何をやっても評価されない人ほど、水木しげるの「幸福の七ヶ条」に学べ
【石原壮一郎の名言に訊け】〜水木しげるの巻

Q:いったい何がいけないんだ! 自分としては一生懸命にやっているつもりなのに、付き合ってる彼女に「へたくそ」となじられた。会社でも、自分なりにがんばっているのになかなか結果が出なくて、上司に「お前はへたくそなんだよ」と言われる。どうすれば上手にやれるんだ。公私ともにテクニシャンになりたい! 彼女や周囲をうならせたい!(千葉県・24歳・営業)

A:憧れますよね、テクニシャンという響き。そして、激しくヘコみますよね、へたくそ呼ばわり。この相談にふさわしいかどうか、いまひとつ不安ではありますが、喫茶「いしはら」のカウンターには、30年ぐらい前から猫娘の名をほしいままにして町内の殿方を魅了しているタマ子さんが、のんびりくつろいでらっしゃいます。タマ子さん、いかがでしょう?

 ちょっと、人を泥棒猫みたいに言わないでよ。たしかに若いころは、逆上した女に「この泥棒猫!」って言われた場面は、何度かあったけどね。もともとは「ゲゲゲの鬼太郎」に出てくる猫娘に似てるねってことで、そう呼ばれるようになったのよ。

 鬼太郎って言えば、水木先生、亡くなっちゃったわね。悲しいわー。私、ずっとずっと好きだったのよ。昨日今日わいてきたようなニワカファンとは、年季が違うの。ここんところ、『水木さんの幸福論』(角川文庫)に載ってる「幸福の七ヶ条」がネットで話題になってるけど、この悩みは、七ヶ条を順番に噛みしめていけば解決するんじゃないかしら。

【第一条 成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない】

 ベッドの上でも仕事でも、そういうことにこだわりすぎてるんじゃないの。無駄にガツガツしてて、そのくせオドオドしている落ち着かない了見は、相手にも伝わるわよ。

【第二条 しないではいられないことを続けなさい】

 目先のウケを狙った姑息なアプローチや、義務感でやってるおざなりな動きは、相手にとっては不愉快なだけ。「しないではいられないこと」だけをすればいいのよ。

【第三条 他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追及すべし】

 他人との比較を基準にしてがんばったところで、本気にはなれないから成長もしないわよね。それはさておき、追及? 追求? ま、いいわ。水木先生か担当編集者に何か考えがあって、あえてこうしてるのよね、きっと。

【第四条 好きの力を信じる】

 体裁や常識に縛られていないで、自分の内側から湧いてくる「俺はこういうところをこうするのが好きだ!」という気持ちに従えば、きっと大丈夫。彼女も仕事相手も嬉しいはずよ。

【第五条 才能と収入は別、努力は人を裏切ると心得よ】

 ここでいう「才能」は自分の技量のことで、「収入」は相手の反応や結果ってことね。相手が喜ぶかどうか、結果が出るかどうかは、自分じゃどうしようもできない。最初っから成果や見返りばっかり求めてると、努力することが単なる苦行になっちゃうわよ。

【第六条 怠け者になりなさい】

 なんか最近、この言葉をどう解釈するかで「したり顔合戦」が繰り広げられてるけど、ほんとくだらない。みんな勤勉よね。「へたくそ」呼ばわりされたからってそれがどうした、鼻くそでもほじってなさい。そのぐらいの受け止め方でいいんじゃないの。いろんなことをまともに受け止めて、生真面目に対処しようとするから、悩みなんてものが生まれるのよ。

【第七条 目に見えない世界を信じる】

 ベッドの上でも会社でも、自分は自分にできることしかできない。あとは、目に見えない何かを信じて、身をゆだねるしかないのよ。そうね、さしあたって、次に彼女とコトに及ぶときは、電気を消して部屋を真っ暗にする効果を信じてみたらどうかしら。