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東京大学は12月22日、メタホウ酸銅という青色の結晶が、ある向きに進む赤外光に対して透明なのに対して、逆向きに進む同じ波長の光に対しては不透明であることを発見したと発表した。

同成果は、東京大学大学院 新領域創成科学研究科 物質系専攻 有馬孝尚 教授、東京大学物性研究所 松田康弘 准教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻博士後期課程2年 豊田新悟 氏らの研究グループによるもので、来年1月に米科学誌「Physical Review Letters」に掲載される予定。

物質の中を進むある波長の光は通常、光の進む向きを反転させても同じ割合だけ吸収されるが、近年この一対の光の吸収に差が生じる「方向二色性」が存在することがわかってきた。これまで発見された最大の方向二色性は、メタホウ酸銅中のものであり、一対の光の吸収の強さの比は最大で3倍となっていた。この値が無限大となれば、一方向に進む光にとっては透明だが、逆向きに進む光にとっては吸収体となる場合が実現することを意味する。

同研究グループは、メタホウ酸銅の中を進む光の吸収が、温度、磁場、光の伝搬方向にどのように依存するかを定式化。東北大学 金属材料研究所附属 強磁場超伝導材料研究センターにおいて、磁場を与えることによる光吸収の変化を実測し、物質パラメータを決定したうえで、電気が原因となる光の吸収と磁気が原因となる光の吸収が足し合わせられたり打ち消しあったりする効果に着目。非常に強い磁場のもとでは一方向透明現象が生じる可能性を理論的に予測した。

そこで、メタホウ酸銅を-269℃に冷却したうえで一瞬だけ強い磁場を作用させて、光の吸収を測定したところ、波長879nmの赤外線がメタホウ酸銅の結晶のある方向に進むとき、53テスラ磁場のもとで吸収がなくなることを発見した。一方で、光の進行方向を逆転させると、同じ波長879nmの光を強く吸収することがわかった。この結果は、光の一方向透明現象が実現できたことを意味する。

研究グループによると、今回の一方向透明現象は、低温強磁場下という特殊な条件で生じるため、そのまま応用につながることはないとしているが、今後の研究の進展によって、特殊な光学素子として、光通信、光コンピューター、マジックミラーに変わる特殊な窓材などへの応用が期待される。