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●持たれがちな「テレワーク」の勘違い
これまで「テレワーク」というと、「在宅勤務」というイメージが持たれてきた。また、そうした働き方の対象となるのは、子育て中の女性に限定されているケースが多く、多くのビジネスパーソンは一定の時間を会社で仕事することが求められてきた。

現在、ICTの進展に伴い、テレワークによって実施可能な業務範囲は拡大している。また、安倍政権が掲げる一億総活躍社会の実現に向けて、「仕事=決まった時間に決まった場所(会社)で働く」という考え方を変えていくことが求められている。

12月17日に経団連で開催された「一億総活躍社会に向けた働き方改革」セミナーでは、ワイズスタッフ兼テレワークマネジメントの代表取締役 田澤由利氏によるテレワークの最新動向に関する講演が行われた。田澤氏は現在、内閣府の政策コメンテーターや総務省のふるさとテレワーク推進会議委員なども務め、テレワークの普及活動を行っている。

24年間、テレワークに関わってきたという田澤氏は、よく「テレワークについて勘違いを持たれていることがある」という。

○勘違いその1:「テレワーク」は電話の仕事

「テレワーク」という言葉に対して、「いまだに『コールセンターの仕事をしているの?』と聞かれることがよくあります」と田澤氏は言う。

とは言え、テレワークの「テレ」は、テレフォンの「テレ」と一緒で、「離れた」という意味である。テレワークとは、「ICTを活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」を意味している。

これまでは、決まった時間に決まった場所で働けないと、仕事をやめなければいけないということが多くあった。しかし、「テレワークができると、働きたくても働けなかった人が、働けるようになる」と田澤氏は説明する。

○勘違いその2:「テレワーク」はもう古い

「テレワークという言葉は1980年代からある言葉で、その頃を知っている人は古い印象を持たれていることがあります」(田澤氏)

現在は当時と比べて、企業も社会もICTも、大きく変化している。「女性の活躍推進」や「地方創世に資するIT利活用の促進」など、政府の政策方針ではテレワークが推奨されている。また、政府はテレワークの具体的な数値目標も示しており、2020年までにテレワーク導入企業を2012年度比で3倍、週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー数を全労働者数の10%以上と、設定している。

現在、テレワークの導入企業・利用者割合は増加傾向にあるものの、まだまだ少ない状況である。総務省の「平成26年通信利用動向調査」によると、在宅勤務導入企業は、資本金50億円以上の企業では12.2%、資本金1000万円未満の企業では1.9%。テレワーク(在宅勤務以外も含む)を利用する従業員の割合は「5%未満」が48.6%となっている。

○勘違いその3:「テレワーク」なんて必要ない

「『うちは必要ない』『私は必要ない』『世の中的には大事だけど…』という声が多くあります」(田澤氏)

しかし、少子高齢化社会の日本において、生産年齢人口が少なく、支える高齢者が多い状況は、今後30年は続く見込みとなっている。この問題を打開するためにも、なるべく多くの人が働ける環境をつくり出す必要性に、日本は迫られている。

一方、日経ウーマン2015年6月号の「女性が活躍する会社」ランキングでは、上位10社中6社が在宅勤務制度を導入している結果となった。

田澤氏は、「このランキング10社の中でみると、60%の企業が在宅勤務制度を導入していることになります。なぜか? それは、まだ導入している企業が少ないので、在宅勤務制度を導入しているかどうか聞かれた時に○がつくと、こうしたランキングで上位にランクインしやすいから。さみしい理由ではありますが、それでよいと思っています」と言う。

「数年前、『うちは在宅勤務はやりません』と言っていた大手企業がありましたが、その後導入したいと相談してきたことがありました。理由を聞いたところ、『導入するつもりはないと思っていたんだけど、最近いろいろなアンケートや取材で在宅勤務制度の導入状況をよく聞かれるようになった。うちは導入していませんと答えてきたけれど、このままではちょっとまずいかなと思うようになってきた』というような話もありました。これから、人材を獲得するためには、柔軟な働き方が絶対に必要となってきます」(田澤氏)

また、人材獲得だけが重要なわけではない。人材をつなぎとめる必要もある。

「会社を支えてきた40代・50代の社員が、親の介護のため突然離職してしまうと、企業にとって大きな痛手となります。新しい人を雇おうと思っても、新しい人はなかなか入ってこない世の中です。毎日朝から晩まで、会社に来ることができる人しか雇わないような企業は、重要な人がやめ、新たな人材を採用できず、人材を失うことになります」(田澤氏)

