「マリオメーカー」実況動画でわかる日本と海外の文化差

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大ヒットしている任天堂のWiiUソフト「スーパーマリオメーカー」。どのような点が革新的だったのか、ライター・編集者の飯田一史さんとSF・文芸評論家の藤田直哉さんが分析します。

ニコニコ動画のランキング上位を独占



飯田 藤田君はマリオメーカーを買ったんですよね? 僕はゲーム実況を見ているだけなんですが……。

藤田 買いました、今やって、ステージ作って公開しているんですが、マジで人気ないですね、泣きそうですw

飯田 www

藤田 この作品はThe Game Awardsのファミリー部門で受賞していましたね。簡単に言うと、WiiUのゲームで、スーパーマリオのステージをみんなが自分で作って、ネット上で公開して、遊んでもらったり、遊んだりできるというゲームですね。

飯田 Amazonレビューを見たら「素人がつくっても全然人気出ねえし、人気あるコースは初見殺しの無理ゲーばっかりでクソ」っていう意見と「小学生の子どもに買ってあげました! 息子が作ったコースで遊んでいます♪」みたいな家族で楽しくやっている意見と二分されていておもしろかった。

藤田 そしてそれが、ニコニコ動画の実況などで大人気で、ランキング上位を独占して「マリオメーカー問題」に発展している……らしいですが。ぼく、これ、先に結論言うけど、任天堂はニコニコの使い方がうまいという話なんだと思うんですよ。元々、改造マリオや、それを使った全自動マリオという作品がニコニコで流行っていたのですが、それを公式に作れるようにしたゲームがマリオメーカーだと考えればいいんですよね。非常に巧みなネットの使い方だなと思いましたよ。

飯田 そうね。あと『マインクラフト』に代表される、ユーザーが自分で世界を作れるゲームの流れだよね。「『RPGツクール』みたいなもんでしょ」って言われているけど、これが「マリオ」じゃなかったらあそこまでは絶対売れてない。めちゃくちゃうまいIPの使い方。

藤田 やっぱり、マリオですよ。ぼくも最初は、「ノスタルジーに訴えかけるだけじゃね〜の〜?」と懐疑的だったのですが、やってみたら、おもしろいおもしろいw

任天堂は実況文化をソシャゲより重視?


藤田 マリオメーカー問題について少し触れますが、ニコニコのランキング上位がマリオメーカーばっかりになるので、ニコニコの多様性や実験性、アナーキーさが失われる……とか言っていますが、ぼくから言えば、それは、初音ミク、アイマス、東方の御三家ばっかりのときにも言われていたので、大衆化・商業化したら必然的に起きること、としか思わない。

飯田 ニコ動の流行りなんてすぐ変わるから、あんま気にしなくていいんじゃないかな。もちろん、短期的にはそればかりになるのはイヤだけど。
 むしろ任天堂がゲーム実況を無視できない文化として認めた上でガチで勝ちに来たという点で、『スプラトゥーン』と『マリオメーカー』は画期的。
 任天堂はスマホゲームには長らく消極的で、参入するするって言っていたけど結局2015年は何もリリースされなかったことを考えると、彼らは実況文化をソシャゲよりもはるかに重視したんだと言える。

藤田 任天堂は、尖っている文化を、使いやすくて直観的で面白いインターフェイスに変えるのがとてもうまいなという印象です。『スプラトゥーン』だって、『カウンターストライク』とかのオンライン上で銃で撃ち合うゲームから、血なまぐささやマッチングなどの面倒くささを消して洗練させたものと考えればいいと思います。

ゲーム実況のおもしろさ!


飯田 いちおう「マリオメーカー問題」で話題になっている有名実況者による動画について言っておくと、おもしろくないわけじゃないんですよ。ただ、その実況主のファンじゃないなら、数本見たら十分だよね。やってることはだいたいみんな同じで、むちゃくちゃ難しいコースをやって騒いでいるだけだからw 『All You Need Is Kill』を観ているときと似た感覚ですね。まあ話は逆で、あっちのほうが「ゲーム体験を映画(小説)に落とし込んだ」作品なんだけど。

藤田 お、さすが、『ビジュアル・コミュニケーション 動画時代の文化批評』という本で「ゲーム実況論」を書かれただけのことはありますね。
 マリオメーカーの実況――たとえば、アブさんとレトルトさんっていう、超難しいステージを作る二人が、お互いに相手にステージを提示して、挑戦状みたいにして対決しているのは、面白かった。ゲームセンターCXみたいで。

飯田 人気のある実況者は、実況映えするしゃべりや編集の仕方がよくわかっているので、見れちゃうんだよね。

藤田 あとは、何名かで、わいわい適当に騒いでやっているだけの実況とかも、案外面白く観れて、自分でも意外でした。ファミコンを友達の家に行って、みんなでやって、コントローラーを持っていない番のときみたいなのが、疑似体験できた。そういう感じでゲーム実況が消費されてるのかな? って、少しわかりました。
 昔のゲーム実況よりも編集のレベルが上がっているのもびっくりしました。なんか昔は『バイオハザード』やりながらギャーギャー言っているようなのだったのでw
 他に、ブロントさんみたいに、実況者本人のキャラで押すタイプも少し見ていました。マリオメーカー実況は、それらともまた違うフェイズにあるような感じがしました。
 専門家の飯田さん、いかがでしょうか。

