の力を出さないと無理。確実にミスがないようにしなければ勝機はないと思っています」

 青学大の神野大地が5区でどこまで走れるかわからないが、駒大が勝機を見出すためには最低でも4区終了時点で40〜50秒は先行していることが条件になる。

「今回の神野くんは前回ほどではないのかなと思うので、全日本みたいに彼を焦らせる必要がある。それができれば流れはちょっと変わると思います。復路になると結局は流れ次第になる。先頭に立てば乗って走ってしまうというのが今の選手なので」

 往路の5区。前回は馬場翔太(現4年)が低体温症となって失速した。大八木監督は「準備を少し怠った面もあって失敗した。後ろから神野君が追いかけてきたので、1時間18分くらいでいかなければという焦りがあったかもしれない」と言う。だが馬場は前々回は1時間19分54秒で走っており、今回も5区の有力候補。8月の十和田湖八幡平駅伝で、上りにも対応できるところを見せた大塚祥平(3年)のどちらかが起用される見込みだ。

 重要になるのはそこに至るまでの序盤の流れだ。

「全日本の1区と2区を走った中谷圭佑(3年)と工藤有生(2年)はもちろん、他にも11月の上尾ハーフで優勝した其田健也(4年)や馬場、大塚も往路に使って勝負しないと、青学大に逃げられてしまう可能性は十分ある」(大八木監督)

 馬場は今年、1万mの自己記録を28分37秒21まで伸ばしており、平地区間を走る力は十分にある。そこで3区起用の可能性が出てくる(その場合、5区は大塚)。だが馬場がリベンジを誓って5区を志願したら、終盤に上りのある2区には、全日本でエース区間の8区を走り、ドミニク・ニャロイ(山梨学院大学)とダニエル・ムイバ・キトニー(日本大学)に次いで区間3位になった大塚を使えるようになるというわけだ。

 大八木監督のこれまでのセオリーでいけば、1区には出雲と全日本で同区間を経験している中谷を起用する可能性が高い。中谷は出雲では青学大の小椋裕介に競り勝って区間1位になった。だが全日本では東洋大の服部勇馬や青学大の一色恭志、早稲田大学の中村信一郎に8秒突き放されて4位だった。今回、そのうち服部勇馬と一色は2区に回る可能性が高い。

 中谷も前回は3区で区間賞を獲得しており、全日本後の11月14日には、1万mの記録を28分17秒56まで伸ばしている。その自信を活かせば、ユニバーシアード1万m銅メダル獲得という勝負強さもあるだけに、青学大の久保田和真ともしっかり勝負できるだろう。

 大塚で2区をつなぎ、3区は1万mの自己記録を28分23秒85まで伸ばし、全日本でも2区で区間2位になっている工藤で勝負。次の4区に好調な其田を置いて勝負をしかければ、大八木監督のもくろみ通り、青学大に40〜50秒差をつけて5区へ、という可能性が見えてくる。そこで馬場がきっちり走れば、往路で青学大に先着できるというわけだ。

 駒大の課題は6区だ。2年続けて59分22秒、59分21秒で快走した西沢佳洋が卒業、今回は経験者がいない。大八木監督は6区について、「特殊区間だから、準備はしています。下りは有力校はどこも59分台で確実に走ってくる。59分30秒くらいで区間5〜6番でしょう。最低でも59分30秒で走らないときついと思う」と言う。その条件をクリアできれば、7区には前回同区間で区間2位、11月の上尾ハーフでも2位と調子を上げてきている西山雄介(3年)を置ける。

「往路がとんとんでいったら、6、7、8区あたりで勝負しないといけない。でも絶対にどこも落とせないし、9区くらいまでは確実にいかなければならないでしょうね。そう考えると、うちはまだまだ層がそんなに厚くないので厳しい状況です」(大八木監督)

 8区以降は、直前まで状態を見ながら調子のいい選手を起用する戦いになるだろう。候補者には、初出場の全日本は5区8位だったが、その後の上尾ハーフを1時間3分50秒で走った下史典(1年)や、1万m28分55秒62の記録を持っている二岡康平(4年)、上尾ハーフで1時間4分00秒の自己ベストを出した高月智生(4年)、全日本では7区区間9位だったが、2月の丸亀ハーフで1時間03分31秒を出し、10月の札幌ハーフでも優勝している高本真樹(2年)らがいる。

「調子がピンポイントで合えば面白いけど、選手たちも『相手のレベルが高いから、本当にチーム一丸になっていかないと勝てない』ということはわかっています。それこそガチンコで勝負をして、それで負けたらしょうがないなと思ってやるしかないですね」

 駒大の勝機は、往路で青学大の前にいくこと。今回はそれだけを意識して挑もうとしている。

折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi