連休を利用して海外に渡航する人が増える年末年始。日本とはひと味違うお正月を海外で迎えるのも素敵なものですが、渡航先によっては感染症の危険がある場合も。その際に必要となるのが、旅行前の国内での予防接種ですが、こうしたワクチン接種は、渡航先で感染症から身を守るために必要なのはもちろんのこと、アフリカや南米などでは入国する際に「予防接種をした」という証明書の提示を求められるケースもあります。

近年患者が拡大を見せた感染症


短期滞在の海外旅行で注意が必要な感染症としては、下記の2つがあげられます。ちなみに、長期滞在とは1か月以上の滞在を指します。バックパック旅行など冒険的に辺境地へ出かける際は短期でも長期扱いとなります。

●中国で初めて人への感染が確認された「発症鳥インフルエンザA(H7N9)」


2015年12月17日付けで公表された世界保健機関(WHO)の情報によると、中国と香港で2名、台湾では中国への渡航歴のある人からウイルス感染者が確認されたということです。いずれも家禽類からの感染であり、現在まで人から人へうつることは確認されていませんが、日本国内では、国立感染症研究所において、中国から入手したウイルス株を使ってのワクチンの製造準備を行っている段階です。予防接種などはできませんので、当地へ渡航予定のある人は、手洗いやマスクを、また鳥などの動物に直接触れることは避けましょう。中国から帰国後、インフルエンザのような症状が出た場合は、最寄りの保健所へ速やかに電話連絡してください。

●今年6月に中東・韓国で流行した「中東呼吸器症候群(MERS)」


2012年に初めて確認された「MARSコロナウイルス」。サウジアラビアなどの中東地域を中心に感染が拡大し、中東地域への渡航歴があった人が発症し、その感染者との接触によって患者が拡大しました。発症すると、発熱・せき・くしゃみ・息切れなど風邪や肺炎に似た症状を呈しますが、全く症状が出なかったり症状が軽くてすむケースもあります。ワクチンなどはありません。中東地域を渡航する際には十分注意し、ラクダなどの動物との接触は避けましょう。

●依然患者数が多い西アフリカの「エボラ出血熱」


ウイルスに感染した動物に触れることで、ウイルスが傷口や粘膜から侵入して感染します。ワクチンや特別な治療法はなく、あらゆる重篤な症状とともに下血や吐血を起こします。2015年12月16日付けの世界保健機関(WHO)の情報では、流行地のギニア、リベリア、シエラレオネで合わせて死亡者は1万1300人、患者数は2万8604人。新たな人から人への感染は抑えられてきており、1〜2月の終息を目指して警戒態勢下にありますが、新たな伝播の可能性もあるため、必要のない渡航は控えましょう。

●昨年日本でも患者が確認された「デング熱」


熱帯、亜熱帯地域の国々に生息する「ネッタイシマカ」と「ヒトスジシマカ」という種類の蚊を媒介してヒトに感染します。日本にもヒトスジシマカは生息しますが、晩秋に成虫は死滅するため、翌年にウイルスが持ち越されることはありません。5〜11月の蚊のシーズンには、日本での媒介も考えられますが、冬季は、海外で感染する可能性を考えて露出の少ない格好や蚊をしっかり遮断できる宿泊施設に滞在することが大切です。

●致死率が高い「狂犬病」


狂犬病は犬に限らずキツネやコウモリ、アライグマなどほとんどすべての哺乳動物から人間に感染する病気です。また、狂犬病を発症した場合の死亡率はほぼ100%であり、いまも世界では年間約5万人が狂犬病によって亡くなっている状況です。
日本は狂犬病予防法の施行により、国内における狂犬病の撲滅に成功しましたが、アジア・アフリカ・南北アメリカ・ヨーロッパなど、日本の周辺国を含むほとんどの地域で依然として狂犬病が発生していることから、狂犬病の感染リスクの高い地域に渡航する場合や、渡航先で動物と接する機会が多い場合は、予防接種が必要となります。

●予防接種証明書が必要な地域もある「黄熱」


黄熱は、黄熱に感染した蚊に刺されることによって起こる感染症で、アフリカ・中南米の熱帯地域にみられる病気です。黄熱の症状はおもに発熱・頭痛・吐き気・全身の痛み(筋肉痛)などですが、初感染時の死亡率は30〜50%ともいわれているため、感染の危険がある国に渡航する際の予防接種は必須であり、入国や乗り継ぎの際に「予防接種証明書」の提示を求められる地域もあります。

黄熱には有効なワクチンがありますが、この予防接種は指定された施設のみでおこなわれています。そのため、黄熱の予防接種を受ける際には、最寄りの施設を確認のうえ、予約を取ることが必要となります。

上記のもの以外にも、渡航する地域や滞在期間によっては、A型・B型肝炎や、破傷風、ポリオ、日本脳炎などの予防接種が必要な場合もあります。詳しくは下記の厚生労働省検疫所のサイトなどから、渡航地域の情報を見て判断してください。感染症のリスクの高さ別に詳しい案内があります。

 

厚生労働省検疫所

https://www.forth.go.jp/index.html

予防接種は早めの準備を


感染症のワクチンには数回に分けての接種が必要なものや、黄熱ワクチンのように接種後は他の予防接種を受けることができないものもあります。また、予防接種をおこなった際は、ワクチンの影響で一時的な体調不良を起こす場合もあるため、トラベルクリニックなどに相談して、予防接種の計画は早めに立てておくことが大切です。

日本渡航医学会推奨 国内トラベルクリニックリスト


http://www.tramedjsth.jp/02travelclinics/index.html

上記の感染症のほかにも、自身の健康について心配なことがあれば、旅行前にかかりつけ医に相談しておきましょう。

<参考>
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/
(狂犬病 厚生労働省)
https://www.forth.go.jp/keneki/nagoya/ounetsu.html
(黄熱ワクチンについて 名古屋検疫所)
https://www.forth.go.jp/useful/vaccination.html
(海外渡航のためのワクチン 厚生労働省検疫所)