海外と日本の実況文化の違い


飯田 専門家ではないけど……まさにマリオメーカーはゲーム実況入門にもいいんじゃないでしょうか。YouTubeで海外のマリオメーカー実況動画を見ると、日本と似てるところもあるし全然違うところもあるし、文化の違いがわかってそれも楽しい。ぜひ「SUPER MARIO MAKER」で検索して、あれこれ観てみてほしいですね。
 海外YouTuberは基本、画面の左上や右上に窓をつくってプレイしている自分の顔を映している。もちろんそうじゃない人たちもいるし、日本でもHIKAKINとかはそうですが。対してニコ動の実況主は基本、顔は出さない。それだけでも受ける印象はけっこう変わりますね。顔が出ないとラジオっぽくなる。国による文化差と、投稿しているサイトの文化差(YouTubeとニコ動の差)が重なってくるのが興味深いところです。

藤田 なるほど。顔を出さないのは、日本では、フェイスブックやツイッターもそういう傾向がありますね。

飯田 単純に、英語やスペイン語をはじめ、いろんな言語でいろんな国籍のひとがマリオの実況をしているというだけで不思議なきもちになる。
 もちろん、ダベったり騒いだりしている人はどの国でもいるし、海外で人気の動画は日本のYouTuberも研究しているから似てくるところもあるし。似てくるところもあり、違うところもあり。「難関コースに挑戦」系はどの国の人がやってもどうしても似てしまうんだけど、「アート系」のコースのほうが文化の違いはより強く出ているかな?
 YouTubeでは、見た目が非常に美しく作られたコースの動画とかにもけっこう人気があります。作られたコースをクリアするのは難しくないけど、プレイするとデザインが美麗で気持ちいいものですね。インディー・ゲームもそうですが、海外にはゲームをアートやデザインを表現するメディアとして捉えているひとが一定数いるので……というのは藤田君の「インディー・ゲーム論」からの受け売りですがw

藤田 そういうのもぼくは好きですね。「うさささん」という方の作ったコースが人気高いんですが、なんかサイケデリックとか、アブストラクトとか、テクノみたいな感じで、やっているとトランスしてきますw
 ゲームをプレイしてても、世界中の人のマリオのステージをプレイしていると、不思議な感じですよw 名前のところに国旗が出ているけど、見ただけではわからない国の人もいるし、コースのタイトルがそもそも何語かよくわからないのもあります。
 でも、マリオという点では、共通なんですね。言語を超えている。あるいは、マリオという共通言語がある。やってて思ったのですが、ステージを作るときの「ブロック」って、ちょっと絵文字とかと似てますよね。言語と絵とモジュールの組み合わさった、不思議ななにかだな、ってちょっと記号と言語の問題を考えたりしました。
 ちなみに、ぼくが作ったコースは、ジャンプ台が跳ねまくってて、そこをクリボーとノコノコが乱数みたいに飛んでくるのを避けるという、弾幕ゲーみたいな死にゲーにしたら、ありえないぐらい人気ないですねw まったく「いいね」がつかないw

飯田 CGMでスターになれるのは一握りだから!!!

藤田 ちなみに、 B983-0000-0107-6623 です。興味があったらやってみてくださいw クリアできるものなら、してみてください。『藤田の挑戦状』ですw

飯田 マリオメーカーの何がいいかというと、小学生が親に買ってもらって世界中のコースをプレイしているうちに、アート系に出会ったりしてアクション以外のゲームの楽しさにめざめていく、カルチャーショックを与える可能性を秘めていることですね。

藤田 Twitterで誰かが呟いていたんですが、小学生にして、作った作品が認められない、遊んでもらえないという、創作者の苦悩を味わったりもするそうですよw

飯田 「文句言うのは簡単だけど、作り手って大変なんだ」と早くにわかるのはすごくいいと思うw ぜひ実写版『進撃の巨人』メーカーを…おっと、誰か来たようだ……

WiiUが本領を発揮した年


藤田 しかし、WiiUって、スペックが低いとか、コントローラーがでかすぎる(タッチパネルの液晶がある)し意味がないとか、散々言われてきて、ぼくもそう思ってたんですが、マリオメーカーと『スプラトゥーン』で、ようやく本領を発揮してきましたね。

飯田 しばらく「もうゲームでファミリー向けとか全年齢向けで広い層狙うなんてムリっすよ」「このモバイル全盛の時代に、据え置きハードで勝つなんてムリムリ」みたいに言われてきたのを見事にひっくり返した。正直、僕もナメてました。土下座します。任天堂、さすが!

藤田 インディーやネットで実験的にやられていたものを、悪い言い方をすれば「刈り取った」、いい言い方をすれば「取り入れた」。柔軟な姿勢で、ぼくは任天堂を見直しました。
 インターフェイスとか、作りやすさ、遊びやすさのデザインの部分が、圧倒的に優れているんですよね。『メタルギア』も、動きの気持ちよさは相当高かった。日本のゲームの優位性もまだまだあるなと感じました。

飯田 これで来年スマホ向けでも仕掛けてくるわけでしょ? そっちもうまくいったら本当にすごい。もちろん、任天堂も全部がヒットしているわけではないけど……当たったときの「やられた」感、ゲーム体験の独自性は脱帽するしかないところまでいくので、楽しみにしています。

藤田 発想の方向性が、自由なんですよね、ハードとかをいじって、ゲームを取り巻く環境から変えていく、遊び方を作っていくっていう発想だから、ゲーム内世界を作り込む傾向のある海外メーカーとは、ちょっと発想が違う部分がある気もします。任天堂、健在なりです。