「新日本プロレスワールド」の1周年企画。多視点映像を自分で編集して楽しめる「マルチアングルサービス」

写真拡大 (全3枚)

 電通と電通国際情報サービス(ISID)は2016年1月4日まで、テレビ朝日と新日本プロレスが共同運営する「新日本プロレスワールド」内の1周年企画として、多視点映像を自分で編集して楽しめる「マルチアングルサービス」のトライアルをスタートさせている。

 このサービスは電通とISIDが開発した多視点動画配信ソリューション「VIXT」(ビクスト)が活用されている。電通のマーケティング・クリエーティブセンター、コミュニケーション・コンサルティング室、戦略コンサルティング部の志村彰洋主任研究員に話を伺った。

■スポーツ配信の多視点映像を自分でチョイスできる

 新日本プロレスワールドのマルチアングルサービスでは、2015年10月12日に両国国技館で行われた「KING OF PRO-WRESTLING」の試合映像を利用した。

「用意された6つのカメラからのアングルをスイッチングしながら、自分で映像を編集できます。映像は両チームサイドからの視点はもちろん、レフリーに近い視点や、リングサイドからの視点、さらに観客席からの引きの視点などがあり、迫力あるプロレスの試合をタイムラインに沿って好みにあわせて編集できる点がウリです」(志村主任研究員)

 メイン画面の下には6つのサムネイル映像が流れており、そこをクリックするだけでカメラアングルがリアルタイムに切り替わり、メイン画面に表示される。6つのアングルはタイムライン上でカラー分けされ記録されているため、自分がどのタイミングで、どのアングルの映像をセレクトしたのかも確認できる。

 特にプロレスという素材の場合、トップロープからの飛技や、空中殺法、カウント3、さらに場外乱闘など、いろいろなシーンがあるため、6つの映像のタイミングを見計らいながら、プロのスイッチャー気分で映像を選択できる。

 さらに、「自分で編集した映像は、専用サーバーに登録して、FacebookやTwitterでもシェアできます」(志村主任研究員)。批評してもらってよりよい“作品づくり”に生かすのもよいだろう。映像を公開する際には、自分でコメントを入れられるので、どんな点に着目して映像を編集したのかを説明することも可能だ。

■多視点動画配信に組み込まれた新たなビジネスモデル

 この映像体験のサービスには電通とISIDが開発した多視点動画配信ソリューション「VIXT」がバックエンドで活用されている。1年前に技術発表し、JR大阪駅前にあるグランフロントにて、アイドルユニット「東京パフォーマンスドール」のライブ動画で多視点切替えのデモを実施している。

 「今回の『新日本プロレスワールド』のトライアルでは、このVIXTをベースにした『マルチアングルキャッチアップ配信』と、それに連動した新しい広告配信の仕組み『Viewpoint Release Ad』(ビューポイント・リリース・アド)を組込みました」と志村主任研究員。これは任意のカメラ視点に広告を配信し、数十秒間の広告が視聴されると(スキップ可能)、そのカメラ視点の本編映像が解放されるという仕組みだ。

 ビジネスモデル的に興味深いのは、映像配信時において、カメラアングルごとの視聴ログや配信プレイヤー上の操作ログが独自の集計ロジックで計測できること。「そのため、視聴者が映像配信画面を動的に変更できるコンテンツ上に、最適化された広告配信が可能になります」(志村主任研究員)。たとえば視聴率が非常に高い特定の決定的瞬間をとらえ始めたシーンの直前に、広告を挿入してコンバージョンを上げるといったことも可能になるだろう。

 電通とISIDは、撮影から視聴まで、CGM的な発想で動画を自分好みに再編集して発信し、ユーザー自身がオーケストラの指揮者のようにコンテンツを自然発生的に作り出してくれるようなエコシステムを考えているようだ。そして、その際には広告配信によるビジネスモデルも組込めるように配慮している。

 VIXTの映像ではスポーツだけでなく、アーティストのライブに参加したあとに、異なる客席からの視点で映像の見直しもできる。またeラーニングなどの素材にも適用できるため、詳しく説明を聞きたい部分をユーザー側で切り替えて編集することも可能だ。

 「これまで一方的に放送局から配信されていた映像が解放され、コンシューマ主導で再編集して楽しめるようになれば、映像自体のライフサイクル自体も伸びていくはずです」(志村主任研究員)。もちろん著作権など、まだ解決すべき問題もあるが、Viewpoint Release Adによる広告モデルが成立するようになれば、フリー素材が増える可能性もあるだろう。