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 11月10日に開催したMarkeZine Day2015 OSAKAの基調講演「スマホ、ネイティブアド…デジタル時代本格化に向けた広告主の課題と対応状況」では、大和ハウス工業の大島茂氏と、マンダムの上森奈美子氏を招き、パネルディスカッションを行った。特にスマートフォン広告における、PCがメインデバイスだった時との違いや難しさ、マス広告との使い分けの重要性、そして動画活用などの新しい取り組みについて話し合われた。

■スマホシフトにおける課題感

押久保:スマートフォンが普及してきた中で、ネイティブアドや動画広告なども登場し、投下先の考え方や配信先メディアも変わりつつある状況だと思います。まずは、PCがメインデバイスだった時代との違いを教えてください。
株式会社マンダム 上森 奈美子氏(写真右)
大和ハウス工業株式会社 大島 茂氏(写真中央)
MarkeZine編集部 編集長 押久保 剛(写真左)

大島:PCがメインデバイスだった時代のWeb広告は、例えば「ヤフーの純広告に出稿したら、これくらいアクセス数があるよね」と、媒体の効果も経験値からわかるので効果を考えて媒体を選んでいました。しかし、スマートフォンではアプリもあり広告メニューを探すのに苦労してますね。あとはブランドに悪影響な媒体に出稿されないよう、配信設定には特に気を使っていますが、スマートフォン、特にアプリでは、ブランディングにつながりそうな広告メニューが少なく困っています。

押久保:なかなか手厳しいですね。しかし、PC時代のヤフーのようなサイトに匹敵するようなところが全然見つからないというのは、そうかもしれません。上森さんはいかがでしょうか。

上森:担当ブランドのメインターゲットが若年層の男性ということもあり、70%以上がスマートフォンからのアクセスになってきています。しかし、スマートフォンでは自分の興味のあるコンテンツしか欲していない印象があります。SNS、LINE、ゲームアプリ、漫画アプリなどに広告を打ってもスルーされているのではと。消費者が広告を見なくなってきているというのは、PC以上に見て取れますね。

■細分化が進むことで起きるデメリット

押久保:それは物理的に小さくなったことと、よりパーソナライズなメディア上での配信ということに起因するのかもしれませんね。

大島:PCサイトの場合1ページに多くの広告枠が存在しました。つまり、出向先が取捨選択できます。一方、スマートフォンの場合枠自体が少なく、ブラウザ以外にもアプリという選択肢があり、考えないといけないことが増えている状況です。

上森:そうですね。DSPのように、いわゆる“枠から人へ”というところでセグメントして、それに合わせたクリエイティブも作成するといったこともできるので、細分化はかなり進んでいると思います。我々のようなマス領域でビジネスをしている者にとっては、細かすぎてやりきれない部分もありますね。

押久保:私もクライアントに取材する中で、リーチを優先するならTVCMなどのマス広告に投下した方が費用対効果は良いとよく聞きます。そのあたりはいかがでしょう?

上森:確かに、マス広告の方が費用対効果が良かったということもありますね。私たちはBtoCで、基本的には店舗に来店する消費者にアプローチしていくビジネスモデルなので、マスとデジタルの配分は重要ですね。

押久保:なるほど。その配分は、デジタルが上がってきている状況なのでしょうか?

上森:そうですね。徐々に投資を進めるとともに費用対効果を検証して、効果の出る媒体を見極めている状況です。

■NewsPicksの活用でPVを数百倍に

押久保:次のテーマとして、スマホシフトにあわせた広告フォーマットが出てきています。代表的なのはネイティブアド、あとは動画広告ですね。最初にネイティブアドについて、大和ハウスさんが「NewsPicks」を活用した取り組みをされているので、その話を伺います。

大島:「NewsPicks」は、スマートフォンアプリをメインとしたニュース共有サービスです。その中で今回活用したのが「ブランドカテゴリー」という広告商品です。通常ニュースアプリには、テクノロジーや政治経済といったジャンルがありますが、そういったカテゴリーを企業が作ることができます。

 弊社の場合は「資産マネジメント」というカテゴリーを作り、関連したコンテンツをピックアップしたり、弊社がコンテンツを作成し掲載しています。オウンドメディアでコンテンツ配信するのに比べ、PVが数百倍に上がりました。現在は、ここでいかに認知度を上げるかを重視しています。

押久保:今の段階での送客効果はいかがですか。また、コンテンツマーケティングは刈り取りまでの期間が長く、費用対効果を測りにくいといわれることもあると思うのですが、そのあたりはどうでしょうか。

