行使した場合、残留を認めないのは選手への圧力


 12月18日、日本野球機構(NPB)と日本プロ野球選手会の事務折衝が行われた。その中で選手会側は、フリー・エージェント(FA)権を行使した選手の残留を認めないという方針を、球団が公表しないよう正式に申し入れた。
 FA権は選手の権利であり、それを行使した場合に残留を認めないというのは、選手への圧力となり、フェアではないという意見が多かったからだ。

 実際、千葉ロッテの今江敏晃が11月10日にFA権を行使する会見を開いた際も、入団から14年プレーしたチームのことに話題が及ぶと涙を流した。
 その姿は、権利を行使すればチームに残れないという状況の中で悩み、葛藤があったことを物語っていた。

 だが、先に書いた事務折衝の席でも、NPB側で出席した阪神の四藤慶一郎球団社長は、各球団の裁量でやっていることであり、基本的に問題はないとの認識を明らかにしている。1993年のシーズンオフに導入され、すでに23年目を迎えているFAだが、こうした問題は導入当初からあるものの、具体的な解決案は示されていない。

「難しいことではないと思う。要は、ドライな契約社会のアメリカと、義理と人情を大切にしてきた日本とのとらえ方の違い。それをフォローするシステムにすればいいだろう」

 自身も1993年にFA権を行使して中日から巨人へ移籍した落合博満は、その当時から日本におけるFA制度のあり方に対して持論を展開している。

FA権を取得したら、自動的に行使とする


「メジャー・リーグ(MLB)でFA権を取得した選手は、ほぼ100%行使するでしょう。せっかく得た権利をなぜ使わないの、というアメリカ社会では、FA権を行使するのに何も迷う要素はないし、批判も受けないからね。でも、日本に導入された際、球団フロントの中に『育ててもらった恩を仇で返す制度』という人がいたくらい、義理と人情を大切にしてきた日本の社会では馴染みにくい制度だった。だから、定着させるためには自分で宣言させる形ではダメ。FAになる要件を満たしたら、全員が権利を行使したことにすべきだと思う」

 つまり、FA権を取得したら、同時に行使したことにする。オートマティックFAである。そして、NPBから該当する選手の氏名が公示され、定められた日から全12球団と一斉に交渉できるようにする。このシステムの利点は、選手が移籍したいのか残留したいのかという意思を示さなくても、獲得を希望する球団の話を聞けることだ。もちろん、要件を満たした全選手がFAになるのだから、行使した選手の残留を認めないという方針を球団側が打ち出すこともできない。

 さらに、実は球団側にとってもメリットがある。
 例えば、ある球団で35歳の遊撃手(A)がレギュラーだったとしよう。そこに20歳の遊撃手(B)が台頭し、現場はこのBを起用して大成させたいと考えている。だが、Aはキャプテン経験もあり、ファンからの人気も絶大で、トレードしたりすれば球団のイメージは損なわれる。加えて、何よりA本人に移籍する気がまったくない。こういう状況で、Aに代わってBを大抜擢できないのも日本の組織の特徴だろう。

 だが、Aが自動的にFAになれば、球団側はBを起用するという前提でバックアップとしての条件を提示すればいい。
 他球団が好条件を提示すればAは移籍を選択するだろうし、そうしたやりとりがいくつも続けば、NPBからFAアレルギーのような空気はなくなるはずだ。一定年数プレーした選手が得る権利から、一定年数プレーした選手が適正な評価を受ける機会へ。

 オートマティックFAは、もちろん利点ばかりではないにしろ、日本独特のFA観を変化させていくことはできるだろう。