さくらももこ先生の答えがどこか深い! 23年ぶり『映画ちびまる子ちゃん』に見る「出会いと別れ」
日曜日の夕暮れ時は、いつだって少しだけ気だるい気分になる。
やなせたかし先生の答えもどこか深すぎる。「アンパンマン」の気になる謎
その気だるさの正体は「休日を満足に過ごせなかった後悔」だったり、「明日のテストをサボりたい」という逃避願望だったりするわけだが、要するにぼくらは終わりゆく休日にうまく「バイバイ」を言えないのだ。
日曜18時は、一週間のうちで最もフワフワとしたあいまいな時間帯だ。何かを始めるには少し遅く、今日を諦めるにはまだ早い時間。
ぼくはそんなとき、やみくもに足掻くことをやめて、『ちびまる子ちゃん』を観る。
ぐーたらでおバカで思い込みが激しい主人公・まる子は、仮病を使って学校をサボろうとしたり、気のいい祖父をそそのかしたりしては、いつも母親に叱られている。
そんなまる子の失敗をアハハと笑っていると、彼女同様に ぐーたらな日曜日を過ごしてしまった自分の後悔も、許して笑い飛ばせる気持ちになってくるから不思議だ。
子どものころのぼくにとって、『ちびまる子ちゃん』とは、そんなアニメだった。
言わずと知れたことだが、あのぐーたらな少女にはモデルがいる。ぼくが大人になった今も、その人は漫画家として誰かの日常を温め、励まし、肯定し続けている。
そう思うだけで、なんのドラマもなく終わろうとしている平凡な日曜の夕暮れ時も、「捨てたもんじゃない」と思えるのは、ぼくだけだろうか。
前置きが長くなったが、かつて ぐーたらな少年だったぼくはライターになり、『ちびまる子ちゃん』の作者であるさくらももこ先生にFAXインタビューをさせてもらう機会をいただいた。
諸々の事情もあって質問の数は6つのみに絞ったが、さくら先生のほっこりとした温もりが感じられる一問一答になったと思う。
これから映画を観に行こうと思っている方はもちろん、『ちびまる子ちゃん』を一度でも目にしたことがある方には、ぜひとも読んでいただけるとうれしい。
ウレぴあ総研→さくらももこ先生へ
FAX一問一答
Q1:この度は『ちびまる子ちゃん』アニメ放送25周年おめでとうございます! 『映画ちびまる子ちゃん』の公開は23年ぶりとなりましたが、さくら先生が映画スタッフの方々と共に作品を作り上げていく中で、漫画の執筆とは違った創作の面白さや難しさを感じることはありましたか?
A1:私は映画の脚本と歌に関わらせていただきましたが、多くの方と関わるのは大変だけど面白いと感じています。
それぞれの力いっぱいを見るわけですから、漫画でコツコツ描いているよりすごいですねぇ。
劇場公開に先立ち、『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』の原作漫画は、『りぼん』で短期集中連載されていました。すでに原作を読んだ方も、映画ならではの演出には要注目ですね。
Q2:今回の映画では、海外からホームステイに来た子ども達とまる子達が、互いの文化の違いに少し戸惑いながらも、距離を縮めていく姿が印象的でした。プライベートでは旅好きであることも知られているさくら先生ですが、過去に滞在した国や都市での忘れられないカルチャーショック体験があれば教えてください。
A2:旅を好きそうに思われがちですが、実は家が好きなんです。
おなじみの物が何でもあるし清潔だから。
でも、よその国にはその国なりのカルチャーショックは多いですね。
インドとかすごくて、帰りのヒコーキの中でドラマの内容を思いついたくらいです(笑)。
旅行好きなイメージが強かったさくら先生ですが、意外にもご自宅で過ごす方がお好きなのですね。……言われてみれば、まるちゃんのインドアっぷりも筋金入り。せっかく遊びに誘いに来てくれたたまちゃんに、仮病を使ったこともありました(単行本12巻「まる子 寒さに負ける」参照)。
先生がインドで体験した「すごさ」は映画にも反映されているのでしょうか……乞うご期待です。
Q3:これまでも『ちびまる子ちゃん』では、まる子の数々の出会いと別れが描かれてきたかと思います(南の島のプサディ、『わたしの好きな歌』のしょう子お姉さん、クラスメイトの大野くんなど)。子ども時代の別れは、ともすると「もう二度と会えない(かもしれない)」という切なさもはらんでいますが、「出会いと別れ」を作品の題材として扱う背景には、やはりさくら先生ご自身の少女時代の原体験があるのでしょうか?
A3:少女時代というより、一生そうだなという思いです。
なるほど、「一生」なのですね。さくら先生は今でもどこか『ちびまる子ちゃん』なのかもしれません。
Q4:今や国民的人気作品になった『ちびまる子ちゃん』ですが、漫画家としてデビューした当時のご自分に何か声をかけるとしたら、どんなことを言ってあげたいですか?
A4:いろんな事があってもがんばれ、ですかね。
まだがんばってるとこですが(笑)。
『ちびまる子ちゃん』の原作には、大人になったまるちゃんが同窓会にいくお話(単行本『ちびまる子ちゃん-大野君と杉山君-』収録)や、まるちゃんが大人になった自分に会いに行くお話(単行本12巻収録)もあります。過去の自分に送るエールのようで、とてもステキなお話です。未読の方はぜひ。
Q5:さくら先生は、漫画家、作詞家、エッセイストと、これまでさまざまな分野でご活躍されてきたかと思います。仕事、プライベート問わず、これから新たにチャレンジしようと思っていることはありますか?
A5:特にこれだーという目新しいものは無いのですが、これからも思いついたことをやっていきたいです。
最近では、ラジオパーソナリティーとしてもご活躍中のさくら先生。思いついたことに何でもチャレンジするご姿勢が、時代を経ても『ちびまる子ちゃん』が色あせさせないのでしょう。
Q6:最後に、映画を楽しみにしている『ウレぴあ総研』の読者にメッセージをお願いいたします。
A6:ウレぴあ総研の読者の皆様に、喜んでいただける映画になっているといいなぁと思います。
どうぞよろしくお願いします。
『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』は全国東宝系にて12月23日より公開。筆者同様、かつて「まる子だった」そこのあなたにも、「あのころ」を思い出しながら観ていただきたい作品だ。
《作品情報》
『映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』 12月23日(水・祝)ROADSHOW
原作・脚本:さくらももこ
監督:郄木 淳
まる子:TARAKO ナレーション:キートン山田
スペシャルゲスト/アンドレア:中川大志 シン:劇団ひとり ネプ:パパイヤ鈴木 ジュリア:渡辺直美 シンニー:ローラ
オープニング曲:「おどるポンポコリン(映画スペシャルバージョン)」 大原櫻子 (ビクターエンタテインメント)
挿入歌:「キミを忘れないよ」大原櫻子(ビクターエンタテインメント)
エンディング曲: 「おーい!!」ウルフルズ (ワーナーミュージック・ジャパン)
製作:フジテレビジョン 日本アニメーション 東宝 博報堂DYメディアパートナーズ 読売広告社 FNS27社
アニメーション制作:日本アニメーション
配給:東宝