今期深夜アニメランキング1位(gooランキング調べ)をゲットし、ますます絶好調の新シリーズ『ルパン三世』。第12話「イタリアの夢 後編」は、いよいよ第1クール最終回ってなもんで、これまで張り巡らされてきた伏線がどのように回収されるか、さっそくお手並み拝見。


第1話でルパンと結婚式を挙げたじゃじゃ馬富豪令嬢・レベッカには本当に愛した男がいた。しかし、その男――天才脳科学者・浦賀航は、「イタリアの夢」という言葉と解読不明の奇書を残して謎の死を遂げていた。

“愛するワイフ”レベッカのために奇書の謎を解き明かそうとするルパン。複雑怪奇な暗号を解いて「ようこそイタリアの夢へ」という言葉に出会った瞬間、ルパンは奇妙な夢の世界に入り込んでしまう。謎の巨大生物が跋扈する夢の世界でルパンを待っていたのは、浦賀航と若き日のレベッカだった。

レベッカに「リベルタスに生きろ」と語りかける浦賀。リベルタスとはラテン語で“自由”を意味する。

「作られた世界の中に自由はない。
自分の手で世界を作る自由、それがリベルタスだ」

レベッカが去った夢の中で、ルパンは直接浦賀と言葉を交わし、奇書の謎を聞かされる。奇書には浦賀の脳や人格を構成するデータがくまなく記されており、暗号を解読した人間には一時的に記憶を植え付けることができるのだという。さらにこの研究を利用すれば、他人の記憶や考えを自由に操ることも可能になる。イギリスの諜報組織、MI:6が「イタリアの夢」を狙っていたのもこのためだ。

浦賀は自殺したことにされていたが、実際はMI:6による謀殺だった。MI:6はイタリア国内で「イタリアの夢」を真似た人体実験も繰り返していた。夢の中で浦賀はルパンにレベッカのことを託し、再び殺される。

夢から戻ったルパンは、レベッカに浦賀と会ってきたことを告げ、隠されていた浦賀の研究室を燃やしてしまう。

「イタリアは愛の国なんだろ?
愛する人が去っても夢の中で会える。浦賀ってヤツは本当にロマンチストだよなぁ」

しかし、そこにルパンをつけ狙うMI:6の最強エージェント、ニクスがやってきた。レベッカを逃がし、ニクスと対決するルパン。追い詰められたルパンだったが、高周波発生装置を使って形勢逆転! 超感覚を持つニクスは、ネズミと同じように高周波が苦手だったのだ。ところが2人まとめてMI:6に狙撃され、捕獲されてしまう。

MI:6のもとにルパンの身柄を引取りにやってきたのは銭形警部だった。今後一切、MI:6の活動について詮索しないという条件で、ルパンを引き渡される。つまり、ルパンは逮捕されたということだ。

「MI:6まで本気にさせちまって、お前いったい何を盗んだんだ?」
「今回は仕事抜きさ」
「ふん、お前が仕事抜きだと?」
「バカやっても、ちっとは価値のあるもの手に入れたんだぜ」
「ほう。で何を?」
「決まってんだろ、愛だよ」

レベッカと浦賀の愛を盗んでしまったルパン


複雑な設定を使って一気に伏線を回収した第12話。「イタリアの夢」の謎解きを行いつつ、浦賀とレベッカの関係を掘り下げ、ルパンとニクスの対決まで済ましてしまうのだから、駆け足気味だったのは仕方のないところ。ここでも伏線をざっとおさらいしてみよう。

10話でレベッカが赤ワインをけっして飲まなかったのは、「いつか最高の赤ワインを飲もう」と浦賀と約束していたから。レベッカが髪をカラフルに染めてゴシップクイーンになり、盗みにスリルを求めていたのは、浦賀の「リベルタスに生きろ」という言葉を彼女なりに実行してきたものだ。