このような問題に対して、現在政府は「ふるさとテレワーク」というものを提唱している。これは、例えば介護などで地方へ帰る人が、地方(ふるさと)で暮らしながら、ICTを活用して、都会と同じ「いつもの仕事」ができるようにすることを推奨したものだ。

●テレワークで見直す必要のあるものは?
○勘違いその4:「テレワーク」は難しい

「実際、テレワークを導入済みの企業でも、さまざまな課題があります」と田澤氏は話す。

企業からは「在宅でできる仕事が足りない」といった声や、管理職からは「部下がデスクにいないことによって、電話受付など、自分の仕事が増える」といった声、同僚の社員からは「子育て中の人だけ実施できて不公平」といった声があがっているという。また、在宅勤務をしている社員からも、「在宅勤務をしたら『出世をあきらめたのか』と言われた」「肩身が狭い。さぼっていると思われるかもしれないので、ついつい仕事をしすぎてしまう」といった声が寄せられている。

このような問題の背景には「在宅でできる仕事は限られている」という考えを持たれていることを、田澤氏は指摘する。

「"テレワークは仕事が限られる"という概念を変え、"テレワークでもできるように仕事のやり方を変える"ことが必要。そうでないと、これからテレワークをしないといけない社員が増えていく中、生産性は上がらなくなります」(田澤氏)

これまでは、「一人でやった方がはかどる仕事」や「切り分けて持って帰れる仕事」「重要なデータがない仕事」などが、テレワークでの仕事として選ばれることが多かったが、IT・クラウドを利用することによって、「いつもの仕事がどこでもできるようになる」と田澤氏は言う。

「なぜ会社に行くのか? その理由は、会社に仕事道具や仕事仲間があるから。この会社に行く理由をクラウド上に置いておけば、どこからでも使うことができるようになります」(田澤氏)

また、仕事の仕方もこれまでと変えていく必要があるという。例えば営業職の場合、情報収集・資料作成・会議・顧客訪問・報告書作成といった業務があるとする。「情報収集」「資料作成」「報告書作成」などは、情報伝達をIT化し、資料作成のための情報をデジタル化することによって、会社にいなくても業務を行うことができるだろう。「会議」についても、WEB会議化することによって、どこからでも参加できるような状態にすることができる。

さらに、同じような職種の社員が、在宅勤務でないと働けないような状況になってしまった場合、「会議」や「顧客訪問」以外の業務を在宅で行ってもらい、その分担当できる人が「会議」「顧客訪問」を行うなど、業務を分担をすることによって、これまでは退職しなければいけなかった社員の雇用を継続でき、さらに個人の頭の中にあった情報を、見える化・共有化できるようになる。「テレワークは企業を強くする」と田澤氏は言う。

田澤氏は普段、「バーチャルオフィス」を利用して、社員とコミュニケーションを取っているという。同じ空間にいなくても、このバーチャルなオフィスの中で、社員それぞれが何をしているのか、わかるような状況になっている。顔を見て話すことや、チャットで話しかけることができるなど、離れていてもコミュニケーションに困ることはないという。

また、テレワークマネジメントでは、「家にいるとさぼってしまうのではないか」といった、経営者の不安を解消するような、在籍管理システム「Fチェア」を提供している。

同システムは、在宅勤務者が着席/退席を選んで、現在の状態を知らせることができる。細切れの時間を合計して、その日の在籍時間を集計することも可能だ。

「でも、自己申告だと正しく着席/退席を押さない人もいるのでは…」といった懸念に対しては、着席中の人のデスクトップ画面を指定した回数、ランダムにキャプチャし、管理者が一覧で確認できる機能も搭載されている。

「こうしたツールを在宅勤務者は嫌がるかと思いきや、逆でした。自分が仕事をしていることを上司に伝えることができるため、安心して在宅勤務ができると言っています」(田澤氏)

グループウェアやストレージなど、現在多くの無料や低価格のツール・システムがあり、テレワーク環境をつくりやすくなっている。しかし、「システムやツール、制度だけではなく、いつもの仕事を見直すことが、テレワークには重要です」と田澤氏は言う。

少子高齢化社会に突入している日本では、これまでと同じ働き方を続けていくことは、もはや現実的ではなくなってきている。働き方の選択肢を増やすことが、喫緊の課題となっていることを認識しなければいけない。

(石原由起)