羽生結弦氏が「僕も人間なんで」的なワンコケを見せるも、そこはまだ異次元世界だった全日本フィギュア男子SPの巻。
みんな、100点を目指すぞ!

ついに開幕した2015年最後の大一番、全日本フィギュアスケート選手権。注目の男子SPでは、世界最高記録を保持する新世界の絶対王者・羽生結弦氏が、転倒を含みながらも100点の大台に乗せる異次元スタート。ソチ五輪を超える点数をマークしながら「いまひとつやね」という表情を見せるあたりには、隔世の感すら覚えます。覚醒の時ならぬ隔世の時です。進化、早すぎです。

僕は先日の世界記録更新以来、「どうやって絶対王者を倒すか」というテーマでのイメトレをしてきました。最終的には絶対王者が勝つのですが、ある程度もつれてくれないと盛り上がりませんから。ただ、絶対王者のプロトコルは完璧です。どの要素もハイレベルで、まったく隙がない。たとえどれだけ悪意を持ってルールを変えようとも、全方位で強い羽生氏を引きずり下ろすのは困難でしょう。逆に、ルール変更への対応力の違いで、今以上に差が広がるかもしれない。それぐらい突き抜けた存在です。

ただ、いかな絶対王者でも毎回ノーミスとはいかない。4回転を100%決めることはさすがに難しいはずです。羽生氏がコケたときに、もつれる位置につけておきたらチャンスがあるのではないか。もしSPで僅差、あるいは上回ることができればフリーまでの間に「おや?」「おかしいな?」「何故だ?」という心理的乱れが発生するかもしれない。たぶん、「おや?」を起こして自ら崩れるよう仕向けでもしないかぎり、今の絶対王者は崩せません。

そして、実際に今回の全日本ではコケが発生しました。

おっ、イケるんじゃないかコレ。

だが、ここで新たな現実に気付きました。コケを超速でリカバーされた場合、4回転まわり切ったコケでは「転倒の-1.00と、4回転のGOE最大マイナス幅である-4.00」以上は減らないという現実に。羽生氏の最高記録が110点くらいですから、ワンコケ前提でも100点は取らないと「おや?」の範囲にすら届かない。で、100点超えたことあるの何人いるかなーと思い返したら、歴史上羽生氏ひとりしかいなかった。うむ、なるほど、文字通り「絶対王者」です。

ちょっと今季には間に合わないかもしれませんが、来季はSP100点、フリー200点を世界中で目指していってほしいもの。そうやって世界全体が進化してこそ、新世界を切り拓いた意味もありますし、開拓者の価値も高まるというもの。「ライバルがいるほうが燃える」タイプの絶対王者も、きっとそういう未来を望んでいるはず。「仕方ない、4回転ループをやるぞ!」と絶対王者の全力を引き出すところまで、みんなで高め合っていきたいものですね。男と男が、熱く、高め合っていきたいものですね。

ということで、「2枠っていうか残り1枠じゃねーか」という枠取り合戦恨み節を心に響かせつつ、26日のフジテレビ中継による「全日本フィギュアスケート選手権 男子ショートプログラム」をチェックしていきましょう。

◆さすが絶対王者、正しく、上に、位置している!正上位に!

北海道は真駒内アイスアリーナ。2012年に初めて日本の頂点に立った舞台。もはや勝ち負けは意識外というか、ひとつ先の新世界にたどり着いて絶対王者・羽生結弦は帰ってきました。2戦連続世界最高記録更新という偉業。しかも、その更新度合のケタ違いぶり。心なしか本人の表情にもゆとりが感じられます。

中継のカメラがとらえたファーストショットは、まさかの四つん這い。よ、よ、四つん這い。ゆ、ゆ、ゆづん這い。世の婦女子は「ANAのゆづが」「逆にANAを」「HIROTAっちゃう!」とザワザワしたのかもしれません。僕もついついザワザワしてしまい、「今の映像、仰向けに寝そべってもう一回見よう」などと新しい姿勢での観戦も始めてしまいました。

最終的には尻部分だけを接地して、両腕と両足が上方で輪を作るようにクロスしながら、首をグッと持ち上げる感じで3回ほどリピート再生してみました。うん、身体がキツイ。唇がつる。いやー、こんなことだから僕はユヅリストなどという特殊呼称で呼ばれるのかもしれませんね。え?お前は「キモいオッサン」と直球で普通に呼ばれてるですって。失敬な。ちゃんとみんな後ろに「(褒め言葉です)」ってつけてくれてるがな!

