【日本サッカー見聞録】皇后杯決勝は澤のラストゴールが見たい!

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▽23日は久々に皇后杯を取材するため、等々力に足を運んだ。澤が今シーズン限りでの引退を表明したからだろう。スタジアムには5000人を超えるファンが訪れ、試合後も澤を“出待ち”する人々がバスの周りを取り囲むなど、いかに彼女が愛される存在か痛感した。

▽試合後は、仙台と神戸の選手がユニホーム姿のままプレゼント交換のためロッカールームを訪れている。てっきり翌日はクリスマス・イブのためのプレゼント交換かと思い、普段なでしこリーグを取材しているフォトグラファーに聞いたところ、これは毎回見られる光景だと教えてくれた。

▽神戸や新潟、仙台、湯郷など地方のチームの選手は、代表でもなければなかなか会う機会がない。そこで試合後は親しい選手同士、互いにプレゼントを持ち寄って交換するのが習わしとなっているそうだ。女子サッカーならではの、微笑ましい光景でもあるが、ユニホーム姿のままだと風邪をひいてしまわないかと、つい心配になってしまった。

▽皇后杯準決勝の第1試合は、今シーズン無冠の神戸が大野と中島のゴールで仙台を退け、27日の決勝へ進んだ。ボランチとして90分間フル出場した澤は、攻撃を20歳の伊藤美に任せ、守備のバランサー役に徹していた。仙台のカウンターをケアしつつ、押し込まれれば守備ラインに入って近賀らのカバーに回っていた。彼女自身、世代交代を感じてのプレーだったのかもしれない。

▽それでも39分、右CKからの先制点の場面では、ニアサイドに走り込んで相手のマークをひきつけ、高瀬のフリックから大野の先制点につなげた。CK時に澤がニアサイドに飛び込んで来れば、やはり2011年W杯決勝のアメリカ戦を思い出さずにはいられない。それだけ、いまだ怖い存在と言えるだろう。

▽ただ、試合後の澤は、すっきりした表情ながら寂しさも感じさせた。

「残り1試合、ちょっと寂しいけど自分で決めたこと。最後はこのメンバーで、笑顔で終わりたい。結婚してから点を取ってないし、全然取れてない。コンディションを整えて、身体と心を休めて、この1戦だけに集中して全力を出し切りたい。最後の1試合と思ったら、最大の力を出せるのではないでしょうか」

▽決勝戦の相手は、昨年の覇者で今シーズンのリーグを制した日テレをPK戦の末に破った新潟だ。第2試合が始まる前、「澤の引退は、彼女が育ったベレーザの優勝で飾りたい」と話していた日テレ関係者の願いが叶わなかったのはちょっと残念。

▽泣いても笑っても澤にとって残り1試合。こうなると見たいのは、澤のラストゴールであることは言うまでもない。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。