「出版不況」とずっと言われており、特に雑誌が売れないと言われている。もはや廃刊、休刊はあたりまえ。最近では紙の発行をやめてウェブに移行するというのも流行っている。11月には鳴り物入りで創刊された女性誌『DRESS』が月刊誌としての発行を休止し、ウェブに移行すると発表された。


『DRESS』編集長の山本由樹氏は発行休止にあたり、手記にて「雑誌の時代が終わってしまったことへの否定できない諦観」があると述べていた。「紙はコストがかかりすぎる『儲からない』メディア」とも断じている。

はたして、紙の雑誌はもはや時代遅れの無用の長物なのか? コストがかかりすぎて利益が見込めないものなのだろうか?

そんな中、『This!』(小学館)という雑誌が新創刊された。発売日は、奇しくも『DRESS』休刊発表とほぼ同じ、今年の11月。まさに「儲からない」と言われている紙の雑誌である。

しかも、特定の年代に向けた女性ファッション誌でもなければ、グルメカタログ誌でもない。キャッチフレーズは「全く新しいカジュアルファッションマガジン」。なんだかつかみどころがないが、つまり雑多なものを詰め込みました、ということなのだろう。

創刊号の表紙を飾っているのは「水曜日のカンパネラ」のコムアイ。同じく11月に発売された『TVブロス』のカルチャー部門が独立したムック『Culture Bros.』(東京ニュース通信社)では表4(いわゆる裏表紙)だったコムアイだが、こちらでは堂々と表紙である。

第1特集は「進路」。進研ゼミか? とも思うが、一種の“おもしろい人”カタログになっており、コムアイのロングインタビューをはじめ、「あこがれの仕事につく100人の図鑑」では、ラップシンガーのDAOKOや漫画家の花沢健吾、『火花』の編集者・浅井茉莉子、『水曜日のダウンタウン』プロデューサーの藤井健太郎、音楽プロデューサーのtofubeats、芸人のキングオブコメディ、クリープハイプの尾崎世界観などがアンケートに答えている。

ラインナップは、いわゆるタレントやアーティスト、クリエイターが中心だが、生態学者、通信社記者、JAXA開発員、マーケター、プレス、フローリストなどの一般人も混じっているところがミソ。

第2特集は「こどものまま、大人になる方法」。注目の演劇団体「マームとジプシー」を主宰する藤田貴大にスポットを当てた内容だ。

ほかに、編集者・作家の末井昭と女優のひよが若くして死んだ作家の遺作を紹介する「まえのひ。」、漫画家の清野とおる、社会学者の古市憲寿、イラストレーターのなかむらるみが赤羽を歩くながら「友達の境界線」について語り合う座談会、歌人の穂村弘によるコラム、鳥飼茜、まんしゅうきつこ、今日マチ子による連載コミック、今田耕司がおすすめマンガを紹介するカルチャー情報コーナーなどの記事が並ぶ。ちなみに今田が一番ハマっているのは『3月のライオン』なんだそうだ。

「真面目っぽい雑誌ばかりであまりおもしろくない」


誌面はとにかくカラフルでガチャガチャ。どこまでが特集の境目かもよくわからないし、そもそも特集の枠組みもふわっとしていてとらえどころがない。一時期流行った「ガーリー」でもないし、「サードウェーブ」な感じもない。「サブカル」は便利な枠組みだけど、たぶん死語だと思うから使わないほうがいい。雑な感じがするから、堂々たる雑誌だと思う。

だいたいカルチャーマガジンってのは、こんな風に雑でガチャガチャしているものだった。『relax』(マガジンハウス)や『クイック・ジャパン』(太田出版)なんかも創刊の頃はそうだったし、『BRUTUS』のような内容に路線変更した『Title』(文藝春秋)やあっという間に休刊した『KING』(講談社)なんかもガチャガチャしていた。最近では『ROLA』(新潮社)だって創刊号は賑やかだったし、古くは『i-D JAPAN』なんて雑誌もあった。版元どこだっけ?

『This!』の編集長を務めるのは、『おじさん図鑑』『あたらしいみかんのむきかた』などでヒットを飛ばした小林由佳氏。ずっと雑誌が好きで、本やマンガを読まずに雑誌ばかり読んできたという。

「最近は真面目っぽい雑誌ばかりであまりおもしろくないなと思っていて。読んで笑ってしまうような雑誌があまりないし、雑誌を読んでワクワクする感じもないなという印象があって。だったら、せっかく出版社にいるんだから作ってみようかなと思った」(「雑誌が売れないって言うのはもう飽きた。売れる雑誌を作る」。3人の編集者が『This!』を創刊した理由)。

これが創刊の動機だ。まったく同感。広告主の言いなりで雑誌つくってばかりいたら、そりゃ真面目な内容になるよね。

「雑誌が売れないって言うのはもう飽きた。売れる雑誌を作る」と宣言したという小林氏。「紙の雑誌は儲からない」という問題提起に対しては、有名女優を表紙にしたファッション誌より、無名女優を表紙にしたカルチャー誌のほうが売れることもある、というわりとざっくりした分析を行っている。

今後は年2回刊というゆっくりしたペースで刊行する予定とのこと。現時点での売上部数は知らないが、ぜひとも「雑誌の時代が終わってしまった」みたいなムードをひっくり返すような、ガチャガチャした雑誌をつくり続けてほしいものである。
(大山くまお)