小さなポイントだが、11話冒頭でレベッカが喫っていたタバコは「アークロイヤル」という銘柄で、パッケージには錨(いかり)がデザインされているもの。これは「浦賀航」という名前とは“海つながり”(「ルパン座トーク」より)。設定画によると、学生時代のレベッカはヒールつきのローファーを履いているが、これはレベッカの背伸びを表しているのだろう。

どれも浦賀とレベッカの絆の強さを表すエピソードだが、レベッカは浦賀が残した奇書を自ら燃やして過去と訣別、新たに赤ワインを自分でつくろうと決意する。ルパンがレベッカの愛をまんまと盗み出してしまったのだ。まさに「イタリアが愛の国であるならば、すべての愛は俺の手中にある」という冒頭のフレーズ通り。有言実行の男、ルパン三世である。

ルパンとレベッカとサンマリノをつなぐキーワード


今回の『ルパン三世』はイタリアを舞台にしているが、なかでも鍵になっているのが小さな独立国家サンマリノだ。レベッカはサンマリノの名家の令嬢であり、第1話でルパンとレベッカが挙式を行ったのも、第2話に登場するサッカーチームの本拠地も、浦賀の隠れ家があったのもサンマリノだった。

サンマリノの国旗には、第11話に登場した「3つの塔」と「LIBERTAS(リベルタス)」の文字が描かれている。4世紀初めに建国されたとされる世界最古の共和制国家がもっとも大切にしているのが、リベルタス=自由という言葉なのだ。ちなみにサンマリノ最古のサッカーチームの名前もACリベルタスである。

“自由”とは『ルパン三世』の象徴だ。2015年初めに行われた宝塚雪組公演『ルパン三世 ―王妃の首飾りを追え!―』の脚本と演出を務めた小柳奈穂子は、ルパンの魅力を国境、法律、常識などあらゆるものから自由な点だと指摘している(「ベルばらファンも必見。宝塚雪組公演「ルパン三世」を観てきたレポ」)。ルパン、レベッカ、サンマリノをつなぐキーワードがリベルタス=自由という言葉なのである。

なお、国民的歌手・三波春夫が歌った「ルパン音頭」と、『あしたのジョー』などで知られる出崎統が監督を務めたTVスペシャル『ルパン三世 バイバイ・リバティー・危機一発!』でルパンが盗み出したニューヨークの自由の女神像は、ローマ神話に登場する自由の女神・リーベルタースを表したものだったりする。

ルパンが迷い込んだ夢の世界は、絵コンテ、演出を担当したコバヤシオサム(『BECK』など監督)が背景画をすべて描いたもの。寝言を言うルパンを見て、不二子が「ルパンは夢を見ないんじゃ……」と驚くが、これは映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』で登場した設定。複製人間マモーによる分析の結果で、それを目撃していたのは不二子だけだから、不二子しか知らないルパンの特徴ということになる。

また、ラストでの銭形警部とルパンの会話は、宮崎駿監督の『ルパン三世 カリオストロの城』で銭形とクラリスが交わした有名なセリフ「ヤツはとんでもないものを盗んでいきました……あなたの心です」の変奏とも言える。このシーンのBGMは『カリオストロの城』でも使われていた「ミステリアス・ジャーニー」だった。このあたりは、スタッフの『ルパン三世』という作品全体への愛情の表れだろう。

さて、今夜放送の第13話は銭形警部に逮捕されたルパンが脱獄をはかる「ルパン三世の最期」。『ルパン三世』で脱獄ものといえば、TV第1シリーズの傑作回「脱獄のチャンスは一度」を思い出すファンも多いはず。新シリーズのスタッフがどうやって乗り越えていくかに大注目だ。

そしてもう一つ、今夜は『ルパン三世』の音楽の生みの親、大野雄二による「ルパン三世コンサート〜LUPIN! LUPIN!! LUPIN!!!2015〜」が中野サンプラザで開催される。ニコニコ生放送でも特別番組「大野雄二&ルパンティックファイブ 結成10周年記念ルパン三世コンサート独占生中継」が放送されるので、こちらもチェック。クリスマス・イブにルパンから粋な音楽のプレゼントだ。チャンネルは決まったぜ。
(大山くまお)