好評のうちに最終回を迎えた『下町ロケット』(TBS、毎週日曜21:00〜)。最終回放送前日と当日の12月20日、TBSはまさに「下町ロケットまつり」ともいうべき様相を呈していた。まず前日の午前中、『王様のブランチ』に「今日の朝5時に収録を終えた」という佃公平役の阿部寛とともに財前部長役の吉川晃司が登場。司会の谷原章介がドラマの展開について熱っぽく語っていた。20日昼間には後半の「ガウディ編」をまとめた特番を2時間放送。そして夜7時からの2時間で全10話を振り返る特番を流した。高島彩演じるジャーナリスト・咲間は先週から登場したキャラにも関わらず、この2日のまとめの中で一躍超重要キャラとして印象付けられた。
余談になるが、佃製作所経理係長・迫田役の今野浩喜は同日、「押切もえのTOKYO DISCOVERY」(文化放送)にキングオブコメディとして出演。特集の駄菓子グランプリにちなんで「下町ロケット」とは何の関係もない相方の高橋健一が「駄菓子界の阿部寛」と紹介されるという一幕もあった。いずれにせよ、「下町ロケット」が、局を超えて大きく注目されているドラマであったことには間違いない。


佃公平、最後の大演説! 阿部寛が小泉孝太郎を打ち負かす


大型動物の実験へと駒を進めた「ガウディ」。一方、臨床治験第1号の患者が死亡した「コアハート」のバルブに疑念を抱いた佃たちは咲間とともにサヤマ製作所の真実を追求すべく奔走する。サヤマ内でも疑念が渦巻いていた。中里(高橋光臣)は現行バルブの実験記録を確認して安心するが、横田(バカリズム)はそのあまりにもきれいすぎる実験データに疑いを持ち、咲間にそのデータを横流しする。月島(福田転球)が証拠隠滅をしていた姿に遭遇した中里は真実に気づき、月島を説得して椎名(小泉孝太郎)がデータ偽装に関わっている証言を引き出す。一方、佃はこのデータが偽装であることを証明すべく、帝国重工に協力を依頼。偽装である確信を得た財前は、今一度ロケットエンジンバルブの供給について考え直すよう、会議で社長に進言する──。

ラスト30分の時点で繰り広げられた佃VS椎名の演説合戦はさすがの見ごたえだった。椎名の「60%を高いと思いますか? 低いと思いますか?」という話は詭弁でしかなかったが、一瞬「それも一理ある」と思わされる説得力を持っていた。しかし佃が「1%だから死んでもしかたないなんて思う人間はどこにもいませんよ。だから我々は常に100%を目指して努力をするんだ」と完全に論破し、さらに「あんたとはこんな話がしたかったんじゃない」と寂しげに去る。どんな時も技術者としての夢を追い続ける佃を総括するシーンだった。

ガウディ編で最も強い印象を残したのはやはり椎名役の小泉孝太郎だろう。後半全編を通じて冷徹な悪役を見事に演じきっていた。ただ、最終回でいきなり彼の生い立ちが明かされ、貧しい時期を経験したことが明かされた部分だけは少し残念だった。椎名が発する「あんたは炊き出し一杯のために長時間歩いたことがあるか」という言葉には、端正すぎる風貌も災いし思わず「この人一番なさそう……」と感じてしまったのだ。

佃品質、佃プライドを体現する意外な功労者


そしてエンディング、ガウディ治験第一号の手術から3年後。第5話以来となる、佃製作所製のバルブを搭載したロケットの発射シーン。見守る面々の中には帝国重工に就職を果たした娘・利菜(土屋太鳳)の姿もあった。正直「またロケット飛ばすのか!」とも思ったが、ドラマとしては手術シーンで「ガウディの治験成功!」で終わるのではやや派手さに欠ける。やはり見た目のカタルシスがぜんぜん違う。「やっぱいいよなあ、ロケットは!」の佃の言葉に頷かざるをえなかった。

そこにヒゲ面、汚れた作業着でずだ袋を持って現れた椎名には驚いた。正直、「刑期を終えて出てきました!」もしくは「技術者をやめて砂漠に木を植えています!」とでも言いそうな風貌。もし録画してある方は是非このシーンを見直してほしい。佃の面々が喜びを分かち合っている中、けっこう遠くから歩いてきている姿がちょっと面白い。それにしても、この風貌なら炊き出しのために延々と歩いていてもおかしくない!  最後に納得させてくれた小泉孝太郎に「意外と汚い風貌も似合うで賞」を捧げたい。

最後になるが、個人的には佃製作所の若手社員・川本役の佐野岳にも拍手を送りたい。決して大きな見せ場があったというわけではない川本。しかし彼は「下町ロケット」サイト内の「佃製作所 日本の技術を支えるイケメン日誌!」という投稿コンテンツの中、他のメンバーが概ね投稿数10前後の中、45件も投稿しているのだ。11月11日付からは8日連続更新し、謎の木彫りの置物を通じてロケット発射をレポートするという凝りよう……。毎日の地道な積み重ねがきっと花開く、彼こそが佃イズムの継承者だ!
(釣木文恵)