今年も熱い戦いが期待される全日本フィギュアスケート選手権。ソチ五輪や世界選手権など、フィギュアスケートの取材を続けている三田アナウンサー(フジテレビ)が注目しているポイントについて語ってくれた。

 私がまず注目しているのは、3月に行なわれる"世界選手権の枠を誰が勝ち取るのか"。しかも男子は出場枠が「2」になってしまったので、より熾烈な争いになることは間違いありません。

 18歳の宇野昌磨選手や、経験豊富な無良崇人選手、去年の全日本のフリーで最高の演技を見せた小塚崇彦選手、そして、先日、NHK杯に続きグランプリファイナルでも世界最高得点を出した羽生結弦選手からも目が離せません。

 NHK杯は、記者席でフリーの演技を見たのですが、羽生選手が踊りきった瞬間、驚きと感動を通り越して、魔法にかかったような気分になりました。

 会場を見渡すと、涙するファンの方々がたくさんいらっしゃいましたし、外国人記者も「こんな演技は見たことがない!」と興奮して話していました。私自身も『とても素晴らしいものを見ることができた』と感じましたし、あの瞬間に立ち会えたことをずっと忘れないと思います。

 その演技後、羽生選手が「スケートカナダで思うような結果が出なかったから、そこから血の滲むような努力をした」と、話されていたことがとても印象に残っています。加えて、「今まで体験したことがないほど」「本当につらかった」という言葉が出てきたので、少し驚きました。

 というのも、羽生選手にはこれまで何度かインタビューさせていただいているのですが、どんなときでも周囲への感謝の気持ちや、常に前向きな言葉を口にする選手なので、羽生選手の口から「どれほどつらかったか」という話を聞くのは初めてだったからです。

「天性のセンスがある」「天才」と言われる羽生選手ですが、あれだけ見事な演技を見せる背景には、想像できないほどのたくさんの努力があるんだと、あらためて実感しました。

 羽生選手自身が「これからはこの得点が自分の壁になる」とおっしゃっていたとおり、今後は自分を超えるための戦いが始まるのだと思います。ブライアン・オーサーコーチは「この得点を超えるのはユヅルしかいない」と話していました。その瞬間を再び全日本選手権で見られたら......と期待してしまいます。

 一方、女子では、浅田真央選手の復帰が全日本に出場する選手にどんな影響を与えることになるのかに注目しています。

 2014年のソチ五輪で、浅田選手はショートプログラムでまさかの16位。そして、放心状態だったところから、あのすばらしいフリー。私はその演技をソチの現場で見ることができたのですが、そのときは、もう言葉はなく、涙しか出なかったです。「スポーツはこんなにも人の心を動かすんだ」ということを気づかせてくれた、思い出に刻まれている演技です。「自分を信じて頑張る」と力を出し切った浅田選手は、本当に強いアスリートだと思いましたし、あの涙は今もはっきり覚えています。

 ソチ五輪シーズン終了後、いったん競技を離れた浅田選手は、今シーズンからの復帰を決意。その復帰記者会見で、いちばん心にグッときたのが「スケートが、試合が恋しくなった」というフレーズです。「恋しかった」という言葉を選んだ浅田選手のことを、もっと好きになりました。

 浅田選手は、1年半リンクを離れている間にいろんな経験をして、いろんな人に出会って、さらに成長を遂げたのではないかと思います。そんな浅田選手の"真央ちゃんスマイル"を全日本でも見たいですよね。

 昨年、浅田選手がいない全日本のリンクで台頭してきた成長著しい若い選手たちは、浅田選手に憧れてスケートを始めた世代だと思います。そういった選手たちが実力をつけてきた今、浅田選手とどんな戦いを見せてくれるのか楽しみです。

 また、私が今まで取材してきた全日本で印象に残っている演技のひとつが、2013年に優勝した鈴木明子さんの演技です。現役最後のシーズンと決めていた鈴木さんは、ショートの曲に『愛の讃歌』を選んだのですが、その理由が「長久保(裕)コーチがこの曲を好きだから」と聞いて、胸が熱くなりました。個人的に、とても好きなプログラムです。

 鈴木さんは現役時代、信頼し合っているからこそ長久保コーチとぶつかることも多く、ずっと「明子の演技では泣けない」と言われていたそうです。それが、2013年のこの全日本で初優勝を飾ったとき、「初めて明子の演技で泣けたよ」と声をかけてもらったとおっしゃっていました。そういう師弟関係も、フィギュアスケートの見どころのひとつだと思います。今年の全日本でも、鈴木明子さんと長久保コーチのような「選手とコーチの絆」に注目したいと思っています!

profile
三田友梨佳
東京都出身。フジテレビアナウンサー。2011年入社。現在の担当番組は、『直撃LIVEグッティ!』(毎週月〜金曜13時55分〜)、『とんねるずのみなさんのおかげでした』(毎週木曜21時〜)、このほかスポーツ各種中継。12月25日から始まる全日本選手権も担当予定。