大島:送客は想像以上の効果がありました。ただ、ここで直接商品紹介をしているわけではないので、顧客獲得はそこまで望めないと思っています。しかし、今回の目的は、住宅メーカーのイメージが強い弊社が、BtoB領域で土地活用や物流、医療介護施設など様々な事業をしていることを理解してもらうというのもあります。

■YouTube広告、パーソナライズド動画…新たな可能性

押久保:ありがとうございます。今度は動画活用に関してお伺いしたいと思います。上森さんはYouTubeのTrueView広告専用の動画をいくつか作成されていますが、背景を教えてください。

上森:この夏、キャンペーンの一環としてTrueView広告を活用したプロモーションを実施しました。その際、せっかく投下するのだから、絶対テレビではできないクリエイティブにしたいなと。そこで、TrueViewの特性に合わせて最初の5秒でみせてそのまま視聴完了する構成の動画を制作しました。リーチや購買への影響など、満足いく数字が結果に表れました。特にインクリメンタルリーチ(TrueViewによるリーチの増加分)は、年齢が若いほど高い傾向がありました。

押久保:マスとは全く違うもの、TrueView用にカスタムすることが有効なのでしょうかね。もう一つ、動画活用に関してダイワハウスでも面白い取り組みをしていらっしゃいますね。

大島:弊社が取り組んだのは、GWに住宅展示場への来場を促すため、メールマガジンにパーソナライズした動画を組み込んで配信しました(参考記事)。例えば、動画の中に表札が出てくる場面があり、その表札がメールを受信している方の名字で表示され、ナレーションの音声も変更されています。従来のメールに比べて開封率は1.9倍になり、60秒の動画ながら完全視聴までいった方は75%以上でした。60秒の動画の完全視聴がここまで高いのは、珍しい事例かと思います。
パーソナライズド動画メールのクリエイティブ例

 また、動画に関するアンケートを実施したところ、動画を見て展示場に行きたくなったか聞くと、「YES」と6割くらいの回答がありました。メールアドレスしかわからなかった会員に至っては、配信後に住所などの情報登録が多くあり、普通の施策よりもリードの取得単価が大幅に下がりました。

押久保:表札に名前が書いてあるのが、すごくいいアイデアだなと思いました。受け取った側が、自分事として捉えられますね。今回の取り組みはまさにパーソナライズの真髄といえるのではないでしょうか。

■マスorデジタルではなく、いかに連携するかが重要に

押久保:これらの面白い施策があっても、組織や人材の問題でできないということも起こりがちですが、マーケティング組織の変化も伺いたいです。

上森:弊社では、宣伝課の中にマスとデジタルそれぞれの担当がいて、お互いの領域はありつつ、ディスカッションしながら連携するスタイルです。

大島:弊社も宣伝部の中で、マスとデジタルのチームがそれぞれありますね。しかしマスかデジタルかではなく、現場にどうフィードバックするかが重要です。

 住宅やマンションの事業は、1回買ってくれた人が次また何回も買ってくれるということがありません。見込み客は、契約する度に減っていくわけです。一つの契約に対し、5〜10の見込み客が必要なので、常に新規開拓する必要があり、とても大変です。そこで、リード獲得や展示場への来場、資料請求の増加など目的に合わせ、マスかデジタルかを取捨選択しています。

押久保:マスとデジタルの連携は重要になってきているのですね。今後はデジタル領域に関して専門特化するのではなく、マスを含めた全体のプランニングも学んでいかなければならないという話も聞きます。

上森:そうですね。私自身、マスの担当者と連携するなかで、マーケティング全般のことを知っていないと、話についていくのが難しいなと感じることがあります。また、マス広告の手法の良し悪しを理解しないと、結果マーケティング施策全体のクオリティが下がってしまうので、日々勉強しないといけませんね。

■2社が語る、今後のスマートフォン市場を生き抜く戦略

押久保:ありがとうございます。最後に、今後の展望を教えてください。

上森:スマートフォンを軸にしながら、デジタル上でのリーチ獲得と、コンタクトポイントとしての価値の向上に取り組みたいです。その結果として、デジタルの中でのエンゲージメントを高めていければと考えています。

大島:BtoBの事業認知の拡大と、新規でリード獲得した会員を展示場などの現場に来てもらうことですね。その際に、スマートフォンでのエンゲージメントをどう築いていくかが現状課題となっています。様々な選択肢はあるものの、結果を出すのは難しいのでまずはチャレンジしていきたいです。

押久保:お話を伺い、スマートフォンやデジタル環境の浸透が進む中で、マスやデジタルかという話ではなく、課題を解決するために施策を取捨選択するフェーズになっていると感じました。ありがとうございました。

MarkeZine編集部[編]、東城ノエル[著]