習慣的な飲酒は百害あって…(shutterstock.com)

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 酒の飲み過ぎは肝臓によくない! では、膵臓、胃腸、心臓、脳、神経系、筋肉系、骨格系、ホルモン系、生殖系などへの影響はないのか?

 今回は、酒が、膵臓、胃腸、心臓に及ぼす甚大な障害やリスクを噛み砕いて話そう。

危ないのは肝臓だけじゃない!

 酒の飲み過ぎは膵臓も窮地に追い込む。膵炎や膵臓がんは、なぜ恐いのか?

 膵臓は、みぞおちから少し下の胃の裏側に左右に横たわるようにある。長さ15〜20cm、幅3〜4cm、厚さ2cm、重さ120g。淡黄色の細長く小ぶりの器官だが、きわめて重要な2つの働きをする。

 ひとつは外分泌機能。食べ物を消化する消化酵素のすい液(1日当たり約1.5ℓ)を作り、胆汁を混ぜ合わせつつ、炭水化物、タンパク質、脂質の3大栄養素を消化しやすい状態に分解し、十二指腸に送る。もうひとつは内分泌機能。血液中の血糖値を調節するインスリン、グルカゴンなどのホルモンを分泌し、血糖値を一定に保っている。

 膵炎は、酒の飲み過ぎによるすい液の分泌過剰、膵管の狭窄のほか、脂肪の消化を促す胆汁成分が胆嚢や胆管の中に固まる胆石症、高脂血症、薬剤の投与など、複合的な要因で起きる。

 症状は、腹部の激痛、下痢、吐き気、発熱などを伴う。急性膵炎と慢性膵炎があり、急性膵炎は死亡するリスクも高い。慢性膵炎は炎症が慢性化して外分泌腺細胞が破壊されるため膵臓の線維化が進んで発症する。また、内分泌機能も低下すると消化酵素やインスリンの分泌が低下するので、糖尿病の発症につながる。症状が進むと白っぽく水に浮く軽い便が出ることがある。

慢性膵炎、糖尿病から、膵臓がんになるリスクも

 慢性膵炎や糖尿病が恐いのは、膵臓がんの強いリスクファクターになることだ。厚労省の『2013年人口動態統計』によれば、膵臓がんの死亡者数は、3万672人。がんの総死亡者数36万487人の8.5%を占め、肺がん、胃がん、大腸がんに次ぐ第4位。とくに40歳代以降の増加が著しい。

 膵臓がんの主因は、酒の飲み過ぎ、喫煙、肥満などの生活習慣だが、とくにヘビースモーカーの発症率は、非喫煙者の2〜3倍。また、患者の約17%は糖尿病を併発している。進行すると、みぞおちから左上腹部にかけての激痛、背部の痛み、吐き気、嘔吐、食欲低下、倦怠感、体重減少、高熱、下痢、黄疸などを伴う。だが、初期は自覚症状が少なく、転移や進行が早いため発見が遅れ、発見後2年以内に死亡するケースが多い。

 さらに酒の飲み過ぎは、肝臓、膵臓だけではなく、胃腸などの消化器系や心臓などの循環器系にも悪影響を及ぼす。

 たとえば、胃粘膜のびらんや出血が起きる急性胃炎、胃酸・胆汁酸・すい液が胃から食道に逆流する胃食道逆流症をはじめ、食道と胃の境目の粘膜が裂けて大量出血するマロリーワイス症候群、食道の粘膜下層の静脈が破裂する食道静脈瘤、急性の潰瘍や胃炎などが起きる急性胃粘膜病変、食後や空腹時の腹痛や出血がある胃・十二指腸潰瘍、腸から肝臓へ流れる門脈が詰まる門脈圧亢進性胃炎のほか、下痢、栄養障害、痔核(いぼ痔)などを誘発する。

 さらに、心臓などの循環器系では、心筋の収縮が阻害されるアルコール性心筋症をはじめ、心筋梗塞、心不全、高血圧、脳梗塞、脳出血、不整脈、末梢血管障害などを発症する。

 このように、過剰飲酒がもたらす病変や病態は、肝臓・膵臓・胃腸の消化器系、心臓の循環器系から全身の組織に及び、想像を絶する甚大なダメージをもたらす。長期間・多量の飲酒習慣は、百害あって一利なし。文字通り、万病の元なのだ。
(文=編集部)

参考:「おもしろサイエンス お酒の科学」(日刊工業新聞)、国立がん研究センターHP、e-ヘルスネットHP(厚労省)、「からだのしくみ辞典」(日本実業出版社)、「アルコールと健康NEWS&REPORTS」(アルコール健康医学協会)、独立行政法人酒類総合研究所HP