↓ハッ!!うわぁぁぁぁぁ!羽生氏が献血を呼び掛けているときに、僕は何をやってるんだ!



まっすぐな瞳で「大丈夫だよ」と言われてる気がする!

何だか励まされている気がする!

どうしようもなく愚かな自分が、許されていく気がする!

よしっ、僕は大丈夫、生きていても構わない、未遂は罪じゃない!

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全国から勝ち上がってきた選手が、それぞれの想いを胸にスケート人生を賭けてくる舞台。得点やら順位ではなく、ひとりひとりの人生がこのリンクには乗っている。くだらん妄想にうつつを抜かしている場合ではありません。見ろ、会場を。めちゃくちゃ重いではないか。ズッシリと重い。

そう言えば、かのツー・タイムス・ワールドチャンピオンであるミキ・アンドーもこう言っていました。「ソチ目指してなかったです。あれ誤報ですね」「トリノの年も、バンクーバーの年も、全日本に出るっていうのが最大の目標」「最終的な目標は全日本。ソコ訂正します(ズバッ)」と。それだけ重い舞台、それが全日本なのです。ゆづん這いなどと言っている場合ではないのです。

息をすることもためらうような緊迫を破るように、有力どころで最初にリンクに立ったのが羽生結弦氏。フィギュアスケートという競技ごと進化させるかのような羽生氏の新世界はこの日も健在でした。ショパンのバラード第1番、イーグルから入る冒頭の4回転サルコウは、大きく外に軸が傾いてしまい転倒します。しかし、ここからが凄かった。

サルコウで転倒したあとに素早く立ち上がった羽生氏は、加点がつきそうな「流れのある大きな転倒」を活かして、すぐさまイーグルへとつなげたのです。イーグルで転倒をサンドする。これはぜひ録画を見ながら曲とともに振りを見てほしいのですが、サルコウ直後のイーグルには、ピアノが強くポーンと鳴るタイミングで腕を上げる振り付けがあります。そのタイミングが、世界最高記録を作ったときの「ノーミスの演技」と変わらないのです。

それはつまり、あの転倒は純粋に「転んだだけ」であって、音楽との調和や要素のつなぎなどにはまったく悪影響を与えていないということです。転倒でマイナス1点、GOEが4回転の失敗に対して最大限マイナスされたとしてもマイナス4点ですから(※実際は-3.31点だったもよう)、あの転倒は言うても「マックス5点減」に過ぎないミス。自身の持つ記録110.95点が5点減ったところで106点弱。ワンミスでもまだ前人未到の位置にいる、これが羽生新世界なのです。そもそも立っている位置も違い、ミスからのリカバーも上手い。「コケてなお強し」とはこのことでしょう。

演技全体としては疲れが見え、着氷の乱れや、スピンでの軸を取るまでのもたつき、回転中の移動、ステップでの上体を倒しきれない場面など気になる点はそれなりに多い演技。世界最高記録から比べると「当社比」でやや精彩を欠く演技ではありました。が、それは羽生結弦と比較して初めてわかること。これだけの演技を「あれに比べると…」と思わせるように仕向けたのは、ほかならぬ羽生氏自身。「観客の目を肥えさせる」という形でも、羽生新世界は着実にフィギュアスケートを進化させています。大したものですね。

↓フィギュアの枠を飛び出したスターに人が群がり、タオルが投げ込まれ、花びらがこぼれる!


閾値を超えた感じがするな!

超えたことによるトラブルも含めて!

