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近年IoT(Internet of Things)という言葉を聞くようになりました。日本政府が出す「日本再興戦略」改訂2015でも、ビッグデータやAI(人工知能)と並び、ビジネスや社会そのもののあり方を根底から揺るがす改革の要因として扱われています。

最終回は、IoT/WoTの現在と未来、発展するための課題について解説いただきます。

○現在の技術動向

IoT/WoTの実現には多くの技術的要素が必要であり、これらはまだ発展途上にあります。IoT機器やクラウドをつなぐ"通信"は、携帯網や光回線、Wi-Fiが使われており、より省電力な環境を志向した通信では、ゲートウェイを介したBluetooth LowEnergy(BLE)やZigbeeが用いられています。

今後は、このどちらもカバーする通信、つまり、より多くの機器をつなげつつ、低消費電力で広い範囲をカバーする通信手段が検討されています。

2015年に3GPP Rel.12で策定された「LTE Category 0」では、通信速度が上下ともに1Mbpsと制限されるものの、通信不要な場合に"スリープ"する低消費電力モードが用意されました。また、3GPP Rel.13で策定を目指す「LTE-M」では、さらに上下200kbpsまで速度が低下するものの、屋内や地下でも接続性が保たれるような、より広範囲のカバリッジを目指しています。

また、4Gの次、5Gでも「IoT」は技術革新を目指す要素の1つとして注目されており、より高速な通信に加えて、大量の機器を接続できることを目標にして、2020年に向けて技術の実用化を進めることが期待されています。

技術革新は、通信のや省電力化や接続性の向上だけではありません。IoT機器向けのチップも、小型化や低消費電力化が進んでいます。これまでの小型機器向けチップは8/16ビットが主流でしたが、現在は2.0mm角未満のサイズのものでも32ビットを実現したマイコンが登場しており、ボタン型電池で数年間の稼働が可能な時代となりつつあります。もちろんチップだけでなく、IoT機器でキーパーツとなる"センサー"なども省電力化されており、加速度センサーもボタン型電池で半年〜数年の駆動を実現しています。

IoTに必要なものは、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアも重要なコンポーネントです。センサ制御や通信を制御するためのOSも、これまでは汎用的なRTOSなどが用いられてきましたが、「IoT向けのOS」として機器管理、通信、省電力制御、暗号化などのセキュリティをカバーするOSが登場しています。2014年にはARMがmbed OSを発表し、IoTデバイスの開発がより行いやすくなっています。また少し高性能なCPU向けにはAndroidをベースとしたBrilloや、WebをベースとしたFirefox OSがIoT向けとして発表されています。

OS以外にも重要な存在が「プラットフォーム」です。例えば、機器間の相互接続を行うAllJoynやThread、日本国内のHEMS用標準規格となったECHONET Lite、スマートフォンを中心にウェアラブルなどの小型機器を接続するHomeKit、機器やスマートフォン、そしてクラウド間をつなぐWeaveが発表されています。

ほかにも、通信関連団体を中心として機器を管理・接続する共通プラットフォーム「oneM2M」規格の標準化も行われています。ただし、これらは対象範囲や参加している団体、主な業界が異なるケースも多く、規格のフラグメント化が懸念されています。そのため今後は、oneM2MとAllJoynが協力関係を築いたように、連携や統一も今後必要になると考えられますが、これはWoTが目指すところであり、解決できる問題の1つだと考えています。これ以外にも、相互接続のための規格だけでなく、機器を組み合わせて動作させることを目的にしてIFTTTやYahoo! JAPANのmyThings、Gluinといったサービスが提供・提唱されています。

これらの機器や情報を接続・集約した後のビッグデータ解析などについて、注目を集めているのがAI分野で、特にディープラーニングが今"ホット"なキーワードとなっています。これまで人が介入していた学習プロセスが自動化されるようになり、抽象的な判断も可能になることで、人と同様の動きが実現できたり、人では抽出が難しい結果を膨大なデータから導き出したりすることが期待されています。身近なところではスマートフォンの音声認識機能がありますが、今後は人々の生活をアシストしたり、自動運転や医療、工場、農業と幅広い分野へ広がったりすることが期待されています。

○IoT/WoTの課題

ビジネス/コンシューマーの双方で多くの期待を集める「IoT/WoT」ですが、一方で課題も山積しています。前述の「プラットフォームのフラグメンテーション」もその1つですが、特に懸念されているのが「セキュリティ」です。

Web上の不正アクセスやマルウェア、ウイルスのニュースが頻繁に報道されていますが、IoT/WoTにおいてもこれらの悪質行為が起きる可能性は高いと考えられています。特に、情報だけでなく、自宅の鍵などの機器制御が可能になることを考えると、これまで以上に厳密なセキュリティが必要とされます。

そのためには、暗号化通信や、機器・利用者の認証、機器の"耐タンパー性"が重要になります。一方でセキュリティとコスト、操作の手間はトレードオフの関係にあるため、スマートフォンを用いて個人認証を行うなど、安全性と簡便性の両方を満たす方法が求められています。

セキュリティ以外にも、機器が増えることによるメンテナンスの複雑化も課題でしょう。初期設定や充電、電池交換などの操作、故障対応、ソフトウェア更新などは、一つ一つの機器で見るとあまり発生しませんが、数が増えることでその管理は煩雑になります。これらの管理を行うには、「遠隔での一括自動操作」や「低消費電力や室内無線給電」によるメンテナンスフリーへの取り組みが必要となります。

厳密には「課題」ではありませんが、ビックデータ処理やAI技術のさらなる高度化は必要不可欠な要素でしょう。クラウドサービスの技術革新によって処理能力は向上していますが、現状は「情報の見える化」や「遠隔操作」にとどまっています。人の動きを学習して処理を自動化したり、"見える化"にとどまらず、それらのデータに基づいて、病気の予兆をとらえられようになったり、より価値のあるデータを自動的に抽出したりといった機能が、今後のIoT/WoTの普及に向けて必要になるでしょう。

著者プロフィール

○小森田 賢史(こもりた さとし)
KDDI 商品・CS統括本部 商品企画部

モバイル通信(SIP, IMS)の高度化に関する研究開発、IEEE標準化活動を経て、オープンソース系OSを活用したスマートフォン端末の企画開発、IoT機器・プラットフォームの企画開発、新規商品企画を担当する。