気兼ねなく倒せるという高速バス「VIP LINER」の「一斉リクライニング」(画像出典:平成エンタープライズ)。

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高速バスでシートを倒せず悩んだことがある人、多いかもしれません。そのリクライニングにまつわるトラブルは少なくなく、対策をしているバス会社もありますが、この問題、乗客としてはどうしたら良いのでしょうか。

わざとリクライニング不能にする身勝手な例も

 先日、福岡と鹿児島を結ぶ高速バス「桜島号」夜行便で、運転手が「後ろの人のことを気にしてリクライニングを倒せない、ということのないよう、皆でいま一斉に倒しましょう」という主旨のアナウンスをしたことが、ツイッターなどで話題になりました。

「神対応」とも呼ばれたこのアナウンスを行ったのは、いわさきコーポレーション(鹿児島市)に所属する39歳の運転手。後席を気遣ってリクライニングせず、窮屈な姿勢で仮眠する乗客が気になっていたそうで、会社のマニュアルには無い、ふと考え付いたアナウンスだったといいます。

 実は、高速バス車内で発生するトラブルとしてよく聞かれるのが、シートのリクライニングにまつわるものなのです。なかでも特に多いのが、「後ろの人に断りなくシートを急に深く倒す」ことによるトラブルで、最悪の場合、前後の乗客同士で言い争いになることもあります。

 特に夜行バスのシートは深くリクライニングできるよう設計されているものが多いので、急に倒されると驚いてしまいます。

 また、「わざとシートの背面に大きな荷物をかけたり置いたりして、前の人がシートを深く倒せないようにする」「膝を立てて座ったり浅く腰掛けたりして、前の人がシートを深く倒せないようにする」という事例も存在。

「後ろの人のことを考えると気兼ねしてシートを倒せない」「できればシートを全傾してくつろぎたいが、トラブルに巻き込まれるのが嫌なので倒したくても倒せない」といった乗客の声は少なくありません。

バス会社も考えているリクライニング問題

 リクライニングにまつわるトラブルを防ぐべく、高速バスを運行する会社も対策をとっています。

 多くのバス会社では、乗務員からマイクを通して「シートを倒す際には後ろの方へ一声掛けてからシートを倒されるようお願いします」と案内しています。しかし、乗務員による案内放送だけではなかなか周知されないことから、最近ではリクライニング角度をあえて浅く設定したシートを導入するバス会社や、リクライニング時の圧迫感が少ない「ゆりかご式シート」を採用するバス会社も出てきています。

 また先述のような運転手の裁量によらず、会社として一斉にリクライニングするよう促すバス会社も存在。首都圏と名古屋、北陸、関西間で高速バス「VIP LINER」を運行する平成エンタープライズ(埼玉県富士見市)では、「一斉リクライニング」というシステムを取り入れています。

 消灯時間になった時点で「ではシートをリクライニングして下さい」と自動放送にてアナウンスが入り、皆でシートを倒すというシステムで、気兼ねなくリクライニングできると乗客から好評を得ています。

知っておくべき「高速バスマナー

 高速バスは鉄道や飛行機と同様、皆が利用する公共の乗りもの。長時間を移動するだけに、利用者としてのマナーを守ることも大切です。少なくとも、シートをリクライニングするときは、後ろの座席の人に「倒していいですか」とひと言かけ、ゆっくり倒すのが良いのではないでしょうか。

 また同様に、前席の人から声を掛けられたら、きちんと返事をする。この、たった少しのやりとりをするだけで、未然のトラブル防止に繋がります。そしてシートに腰掛ける際は、膝を立てずに深く腰掛け、シートベルトも着用しましょう。

 高速バスの車内に持ち込む荷物は、貴重品や壊れ物など必要最低限にするのが大切です。大きな荷物は床下トランクに預けるか、また事前に宅配便を利用して送るという方法もあります。こうして身の回りの荷物を軽くするだけでも、座席回りに荷物を置くことが無くなるため、リクライニング時のトラブルを防ぐことにも繋がるのです。

 年末年始の帰省シーズンを迎え、高速バスを利用する人が増えるこの時期、乗客同士が「思いやりの心」をもって快適に移動したいものです。