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もし知らない人がいればレベルではありますが、リンクに花やぬいぐるみを投げるときは、花びらや布切れが落ちないよう、しっかりと包んだ状態で投げるのがお約束です。会場で買えば、基本的に花は全部ビニールで包まれているはずです。中継中にも解説の本田さんが言っていましたが、あぁいうのを踏むと選手が転ぶ危険があるそうです。選手の衣装から端切れが落ちたら1点減点されるというルールまであるほど、リンクに物を落とすのはご法度なのがフィギュアスケート。そこはイイ演技を楽しむために、観衆としても守っていきたい。

ウチの父親を初めて相撲に連れていったとき、座布団を投げたいとダダをこねていましたが、興奮するとモノを投げたくなる気持ちは多くの人にあるもの。ただ、投げ方がマズければ「めんどくさい、全員投げるな」という話になるのが世の中です。選手に堂々とモノを投げていい文化なんて、どの競技にでもあるものではありません。サッカーや野球でやれば、係員が飛んできて説教される行為です。素晴らしい文化を守るのは、個々のマナー。どこかでこういう話を知って「やべっ」と思ったら、次はやり方を変えていただきたいものです。

さて、花びら拾いで少し時間が空いたのち、つづいて登場した有力どころは宇野昌磨クン。冒頭のトリプルアクセルは大きな加点がもらえる素晴らしい出来栄え。曲に合わせて観衆から自然と手拍子が起こります。4回転はこらえて着氷。コンビネーションもキレイに決めて、見せ場のステップへ。本当ならココでみなが立ち上がって、フゥー!的な歓声が起きてもいい曲だと思うのですが、そこは全日本。最後までピリピリで滑り終えます。いやー、とにかく重いw

↓いくら国内選手権とは言え、97点でトップに出られないとかコッチの感覚まで狂ってくるような好演技!


これで世界選手権の枠が2枠しかないってどういうことだ!

ほとんど同じ顔ぶれで昨季もやってたはずなのに!

昨季何したんだっけ!昨季をやり直せ!

フィアンセが毎日夜の哀しいニュースをウッキウキの顔で読み上げている小塚崇彦さんは、スケーティング自体は最新スマホ並みのヌルヌルですが、苦しいジャンプがつづいて伸ばし切れず。全日本で一発かっ飛ばして世界への切符をつかみたい村上大介さんは、トリプルトリプルのコンボは回避するも、全体としてはクリーンにまとめた好演技。昨年はNHK杯でアッと驚く優勝を遂げたあとに、全日本で落胆の演技となった村上さん。今年は、一段地力をつけて、この重たい舞台でもしっかりと自分のチカラを発揮できたようです。

↓でも、残念ながらクリスマスのカチン加点はゼロだわなぁ!


メリークリスマス!ハッピーホリデー!

毎回、こういうのシェアしたらええわぁ…。

今日のダイちゃん、加点はつけられへんけど、オッチャン的には好印象やで…。

「AKI猪瀬みたいな髪型ですね」ってあとでリプライしとくわ…。

さぁ、そして今回もっとも印象的な演技を見せたのは無良崇人さん。場内に響く「洋菓子のヒロタ」のコールに、クリスマス感が嫌でも高まる中での演技。高くて雄大な4回転3回転のコンボを決めると、得意のトリプルアクセルも加点がもらえるデキ。思い返せば9ヶ月前、この「2枠」という激戦を生んだのはほかならぬ無良さんでした。責任は、自分のチカラで3枠を奪還することで返せ。そういう叱咤に応えるような気持ちのこもった演技でした。全日本に懸ける無良さんの想いと、クリスマスに懸けるHIROTAの想い、しかと伝わりましたよ!

↓シューアイス!シューアイス!シューアイス!(※心の中の大歓声)


スピン座るのがちょっと遅かったかな!

ただ、「羽生、宇野で決まり」という風潮はかき乱したぞ!

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とまぁ、こういう舞台なので最終滑走の山本草太クンが低調な感じになるのも仕方ないことでしょう。ある意味で、世界での戦いより重苦しいのが全日本。逆に海外での大会のほうがリラックスできるかもしれないくらい、この大会は重い。全国に生中継されるほどの注目度ということも含めて、この重さを自分を高める枷にしていってほしいもの。

これで上位は羽生氏、宇野クン、無良さんと90点を超えた3人が占める格好。村上さん以下はやや得点で水を開けられており、表彰台そして世界への切符はこの3人が争うことになりそうです。3枠なら弛緩したかもしれない空気が、2枠によって締め付けられているかのようなこの感覚。いい戦いで、いい正月を迎えられるよう、勝っても負けても気持ちよく終わってもらいたいものです。

世界でもっとも熾烈な「残り1枠」を懸けた熱い戦い!お酒が進みそう!